Sigur Ros at Zepp Nagoya

8/6の日記のほうで、一曲一曲詳細に語ったので、今回は大まかな感想でいこうと思います。といっても、感動のほうは全然控えめではなかったんですけど。


まず、前座に出てきたのは、Sigur Rosのライブではストリングスとかを担当している「amiina」という可愛らしいお姉さん四人組のグループ。一番背の高いお姉さんが特に可愛かった・・・のはさておき、彼女らも単独で曲作ったりしてるんですね。水の入ったグラス、ノコギリなんかも使って、幻想的なステージでした。Sigur Rosよりmumに近い感じです。ただ、厳しいことを言うと、似ているからこそ逆に比べやすく、やっぱりまだ力不足だなと思ってしまいました。mumって凄いんだなって思えてしまった。彼女らが「BA BA TI KI DI DO」のカバーとかやってくれたらよかったのになあ。


それから、多少のセットチェンジの時間を経て、Sigur Ros登場。薄くて白い幕を張る幻想的なステージはフジロックで見て二回目。やっぱりいいね・・・そして最初はアルバム「takk...」から『takk...』〜『Glósóli』の流れ。何度も聞いているのに、しかもフジロックで聞いて二回目なのに、いきなり感極まり・・・涙を必死に抑える僕。あの轟音ギターの祝福の洪水にはどうしようもなくなりますね。


それからは、フジロックに似た流れで、「takk...」中心の選曲でした。さすがに二回目なので多少の冷静さはありましたね。そんな中、気付いたのはフジロックより、ジョンジーの弓ギターの音量が大きくなってるということ。これのせいか、現実離れした美しさに完璧に陶酔したフジよりも、暴力性が高まっていて、「恐怖と隣り合わせの、ぎりぎりの美しさ」という印象でした。どちらが、バンドが本来意識している音量なのかが分からないのですけど、個人的好みでいえばフジぐらいのがちょっと好きかな。もはや畏怖すら感じる弓ギターのすごいノイズは、僕から強く日常を引き剥がしていき、背筋が震えるような感動を持ってきたのも事実ですが。


あと、今回あらためて感じたのは、ドラムが素晴らしいこと。音数は決して多いわけではないのに、実にどっしりと存在感のあるドラムは、Sigur Rosの神秘性をより引き立て、身体にも心にも響いてきます。「Gong」なんかではもうドラムだけで陶酔できそうでした(この曲は印象的なギターのアルペジオの音量が小さかったのが残念だったけれど)。あんなに童顔だし細いのに、素晴らしいなあ、オリー。


そして、なんといっても、前回バスの都合で聞けなかった、アンコールの「Popplagið(Untitled #8)」には、ぶっとばされました。文句なしにいままでのライブの中で、一番衝撃を受けた曲はコレですね。これ聞かないでおいて、「Sigur Rosのライブは最高」なんて言ってた自分が恥ずかしいです。じっくりと、時間をかけてゆっくりと壊れていく、ドラム。ジョンジーの叫びにも似たエンジェルヴォイス。薄い白い幕に映し出される断片的な映像、赤い照明。もう歓喜なのか、恐怖なのか、感動なのかよくわからないまま、ただただ圧倒的なエネルギーを全身に浴びて、僕に出来たことといえば、ただステージ上を凝視することだけ。今思い出しても、心拍数があがる鮮烈な「体験」でした。


その後は、スタンディングオベーションで拍手喝采。メンバーステージに出てきて頭を下げる。後ろのスクリーンには「TAKK(ありがとう)」の文字。胸がいっぱいになりました。


「Vaka(Untitled #1)」と「hafsol」をやってくれなかったし、基本的にはフジと似た演出だったのは(そういえば「Viðrar Vel Til Loftárása」の無音時間はやっぱり凄かった。息が詰まるあの瞬間。)ちょっと残念でもありました。今思うと、フジはあの星空も、神秘性を増すのに一役買っていて、室内とは違う何かがあるんですね・・・とは言ったものの、「Popplagið(Untitled #8)」の衝撃を思えば、その程度の不満はなんでもないです。あんな体験、他のバンドじゃできないよ。


Sigur Rosって「世界で一番美しい音楽」とか言われているけれど、実は「世界で一番危険な音楽」でもあるんじゃないだろうか。そんなことを感じた、二回目のライブでした。だって、席に座って見たのに、ちっともリラックスして聞く感じではなかった。音に体中震わされ、身体が硬直し、呼吸を忘れそうになる。ライブにおけるシガーロスの美しさは、そんな、恐怖に限りなく近いところにあります。


それでも、それだからこそ、また行きたいと思っている自分がここにいるんですけれど。