ある音楽

本質を剥き出しにして
間に合わせの嘘を着て
とりあえず手を伸ばして
誰かの手に触れるのを待っていた


醜い羽を隠すこともせず
ぼろぼろの理論を着て
とりあえず美しいふりをして
誰かに羽を折ってもらおうとした



そのとき音が鳴り響く



鋭いギターが耳元を撫でるとき
そこにうずくまった予感が恥ずかしそうに
確信を連れて来るのを見た


きれいなピアノが外に光を落とすとき
ここでこっちを見ていた恐怖
澄んだ涙を落とすのを見た


そこにリズムが加わって
美しいコードがこぼれ落ちて
僕はぎこちなく踊り始める


まだ歌は始まらなくても
額から滴り落ちる汗が
今まで流した涙を見えなくして




これでいいやと思ったとき
ふとあるコードが挿入される



もうすぐ歌が始まる
僕は踊ることをやめない