and world/ACIDMAN

and world(通常盤)
前作「equal」でしっかり自分達の場所を手に入れたACIDMANの4th。


僕は前作が大好きで、かつACIDMANの目指してきたものが完成されたアルバムだと思っていたので、正直のところ今作は何処に向かうのか不安でした。先行シングル達からも「ああ、今度のアルバムはこういう色になるんだな」っていう指針みたいなものが見えてこなかったし。


しかし、蓋を開けてみればなかなかいいアルバムでした。なんのことはない、ACIDMANは「深化」を選んだんですね。自分達の作り上げた世界を、さらによく分かってもらえるように。


丁寧なアコギのイントロから始まるこのアルバムは、とても優しく、とてもメロディアスです。こんなにメロディアスなアルバムはACIDMAN史上初なんじゃないでしょうか。疾走するのは、イントロが終わった後の二曲くらい。あとは、ちょっとジャズの香りがして、大人な雰囲気で、音の鳴る空間を大事にしている曲たちが占めています。大木さんの声は、優しく歌った時のかすれた感じのが魅力的だと思うので、この「equal」からの変化は素直にうれしいです。


あとは「SOL」と「WATER ROOM」といったインストナンバーが、もはやつなぎや箸休めでなく、それだけで聞かせられるものだというのが凄いです。「ある証明」がシングルで出たとき、「SOL」ばっかり聞いていたことを思い出します。あの生命がうごめくときの音を体現したかのようなベースラインとポツリポツリとしたギター。プロモとのシンクロ感もすさまじかった。一度ACIDMANは、インストナンバーをシングルとして出すべきだと思う。


あ、他に曲単位で好きなのは「銀河の街」。ギターが溶けそうな音をだして、目の前にいっぱいの空間が広がるのがいいです。そこから「夏の余韻」「プラタナス」とつながる流れも素晴らしいしね。


ただ一つの不満は、メロディアスではあるけれど、メロディ自体がそこまで魅力的ではないこと・・・かな。いや、美しいことは美しいんだけど、ちょっと平坦で薄味というか。それよりも、お得意の、音の足し算引き算で魅せる間奏とか(そういえばACIDMANはギターソロがあまりないね)ベースラインとか、ギターの音とかそういうところに惹かれることが多かったです。残念ながらメロディは「equal」のがよかったな。


まあでも通して聞けるし、そして最後のある仕掛けのせいで、終わった後にまたイントロからかけたくなるし、いいアルバムですよ。どうやら「equal」で完成したと思われた世界には、まだ続きがありそう。そんな予感がこのアルバムからは感じられて、それがとてもうれしいのです。