ロックだということ

僕はよく「これはロックだ」とか、そういう形容をする。


「アニメの銀魂はロックだ」
西尾維新の小説は全体的にロックだ」
「○○君の生き方ってロックだよね」
世界に一つだけの花はなんかロックじゃない」


最後の例えで勘違いしないで欲しいんだけど、ここでいう「ロック」と言う言葉は
音楽的な境界を飛び越えて、精神的もしくは思想的な面の「ロック」。
なんとなく、それも頻繁に口にしているこの言葉。
何となく反骨精神みたいなものを指しているのだけど、これを定義することは可能だろうか。


ライオット・シティ・ブルース (Riot City Blues)


例えば、Primal Screamの新作(といっても一年前だけど)を揚げてみると分かる。
生音中心の、オールドスタイルのロックンロール。
(個人的には、シングルの感じが僕の好みからはなれたので、レンタル待ちにした)
この新作に対する評価は二つある。



やっぱりこれが無敵のロックンロール。
ロックって世界を救うとか大袈裟なものじゃなくてもっと享楽的なものなんだ。傑作。


最先端の音楽を奏でてきたプライマルが、前に「Give Out〜」で一度やった原点回帰。
これはロックンロールっぽいけど、ロックの精神をなくしていてロックじゃない。



はてなはまぞうを辿ったりして、いろんな人のレビューを見たけれど、
この作品は「一聴してロック音楽っぽい音」でありながら、
「ロックである/ない」の評価が分かれているという点で、非常に面白かった。



一聴してロックと言う音楽と分かる音→
こういった、自己満足的享楽的な姿勢こそロックの真髄→
この作品は精神的にもロックだ→
でもそんな分かりやすくロックだと言える作品をプライマルがだしていいのか→
こんなロックっぽさをあざとく狙った作品はロックじゃない→
いや、ロックじゃないという不評を覚悟で、自分が楽しい音楽を奏でた姿勢はロックだ………



ロックの堂々巡り。こんな脇道の逸れ方もある。



一聴してロックと言う音楽と分かる音→
こういった、自己満足的享楽的な姿勢こそロックの真髄→
ちょっと待てよ、じゃあ世界に目を向け、
みんなの目を覚ますような音楽を鳴らし続けるU2はロックじゃない?→
いや、U2はそういう批判も覚悟で、それでも世界の悲惨さから目を逸らさず訴え続ける。
この姿勢はロックとしか言いようがない→
じゃあ自己満足的なプライマルはロックじゃない?→
いや、そんなことない、彼等もロックだ→
まったく対極に位置する二つの要素が、ともにロックで括れるの?→
そういうフランクさがロックなんだよ………



いや、どういうフランクさがロックなんだよ。と乗り突込みを入れたくなる。
というわけで、楽しくロックトークを繰り広げてきたわけだが、
結局解答なんてないんだろうなあっていうのは、僕の頭の中に漠然としてある。


まあ詰まるところ、「ロック」を何かの言葉で定義して縛ってしまった瞬間に、
「ロック」という言葉、もしくは思想の意味は溶解してしまうというのが僕の意見。


辞書を引くと、こうやって出てくるのだ。

ロック【名】定義した時点で意味をなくしてしまう反骨的概念のこと。


結局これからも、僕はなんとなくその匂いを感じ取った時に、
それを「ロックだね」と言い続けるんだろう。そして、型にはまったと思ったとき、
それを「ロックじゃないな」と批判するのだろう。それでいいと思う。


…なんだって?「定義できない」っていうように定義したら、
それは「型がない」という型にはまったわけだからロックじゃない、だって?
うるさいよ!そういう粘着質、ロックじゃないと思うなあ、僕は。