夜を忘れなさい/nyantora

夜を忘れなさい/97-03
ここでひとまずnyantoraは終わりだという、区切りの意味も込めたヴォリュームたっぷりの三枚組み。今までに発売していた『99-00』、『COSMOS』に、未発表曲を詰め込めるだけ詰め込んだ2枚。そして、単体で発売する予定だった、一応3rdアルバムにあたるはずの『夜を忘れなさい』1枚の合計三枚です。


ええっと、未発表曲が膨大で、かつ時期もばらばらで、作風もバラバラなので、ここですべてレビューするのは難しい・・・ていうかちょっと無理です。というわけで、『夜を忘れなさい』1枚についてここでは語りますね。


このディスク、わりとポップでメロディアスだった『99-00』、『COSMOS』と比べるとかなり実験的です。「日常で、『音』が『音楽』に変わる瞬間を切り取る」みたいなコンセプトを持ったアルバムらしくて、それゆえに短い。かつあまりに音が少ない。2曲目の「蓮の花」なんてシンセのほぼ単音メロディのみの代物です(再現しようと思えば、今から僕の使ってる作曲ソフトでできそうです)。


でも、それは狙って出しているようで。ナカコー曰く「Aっていう音とBっていう音があって、音数が少ないほうが、AとBの関係性がより分かりやすい」、と。関係性ですか・・・すごい視点から音楽を見ているなって感心します。


まあでも、こんな風に彼の理屈を鵜呑みにして、理解しようとするのは音楽理解とは違いますよね。というわけで、ここからは僕の直感的な感想。このアルバム、聞いていて気持ちがいいのは確かです。ドラム音まですべてシンセによって作られた、柔らかな世界。電子音には形があるっていうのが僕の持つイメージなんですが、それを非常に、明確に感じ取れる気がします。なにより、SUPERCARのアルバム『HIGHVISION』を聞いているときの、「見える世界の角度を変えていく」感じ、それがこのアルバムを聞いていても確かにあるんです。


本当に、大事な部分だけを抽出した、メロディでもリズムでもない部分で僕らに訴える音楽。時に、やりすぎだと感じる瞬間があるのは、正直なところですが。それでもこの、「手に取れる電子音たち」は、やはり中村君にしか作れないのだよなあ、って思います。


というわけで、実質的な3rd『夜を忘れなさい』。意外とやられます。オススメ。




あとの2枚の追加曲たちは、まあ、好きなのもあれば首をかしげるものもあり。一度通して聞いて、好きなものを編集して聞いちゃえばいいかなって思います。ちなみに僕のお気に入りは、『99-00』からは、ギターの小品11「JESUS COME BACK TO ME」、浮遊感溢れるコード進行に、こぼれるような電子音が素敵な16「TRONT」。『COSMOS』からは、シンセのメロディがキレイな10「NEONSIGN」、とっても可愛らしい16「KIDS」なんかですね(追加する前のもともとの曲は大体みんな好きなので、ここでは触れてません)。


まあ、ファンズアイテムかもしれないけど、『夜を忘れなさい』の1枚だけでもぜひ、いろんな人に聞いてほしいなあ、そんなことを思わせる作品です。