上から目線のすヽめ

友達と話していてよく聞く困りごとランキング上位に位置するのが「過去の自分をひけらかして自慢するオジサン・オバサン」への対処。例えば市役所勤務の友人なんかは元市役所勤めのオジサンが窓口にやってきて、

「手際が悪いなあ。俺の若い頃は……」

と説教風自慢が始まるとのこと。なかなかのストレスになるらしいのです。

そんなとき、僕がよく思い出すエピソードがある。これは友達の話なんですが、当時小学校四年生だった友達は、父方の祖母が体調を崩し入院してお見舞いに行きました。そこで友達は母親と親戚のおばさん同士の話を聞いていたのですが、

「◯◯は本当に賢くてねえ、すごく物覚えがはやいんですよ。この前も……」

「◯◯ったらそこで、玄関の前で健気に待っててねえ」

という親戚のおばさんの会話を聞いて、物凄く対抗意識を燃やしたらしいのです。

「僕もこの前の漢字テスト100点だったよね」

「僕も毎週お風呂掃除手伝っているよね」

その時の母親の苦々しい顔になんとなく違和感を覚えながらも、少年は割り込み続けました。そしたら、帰りの電車の中で母親は言ったのです。

「あれ、親戚おばさんのの話だったんだけど……」

僕、じゃない友人は流し聞きしてて気づかなかったんですが、どうやら僕、じゃない友人は猫に対抗意識を燃やして僕もこんなに優秀だよアピールしていたと。もう、赤面ですよ。顔から火が吹き出るかと思った(友人談)。恥ずかしすぎて、20年以上経った今でもたまに思い出すトラウマエピソードとなっています。友人の。

 

まあしかし、当時のゆうじ……僕は友達がうまく作れず、昼休みに図書室でシャーロックホームズと漫画「ことわざ辞典」を読みふけっていたので、承認欲求が著しく満たされていない状態だったのです。だから、他人が褒められていることに(他人が猫でも二歳児でも)耐えられず抵抗してしまったのです。そして、ここまで読んだらお分かりかと思いますが「過去の自分をひけらかして自慢するオジサン・オバサン」の心理状態は当時の僕にひどく近いのではないかと予想されます。

つまり、あなたが不幸にも彼らに遭遇した時に思うべきは腹たつ、とか、ムカつく、とかではなくて「承認要求満たされてなくてかわいそう……」 なのです。だって猫に抵抗した小学校四年生の僕と同じ心理状態なんですよ! 可哀想でしょう! こうやって思うことで、腹立たしさが少し減るので、精神衛生を保つテクニックとして覚えておいてください。

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かぐや様は告らせたい14巻より

ちなみにこのテクニックは応用がとても効きまして、僕などは全人類に対して上から目線で生きていますので、逆に博愛主義者ではないかと思えるぐらいなのですが、どうでもいい依頼を丸投げしてくる使えない同僚、やたら否定から入る昭和な感性が抜けない上司、購入用紙をコピーするのになぜか三十分かかった店員、などなどが自分に迷惑をかけた時も「かわいそう……もうすぐAIに代替されちゃうんだな……」と思うことでかなり精神衛生が保たれます。

 

ちなみにくれぐれも、間違って口に出さないようにしてください。人間を怒らせるもっとも簡単な方法は事実を述べることですので、口に出した瞬間、それはもうこの世で見たことがないぐらい顔に「怒り」マークがでた人間を見ることになるでしょう。

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HUNTER × HUNTER より

 

まあしかし、よくよく考えると、猫は自慢していいのに小四の僕やおじさんは自慢しちゃいけないって不公平ですよね。それに、市役所のおじさんや当時の僕がこういう自己承認欲求が満たされていない状態を自覚してしまうと、それはそれで心の中に闇を詰め込む状態になって辛いと思います。世知辛いことに、聞かされる方も辛い、聞かせられない方もそれはそれで辛い。

この辺りの心理は平成の名曲「チキンライス」で書かれており(「せめて自慢ぐらいさせてくれ!」とはっきり言ったJ-POPは珍しいなと思ってました)、こういうところからも松本仁志ってやっぱり目の付け所が優れているなあと思ったりします。

