A Weekend In The City/Bloc Party

ウィークエンド・イン・ザ・シティ
1stアルバムが大成功したバンドにとって、2ndは大きな勝負だ。同じ路線で行けば、1stにあった衝撃は薄まり二番煎じと言われ、路線変更すれば、前の良さがなくなった失敗作といわれる。先行シングル「I Still Remember」を試聴した時、1stの特徴であった音の隙間が埋められていて、僕はがっかりした。ああ、後者の「路線変更」を選んで失敗してしまったのか。


その考えはアルバムを聞いて吹き飛ばされることになる。
始めに言い切っておきたい。このアルバムは1stで大成功したバンドに類まれな、傑作2ndだと。


これまでのBloc Partyは、ある一音で空間を切り裂く、静と動で見せることが得意なバンドだった。しかし、この作品で見られるのは、少しずつ絵の具を重ねて油絵を描くような構築美。少しずつ積み重なっていく音が、ドラマチックに、かつアーティスティックに曲を動かしている。


そして、ケリーの声は、ハイトーンヴォイスにありがちな、憂いに満ちたそれではなく、まるでヘッドフォンからつばが飛んできそうな臨場感、緊迫感を持っていて、それがこのアルバムをよりヘビーでシリアスな雰囲気に色づけている。それにともない歌詞も直接的なメッセージを叩きつける。まるで目の前に世界の危機をたたきつけられたような…こんなにも冷たくて、こんなにも格好いい。


祈るようなイントロから怒涛の展開「Song For Clay(Disappear Here)」、
複雑で発明的なギターリフが響く「Hunting For Witches」、
Mogwaiを倍速でかけて歌をつけたような「Waiting For The 7.18」、
新興宗教的なリズム&コーラス、ノイズまがいのギターソロに痺れる「The Player」、


などの展開が激しい前半で惹き付け、


もっとも重く響く「Where Is Home?」、
アルバムの流れで聞くとその優しさに救われる「I Still Remember」、
その愛のある日常と、かき鳴らされるギターに涙を誘われる「Sunday」、


などの後半を聞かせる。アルバムの流れも素晴らしい。


確かに1stの発明的な音と比べれば、この2ndの手法はどこかで聞いたことがあるものかもしれない。でも、これほどまでに格好いい音を届けられて、一体どんな文句が付けられるというのだろう。バンドサウンドとエレクトロの融合。言葉にするとチープだし、今や珍しくもない手法だが、この迫力と、このドラマ性と、この美しさを表現できたバンドがどれだけいたか。


もう一度言う、このアルバムは傑作2ndだ。
Bloc Partyの踏み出した一歩に、迷いはない。