COLDPLAY at レインボーホール

激しいダンスミュージックで飾られた雰囲気の中、
聞き覚えのある厳かなシンセ音とともにライブは始まった。
はじまったのは「Square One」。3rdアルバムの一曲目。
クリスはどうやらじっとして歌えないらしく、あっちに行ってはマイクを天を向け、
こっちに座ってピアノを弾く・・・と所狭しと動き回る。


そんな風にして幕を開けたライブは、どちらかというと、
ROCK色の強い盛り上がりの激しいライブになっていました。
3rdアルバムのモードをそのまま反映したような、テンションの高いライブ。
アンセムナンバー「Yellow」も早々と3曲目に披露し、
みんなのテンションもどんどん上がっていく。
(ただ、合唱と呼べるほどみんな歌ってなかったか。あのサビは歌わなきゃ。)
ピアノ弾き語りによる部分も、湿っぽさよりは、
これから来る盛り上がりをより強調するための手段として使われていた気がします。


前半ではやはり「Politik」でしょう。
あの音に殴られているかのような暴力的なイントロ。そこから訪れるピアノ弾き語りによる「静」。
生で聞くクリスの声はやはり魅力的で、その声が淡々とこぼしていく欲しいものの羅列。
そして最後の「やっぱり 愛が欲しい」というフレーズ。なんてドラマティックな曲だろう。


ただ、みんなと一緒に盛り上がり身体を揺らしていく中、ふと
僕が惹かれるのは、COLDPLAYにおける「静」なんだなと思いました。
3rdアルバムも好きだし、COLDPLAYが世界を背負って立つバンドになった以上、
しょぼしょぼと弱気な歌を歌うわけにはいかないんだろうけれど。


そんななか、「Scientist」に心癒される。ああ、とっても優しい。


そのあと少し面白いことが起こりました。
「Scientist」の後半、「Oh〜」と素敵なファルセットが響き渡る部分が、
逆回転再生されていくなかで起こるセットチェンジ。
ドラムなしのアコースティックセット。そこで行なわれた二曲。
「Til Kingdom Com」と「Trouble」。前者はあまり好きな曲でもなかったけれど、
そのハーモニカの優しい響きと、クリスの丁寧な歌い方にじわじわ心を揺さぶられ、
その後に来た1st屈指の名曲「Trouble」。
高らかにピアノが響き、その美しさに聞きほれました。
僕はこんなCOLDPLAYが好きなんだよ。


そういえば、箸休め的に入れられた、1stの「Don't Panic」も、素敵だった。
なんて陶酔的なギターソロなんだろうか。
1stの曲達は、今のようなスケールやグルーヴ感はないが、
まるで隣で弾き語ってくれているような、柔らかで独特な空気を持っている。



後半のハイライトは「Clocks」。
僕はこの曲について、原稿用紙三枚ぐらいは軽く語れる自身がある。それぐらい好き。
ライブではロシア民謡のように、
あのうっとりするピアノがどんどん早くなり、終わる。


そして、一度「Talk」で締めたあと、アンコールは「Fix You」で終わった。
(「In My Place」では、クリスが会場の後ろのニ階席まで来て歌った。
この日一番の盛り上がり。我慢できずに自分の席を立ってしまう人も。)


一時間半ないぐらいの短いライブだったが、大体聞きたかった曲はやってくれたし、
ラスト「Fix You」の高らかな盛り上がりは、本当に幸せで、
時間に関しての物足りなさはあまりなかった。
素敵なライブだったと思う。


ただ、それでも僕はわがままをいう。
COLDPLAYには、ピアノの弾き語りのようなロマンチックさをもっと演出して欲しい。
「静」の部分を、盛り上がりのための布石にしないで、
「動」の部分と同じくらいに強調して欲しい。
世界的バンドになっても、君一人のために隣でアコギを引くような曲を作り続けて欲しい。


そんなことを思った。