チキンライス 浜田雅功と槇原敬之 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

それでも僕は小学校四年生当時の僕のようなことをいうおじさんとは一秒も話したくないので、やはりここはVR空間がもっと発展して、おじさんが美少女アバターにて承認欲求を満たす時代が早く来ないかなあと思っています。この記事の僕のすヽめはあくまで暫定対処。全人類の承認欲求を満たすのが根本対処。

 

美少女ならば、それだけですべての人類から承認されるはずなのです(断言)。

かぐや様は告らせたいを全人類に布教したい〜エモくて理性的で抱腹絶倒の最高傑作の14巻〜

かぐや様は告らせたい?天才たちの恋愛頭脳戦? 14 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

作者の赤坂アカ氏は僕より年下なのですけれど、この情報過多の現在において、幼い頃から情報を取捨選択できる選ばれし人たちはそれほど年を取っていなくても本当に賢いなあと思います。僕は伊井野ミコを実は推していまして、不器用な彼女が活躍するエピソードはどれも泣くぐらい好きなのですが、12巻第115話の彼女のセリフ、

「いいですか!! 確かに条例は厳しい! 自治体も渋ってます!
 それは私たちが大人から信用されていないからです!!
 じゃあ大人の信用を勝ち取るために必要な事とは!?
 風紀です
 風紀委員とは大人から信用をもぎ取る仕事の事なんです」

という台詞の持つ多角的な視点に感動しました。どんな創作でも忌み嫌われ敵として扱われやすい風紀委員を、これほどまで冷静に評価した創作が今まであっただろうかと感動し、そして僕より年下の人たちの溢れる知性に恐れおののいたものです。きっと赤坂アカ氏はこの視点があればサラリーマンだとしても大活躍でしょうね……。

さて、前置きが長くなりましたが。そんな風紀委員の彼女が勝ち得たキャンプファイヤーも重要な伏線となっている本巻。長い文化祭編がついにクライマックス。

すでに我慢できずに、(普段はコミックス派なのに)ウルトラロマンティックを先読みしてしまった方々も多いでしょうが、それの素晴らしさはもう言わずもがな、それ以外にも珠玉の話が多く揃っています。まず最初の第132話から刺さります。かぐや様が会長を好きな理由。

「大勢で歩く時……列から離れて歩く人がいると ちらりと振り向く時の横顔が好き
 心配になる位眠そうな目元とか
 難題にぶつかった時の引きつり笑いとか
 嫌味なほど実直で 地味に負けず嫌いで 人は頑張れば何にでもなれるって思わせてくれる姿が 好き」

もうここで涙がでます。これは絵がついてなくても十分に通用する表現です。その意味の深さは歌詞かと思うぐらい。最初の1行をみてください。これだけで、たったこれだけで会長の人間性とかぐやとの関係性が鮮やかに表現されています。いろんな人を気にかけてしまう、でも大勢の人を率いているから構うこともできずちらりと振り向く。手を差し伸べるべきか分からず何もできない自分の無力さから、少し悔しそうな、それでいて心配そうな横顔。溢れ出る優しさ、器の大きさ。そして、これを好きな理由の一番最初に挙げるかぐや様は本当に会長をよく見ていることも分かる。

理性的なのに、溢れるほどエモい。一見相反する要素が奇跡的なバランスで成り立っていることこそ、この漫画の稀有な部分です。ついに二人がキッスをするウルトラロマンティック回の135話136話においてそれは最高潮に達し、両者のモノローグは、まるで心の和歌を送りあっているようです。

そしてそんなシリアス回を経て「ついに二人はキッスしたから終わりに向かうのか」と思う読者を裏切るような抱腹絶倒のギャグ回の連続。早坂とかぐやの掛け合いの良い意味での低レベルさとテンポの良さににやけが止まらない。かぐや様のコメディ要素は実は決して軽くないこの作品の根幹のストーリーをうまく中和してポップにするという意味ですごく綺麗に機能していると思います。

14巻で綺麗に終わればよかったのに。かぐや様は多重人格なの? そんな声も分からなくはないです。確かにこの巻はこれまで緻密に積み上げて来たかぐや様の面白さの到達点といって差し支えないものですし、ここまで面白いと今後失速しないか心配にもなります。でも、でもですよ。こんなに面白い漫画が14巻で終わるなんて耐えられますか? いかに綺麗に完結しようとそこで満足できなくないですか? もっと読みたくないですか?

