リニア/ストレイテナー

リニア
ストレイテナーを聞いていると、暖炉の前でアンハッピーエンドの物語を聞かされているような、不思議な感覚を覚える。断片的で、かつ映像を喚起するような歌詞と、センチメンタルなメロディによるものかもしれない。


その感覚がこのアルバムでは、より強くなった。確かに一聴すると地味なアルバムに聴こえるが、それは丁寧に自らの世界を構築していっている結果だ。一曲目の「Clarity」は、淡々としたギターに、電子リズムと電子ノイズと歌が、幾重にも重なっていく構造の曲。まさにこのアルバムを象徴している。他にも、キーボードの音色が古いお化け屋敷のような不気味さを醸し出す「Rest」や、ポエトリーリーディングを取り入れた「Lives」など、曲調は多種多様。


また、日向君のベースがより音の中心に来て、その上にギターやピアノやシンセノイズが乗っているような印象を受けた。どんな曲にもロック的グルーヴを持ちこめる彼のベースによって、逆に使う音の種類が増えるのというのは、面白い。


ただ、シングルの「Train」や、「Birthday」(一番好きな曲)、「After The Calm」といった従来のテナー節を感じる曲がやはり素晴らしいのを思うと、もう少しスタンダードなナンバーがあってもいいなと思うことも。そういった意味では、前作のようなポップさや派手さもやはり欲しかった。


この世界観をもっと深くまで見たい、という気持ちと、いいメロディの、単純に格好いいロックをもっと聞きたいという気持ちに挟まれる。ただ、もう少し聞き込めば、また違った何かが見えてくるのかもしれない。そんなふうに思わせる力のある、深みを持ったアルバムだ。