「ふと、思ったんだけどさ」
「じゃあ、思ったままでいて」
「じゃあ、思ったままでいる」
「そうしてくれるとうれしいわ」
「ふと、思ったんだけどさ」
「じゃあ、思ったままでいて」
「いや、それじゃあ会話が終わっちゃうじゃん」
「次回作にご期待ください」
「打ち切りですか!?」
「ジャンプは甘くないのよ」
「それはともかく、今思っていることだけどさ」
「想い続けているのね」
「その字だとちょっと重い」
「今思っていることをどうするの?」
「口に出して言っていいかな」
「私に伝えたいの?」
「そこまで積極的ではないけど、誰かに伝えたいって言うか」
「じゃあ壁とかに話してなさいよ」
「反応が帰ってこないだろ?」
「じゃあネットの掲示板とかに書き込みなさいよ」
「今目の前に貴方がいるというのに何故」
「私に伝えたいの?」
「まあ…そうだよ、貴方に伝えたいの」
「こんな図書館で愛の告白?困るなあ…へけ」
「今日はとってもいい日だったね。明日はもっといい日だね」
「私その台詞嫌いなのよね」
「仕方ないよ、ハム太郎は子供向けの漫画だから」
「これからは大人の時間ということね」
「愛の告白はしないけど」
「了承なしでいきなり押し倒すの?現代的な恋愛感をお持ちね」
「あの、話をはじめていいでしょうか」
「どうせあなたの話なんて、つまらないでしょ」
「ひどい、聞く前からそんなに非難するなんて」
「『詰まらない』って褒めてあげたのに」
「分かりにくいな」
「素人同士の将棋のように詰まらない」
「余計分かりにくいな」
「さっさと話しなさいよ」
「ここまでひっぱっておいて。まあいいや、ふと思ったんだけど」
「ふと思ったんだけど?」
「願いって、願うものであって叶えるものではないよね」
(…続く)
西尾維新の新作「化物語(上)」…会話の掛け合いがとっても面白い。
しかし、いざ自分で書いてみると、すっごく難しいなあ。