だから、ここで綺麗に終わらず続いてくれて、本当によかったなあと思うのです。石上はやはり最後には伊井野ミコと付き合うことになるのかなあと予想したりしながら。(石上が撮ったキャンプファイヤーを楽しむ人たちの写真を見るミコちゃんの目が本当に尊かった……。この巻には一体何個山があるのだろうか)

 

Amazon レビューにも書いてます

最低なある日、僕は世界を滅ぼすことにした。2

 気分転換用の部屋で気分転換をせずにノートパソコンをカタカタして仕事をしていると、久しぶりにケビンに会った。

「何をしているんだい?」

「ゴーゴルの考えたプロトコルを調べて、お客様に展開する資料を作っているんだ」

「ふうん、不思議だな。そういうことをしなくて良いように注意深く書かれたドキュメントがインターネットに置いてあるはずなんだが。もしかして、翻訳かい?」

「いや、お客様というのはそういう技術文章は1ミリセック(1/1000秒のこと)しか読まないんだよ。あとの23時間59分59秒と999ミリセックは、明日のゴルフ接待のことを考えるものさ」

「ショウワだねえ。もうすぐヘイセイも終わるというのに」

 相変わらずケビンの日本語は流暢である。わざと外国人っぽい発音で「ショウワ」「ヘイセイ」というあたりシャレが効いている。

「しかし、どうしてみんなやりたいこともないのに新しいプロトコルにチャレンジしようと思うんだろう?」

 僕は、隣のホワイトボードにヴァージョン1.0のプロトコルを書いた。

START

僕 → GET PS4 → 親

僕 ← OK PS4 ← 親

END

 

START

親 → POST(4万円) PS4 → 店

親 ← OK PS4 ← 店

END 

 「凄まじくシンプル。クールだね。1ミリ平方メートルの脳みそが1ミリセック読めば理解できるしくみだ」

「だが、この場合君は、PS4を手に入れることができたか怪しい。だって本当は、こういうことだからね」

 ケビンは僕の書いたホワイトボードにさらさらと情報を足していく。

START

親 → POST(4万円) PS4 → 店

親 ← OK PS4 ← 店

親 → GET PS4の周辺機器リスト → 店

親 ← OK PS4の周辺機器リスト ← 店

親 → GET PS4の周辺機器A → 店

親 ← OK PS4の周辺機器A ← 店

親 → GET PS4の周辺機器B → 店

親 ← NG 品切れ ← 店

親 → GET PS4の周辺機器Bの代替品 → 店

END

「ほら、単純にやりとりしようとすると、こんなに時間がかかるのさ。だから僕らは新しいプロトコルを開発した。そう、こんな感じに」

START

親 → POST(4万円) PS4 → 店

親 ← PS4の周辺機器A ← 店

親 ← PS4の周辺機器Bの代替品 ← 店

親 ← PS4の周辺機器C ← 店

END

 これがヴァージョン2.0。なんともわかりやすかった。お客さんが今日ニュースゼロを見て今日のニュースに悪態を吐く時間に少しでもこのことを理解してくれれば。いや、これを理解してもらうのが僕の仕事なのだ。例え、小学五年生がスマホアプリ開発で賞を取る時代だとしても。僕は幼稚園児にはじめての折り鶴の折り方を教えているのだろうか。いや、幼稚園児は折り鶴の折り方を真剣に読んでくれる気がする。では僕は赤ちゃんにミルクの飲み方を教えているのか。ミルク2.0。粉ミルク。自然派ママが血眼になって「それでは自然ではないから子供が健康に育たない!」と追いかけてくる。その通り、だから僕はこんな歪んだ人間に育ったのかもしれない。

「なあ。僕が好きなジャパニーズアニメのセリフに、こういうのがあるんだ。

『人間の本質は石器時代から一歩も前に進んじゃいない。』

 君は今、石器時代の人間に電灯の使い方を教えようとしている。それはそもそも前提として無理な話だよ、だから」

 ケビンはもったいぶって、言った。

「この世界を滅ぼして、石器時代に戻すしかないのさ」

 

****

 

「また、ゴーゴルの人間が新しいプロトコルについて語っているな」

「そう、こうして仕事を効率化して。人々から雇用を、誇りを奪っていくのよ」

「まったくだ、こうなったら一刻も早くメキシコに壁を作る計画を進めなければ」

 白い白い建物の真ん中で、盗聴器に耳を傾ける男と女。彼らは誰か? それは、あなたもよく知っている人間。きっと先刻の「僕」と「ケビン」も、よく知っている人間である。

「ねえ、トランプ。またマクドナルド食べているの? 体に悪いわよ」

「好きなものを食べて体に悪いわけがない。そして、マクドナルドは雇用を生んでいる。雇用を生むものは素晴らしい! だから私はハンバーガーを食べる。シンプルだろう?」

 彼は、デイジー・トランプ。

 「僕」が壊そうとしている、世界を救おうとする救世主だ。

遅刻常習犯 vs 時間守る人の戦いを終わらせたい。

レンジで簡単美味しい、というレシピには「ただし茹でたほうが美味しい」という注記が必須だと思います。期待して裏切られるのは嫌なのです。そういうのは無限ピーマンとかレンジでほぼ最強の味が出るものだけにしてほしい。というわけでこんばんは。

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https://www.fate-go.jp/manga_fgo2/comic23.html より引用

ところで、ツイッターランドという地獄(インターネットの八割はリアルが充実してない人の呪詛で成り立っているので、つまり、インターネットは地獄)では、定期的に地獄の釜を開ける人間が現れ、それらを袋叩きにするという事象が発生します。今回はこちらでした。

 これを起点に遅刻常習犯 vs 時間を守る人の戦いが始まり、そしてどこにも結論が出ないまま収束していく。そんなループが繰り返されています。これは永遠に続く人間の業の可視化だと思うのですが、それはそれとしてはてな鹿目まどかと呼ばれる予定な僕としては、この輪廻を断ち切りたいと願い、筆をとるに至りました。

例えこの後、またこの議論が繰り返されるとしても、僕はいやらしくこの記事をその議論の発端にリプライし続けていこう。それが例えろくに読まれもせず大衆に踏み倒されていく看板だとしても、それを立てることに、意味があったと思いたい。

さて。

まずこの議論をする前に、登場人物を整理したい。よってこうします。 

  時間を守ることが超苦手 そうでもない
遅刻常習犯 時間を守りたいが結果遅刻するハル できなくはないけれど遅刻するナツミ
時間守る人 死ぬ程努力して遅刻しないアキ 普通に時間を守るフユミ

ツイッターランドの面白いところは、この春夏秋冬がすべて「これは自分のことだ」と議論に参加するわけですが、それは違うのです。あなたのことではないのです。

例えば 「死ぬほど努力して遅刻しないアキ」が「できなくはないけれど遅刻するナツミ」対して怒る。これはまあ、感情の動きとして当然です。あなたが漫画家志望として、死ぬほど努力して持ち込んで、やっと連載会議に通ったのを尻目に、サボりながら適当に描いたWeb漫画が編集者の目にとまったがデビューが面倒で連載しなかった友人を見たら嫉妬して、怒りたくなりますよね。当然です。でもそれは議論の余地はありません。

同じように「死ぬほど努力して遅刻しないアキ」は「時間を守りたいが結果遅刻するハル」を理解してあげられるでしょう。ハルはアキを尊敬するでしょう。この辺りは必ずバズったツイートのまわりにぶら下がりますが、多くの人が議論したいのはそこではないのです。

というわけで、各方面への矢印を整理しましょう。

  • 努力遅刻ハル→サボリ遅刻ナツミ:もっと頑張れよ!
  • 努力遅刻ハル→努力時間厳守アキ:すごい!
  • 努力遅刻ハル→時間厳守フユミ:羨ましい。
  • サボリ遅刻ナツミ→努力遅刻ハル:ごめん。一緒に頑張ろう?
  • サボリ遅刻ナツミ→努力時間厳守アキ:ごめん。すごい努力だね。
  • サボリ遅刻ナツミ→時間厳守フユミ:い い た い ことが山積み!
  • 努力時間厳守アキ→努力遅刻ハル:分かる。時間厳守難しいよね。
  • 努力時間厳守アキ→サボリ遅刻ナツミ:ずるい!! 怒るよ!!
  • 努力時間厳守アキ→時間厳守フユミ:頑張ってついていく。
  • 時間厳守フユミ→努力遅刻ハル:わかってあげたいけれどイライラ。
  • 時間厳守フユミ→サボリ遅刻ナツミ:い い た い ことが山積み!
  • 時間厳守フユミ→努力時間厳守アキ:本当に素敵。

お分かりでしょうか。結局言いたいことは時間厳守フユミとサボり遅刻ナツミの間にしかないのですよ。つまり、やればできるけれどやる人、とやらない人がいつも戦争を起こすのです。この地獄への参加資格はこの「やれば時間が守れる人」の間なのです。

というわけで、登場人物を春夏秋冬から夏冬に整理できたところで、夏と冬間で良く交わされる言葉たちをまとめてみましょう。まずこちら。

 

「時間を守らないのは人として終わっている」

まず、大丈夫です、これは努力遅刻ハルには言ってません(念押し)。仮に努力遅刻ハルにこれを言う人がいたとしたら鬼畜野郎なので無視しましょう。でもこれはいけません。何がって、主語が大きすぎる。「人は分かり合えない、だったらみんな死んじゃえばいいんだ!」に近いものがあります。ここはディベートの国。碇シンジ君はエヴァンゲリオンの世界に帰ってください。あのですね、そこまで主語を大きくするなら言いますけれど、遅刻は罪に問われますか? 問われませんよね? 遅刻三回で地方裁判所に呼ばれませんよね? だからあなたの言葉はこう言い換えるべきです。

「時間を守らない人は私の友達にしたくない」

「時間を守らない人は私は嫌い」

何の問題もありません。あなたの友達の好みはあなただけのものですから。

類語:時間を守らないのは社会人として終わっている

言い換え:私が過去仕事で関わった10人の顧客はみんな時間を守らない人を信用しない

 

「時間を守らないのは私を大事に思っていないからだ」

よくありますが、これもあまりよろしくありません。というのも、これはメンヘラの思考に近いからです。「私を見てくれない、私に合ってくれない、私を抱いてくれない、あの人にとって私は必要ないものなんだわ、殺そう」そのままSCHOOL DAYSの世界へどうぞ。

あのですね、人はそれぞれ大事なものがあるわけです。あなただって、大切な顧客資料作成を片付けてから少し遅れて打ち上げにいくことはあるでしょう。その時に「仕事と私どっちが大事なの?」って言っちゃいます? ぜひキンプリの平野紫耀君に「そんなこと言わせて、ごめんな」と抱きしめてもらってください。かぐや様は告らせたい、実写化おめでとうございます。僕は応援します。

その人が遅刻前に何をしていたか、本当に突然の大事な用事に慌てていたか、ただゆっくりしていたのか、それはわかりませんが、証明することは難しいです(ストーカー的に監視カメラでもつければ分かるかもね)。つまりですね、遅刻はあなたが友達として大事かどうかを判断する材料としてとても根拠の弱いものです。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」見ました? フレディ・マーキュリーが遅刻して「僕は時計じゃない、パフォーマーだ」と嘯くシーンがありますが、フレディ・マーキュリーQueenのメンバーを大事に思っていなかったでしょうか?

あなたが言うべきは一つです。

「言い訳すんな、私は怒っている、遅刻を謝れ」

(ちなみに別のシーンで、メンバーより早くフレディが来ていたので、フレディを「サボリ遅刻ナツミ」と分類しています)

 

「時間を守らない人はクリエイター気質だ」

これもまた議論を発散させますね。60億も人間がいるんだから、なにかを創作して生きているけれど、時間を厳守する人を探して見つからないと思います? 三島由紀夫は時間を守りますよ。参考リンク貼っておきます。

blogs.yahoo.co.jp

時間を守りたいが結果遅刻するハルか、できなくはないけれど遅刻するナツミか、それだけの分類してください。時間を守らないのを何か別の良い性質の発露だと捉えないように。いや実際そう言う面はあるかもしれませんが、今は遅刻の話をしているのです。クリエイター気質の話をしているのではありません。津田さん、これはそう、あなたにも言っています。遅刻は臨機応変ではない(でもわざとだ、きっと)。

 

「時間を守らなくても連絡はこまめにしてるし、時間も潰せるでしょ?」

時間を守ることを正義というつもりはないですし、それをこれまで丁寧に説明しているつもりですが、それはともかく、相手が怒っている(もしくは怒りそう)のに、逆撫でするようなことをいうのはよくないと思います。これは気遣いの話です。

なお、時間を守らない人は、一応罪悪感を感じているのか実際に着く時間より早く到着予定時刻をLINEする傾向にありますが、遅刻している時点で10分も20分も相手を怒らせるかどうかは変わらないので、素直に時間を連絡するようにしましょう。

「あと10分で(駅に)着く(から待ち合わせ場所までは20分、迷うと30分)」

という代わりに、

「あと30分で着きそう」

と言いましょう。繰り返しますが、これは気遣いの話です。

 

「僕は遅刻するから、君も遅刻していいよ」

これは最低のセリフです。誰もが、心に自分ルールというものを持っているのです。るろうに剣心に「俺は殺すから、お前も逆刃刀やめろよ」と言えますか? 斎藤一役でもやっててください。斎藤一はこんな言い方しないけれど。

あなたが自由に遅刻前の時間の過ごし方を決められるように、時間を守る人も自由に時間を守ることができます。その自由を侵すことはできません。会話は大事ですが、この提案は悪手極まりないので、もう少し会話の練習をしてください。

 

「遅刻は悪なんだから遅刻するやつは死ねよ」

もうちょっと疲れて来たので雑にいきますが、そういうのが戦争を起こして来たんです。いい加減に過去の歴史から学んでください。切嗣に「人間の本質は石器時代から何一つ変わっちゃいない」と言われますよ。そして日本は法治国家です。遅刻した人を殴ったら、あなたが現行犯逮捕されます。なぜインターネットでは言葉で殴っても現行犯逮捕されないんでしょうね。ここが地獄だからですか?

 

<まとめ>

  • 遅刻の議論をするときは「時間を守ることがやればできる」人を対象にしよう。
  • 遅刻は罪ではない。主語を大きくせず、素直に怒っていることを伝えよう。
  • 遅刻は罪ではないが、自分の遅刻を怒っている人には気遣いをしよう。

ちなみに、私はわりと「甘え」で大事な人との約束に遅刻する人なので、時間を守る僕以外の家族とよく喧嘩になります。そして最後は「僕・私がむかつく」と言われて「ごめんなさい」と謝ります。褒められたものではありませんが、まあ、そういうのが、平和な世界なのかもしれません。

闇夜に踊る煌き feat. 初音ミクDark (京バンドのリミックス)

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闇夜に踊る煌き feat. 初音ミクDark (京バンドのリミックス)

最低なある日、僕は世界を滅ぼすことにした。

 今日は最低な1日だった。

 (1) 最低な1日は朝のベットの中から始まった。スマホ依存症の僕はまどろみの中で、ヤングジャンプアプリを開き「かぐや様は告らせたい」の最新話を60円で買って読んだ。しかし今週は先週先々週先先々週の神回ではない良回だった。最近の生きる意味でありMP(まじでしんどい五秒前ポイント)補給となっていたかぐや様が良回! MPが70ぐらいしか回復しない。足りない。失意の中僕は電車で会社に向かう。

 (2) 会社に着くとすぐ打ち合わせが始まった。各国に散らばる技術者の精鋭を集めた打ち合わせはむなしく暗礁に乗り上げて発散した。特にいつも親切で仕事がしやすい同い年ぐらいの顧客が、僕らに厳しい質問を「言わされている感」を出しながら話すのが耐えられなかった。そんな彼の思いも知らずに技術的正論ばかりを語る人たちの間に入ろうとした僕の提案は「その案は技術的にありえない」と言われて途方に暮れた。僕だってそう思うよ。でも、それじゃ話が進まないから仕方なくそう言っているんだよ。

 (3) その後は出向元の会社からの悩み相談を受けた。適当なことを話したら正論と勘違いされたらしく「よく分かりました、また来ます」と言われたがもうこの時には僕のMPは枯渇して生産性は地に落ちていた。

 (4)-1 隣に座る人はまだ現れた。先輩は「別のことを確認していたら致命的なバグを見つけた、大変なことかもしれないから調べておいたほうがいい」と親切に伝えて来た。なんで僕が、そう思ったが僕はログを開いた。そして訳のわからなさに一旦閉じた。冷静な切り分けが必要だ。

 (5) まだ続く。生産性がストップ安でIQが2ぐらいになっていた僕がメールを眺めると「○○さんの解析結果を教えてください」とメールが来ていた。○○さんは人違いかと思ったが僕だ。僕の解析結果がなぜ必要なのか。僕はメールを返す。「ご指名いただきましたが……」その人の返信は「指名料……高そうですね」から始まった。ナンバーワンキャバ嬢も、こんな虚無感を感じていたのだろうか。

 (6) まだ終わらない。遠慮がちに隣の席に座ったその人は、僕の立てた見積もりが感覚と合わないから検証してほしいと極めて優しくオブラートに包んだ言い方で言ってきた。自分の優しさの向こうの真実を見抜く力が今はいらなかった。ただただ、青空を眺めて昼寝したい気分でいっぱいだったが、もっとも今やらなければいけないことのような気もしたので(そして回答するまで隣の席から帰ってくれなかったので)、みかんサイズに縮んだ脳を振り絞った。

 (4)-2 ログを確認すると、致命的なバグは環境要因といえそうだった。僕は今日やることリストの「バグ確認」にチェックマークをつけた。やっと今日、一つの仕事を終えることができる気がしたが、MPは回復しないままだ。

 (7) そうして安心している矢先に「性能が遅くなってしまった、何かわかりますか」と別の人に相談を受けた。僕は3分ならログを見るよとチャットを返した。ログはすぐ届いた。3分でログ解析は終わって「天才!」とお褒めの言葉をいただいたまではよかったが、その後も相談なのか自問自答なのかよくわからないチャットが届き続けて、僕は静かにチャットソフトをOFFにした。

 (8) 「この計画、ちょっとリスクがあるので、相談したいんですが」とまた別の先輩は言った。 Fate/Grand Order でメルトリリスが引けないと愚痴りながら。「僕はそのあたりを管理していないので、A先輩に言ってください。と僕は冷たく言ったが「え、そうなの? でも僕Aさんの打ち合わせに呼ばれてないんだけど」と打ち返された。そのまま生産性のない会話は続いていく。

 (6) の資料更新は終わらないまま午後九時になった。半ば呆然と休憩スペースで、かぐや様は告らせたいの最新話をもう一度読んで、そして朝より面白いなと感じていると、前に仕事でお世話になった GOOGOLE のケビン(認証関連の仕事で来ていたようだ。僕らは、彼らのロゴマークをつけるために命をかけるのだ)とたまたま休憩スペースで鉢合わせることになった。「やあ」流暢な日本語で彼は僕に話しかける。

 

 「何か元気がないみたいだね。どうしたんだい?」

 「なんか今日は、8人に頼られて、自分の仕事が全然進まなかったんだよ」

 「いいじゃないか、頼られないよりも頼られるほうが」

 ケビンは素敵な笑顔でそう言った。

 「ねえ、僕は間違っていたのだろうか。僕がいろんなことに手を出すことで、この部署のメンバーの自立心を失わせてるんじゃないかって思うよ」

 「深いね」

 ケビンの口癖だ。どこで覚えたんだろうか。

 「深くなんてないよ、浅いよ。ぼくはもともとリアルに興味のない矮小な人間なんだ。はやくVR空間でデジタルアバターと暮らしたいと思っている。もう、ハードウェアも人間関係もうんざりなんだ! 僕はソフトウェアだけ残して肉体を捨て去りたい」

 「ねえ」

 ケビンの口調が変わった。

 「場所を変えよう。そんな君に、素敵な話があるんだ」

 

 品川の場末の居酒屋で、枝豆をつまみながらケビンは真剣な目をして言った。このガヤガヤ感の中では、彼の言葉は僕にしか届いていないだろう。

 「ゴーゴルは、世界トップクラスの生産性を誇り、世界一、人類に貢献することを目標とする会社だ。僕らは、人類を救いたいと思っている。そこで、君みたいな人を探していたんだ」

 彼は、素敵な笑顔で言った。

 「僕らはね。人類を救うために、世界を滅ぼそうとしているんだ」

 僕は夢を見ているのか? 頭が働かない。疲れているせいか、ビールの周りがやけに早い。世界が歪む。

 「僕らだけじゃない、アポーもそうさ。そして想像して見てほしい、僕らの作った OS を乗せたスマホは、世界中で40億台出回っている。パソコンのブラウザも、すでに僕らの Choronium ベースになっている。それらすべてが、部品を派手に飛び散らせて壊れるように仕組まれていたら。どう思う?」

 ああ、なるほど。みんな死ぬ。

 「それでも、人類を殺しきれないと考えた僕らは、アモゾヌも仲間に入れた。彼らには世界各国にダンボールを届ける仕組みがあるからね。ダンボールの箱を開けたら部品が派手に飛び散れば、さらに多くの人にこのギフトが届くんだ。アモゾヌギフト券。けれど、それでもまだ60億の人類を殺しきれないと思うだろう?」

 ケビンと技術トークをしたことを思い出す。ケビンは「僕らの要求する5秒が満たせなかった理由はなんなんだい? 最初にハードウェアとソフトウェアの各ブロックで、5秒を満たすように各チームで調整するだろう。そこのどこが、計算違いだったか教えてよ。僕らもアドバイスできるかもしれない」と優しく言った。僕らにはそんな計算はなかった。ただ必死に作って、ただ間に合わなかっただけだ。彼の正論は僕には眩しすぎて、目が眩んで、光の彼方に消え去りそうになった。このケビンは、あのケビンなんだろうか。世界の半分でももらって、いかれてしまったのか?

 けれど、ふと思った。どうして、技術者に道徳心があるなんて期待したんだろう。頭のいい人が性格が良い人ばかりだったら、世の中がこんなことになっているわけがないじゃないか。僕はなんて勘違いをしていたんだろう。みんな本当は、世界を征服して、滅ぼすつもりだとしても納得じゃないか。

 「そのために、君のような車メーカーの人材が欲しかったんだ。車は、スマホを持っていない世代の人間も持っているだろう?」

 僕はこの嫌な一日を振り返った。良かれと思ってやったことが、みんなの自立を奪い、僕はやるべきことをできなくなっていく。僕の善意は僕の自己満足になって虚空をさまよう。ゴジラがこのビルを燃やし尽くしてしまえばいいのにと、笑いあった先輩は転職していなくなった。だったら、こんな世界は。

 「OK、ゴーゴル。その提案に乗ったよ」

 かくして僕は、世界を滅ぼすことにしたのだった。

 

(フィクションです)

(つづく)