SUMMER SONIC 2007(大阪一日目)[後編]

KASABIAN以降です。



KASABIAN



そしてもう一つの期待株、OASISのノエルが「最近面白いバンドは、KASABIANぐらいだ」と豪語していたらしい、そのKASABIANの登場です。いかにもすごいのが来る、といったインスト音楽の中、想像以上にイケメンの多いメンバーが登場。ヴォーカルが二人いることにはじめて気付きましたが、その二人とも格好良くてびっくりしました。音楽も出来てルックスも格好いいとか、この野郎だな。


ライブはたっぷりリヴァーブのかかったドラムが印象的でした。それゆえか、最初のほうではヴォーカルがただの煽り役のようで、ヒップホップのインストを聞いているような気分になってしまいました。僕が2ndで一番好きな「Sun Rize Right Flies」も今ひとつでしたし。KASABIANといえば、どこかの怪しい宗教のようなコーラスが特徴的なんですが、そのコーラス部分で、トムにマイクを向けられても観衆がそれに乗り切らない、という場面もあったように思います。


しかし、トムが一旦いなくなり、ギターヴォーカルの人のみのヴォーカルで二曲をこなした後、(自分の必要ない曲とはいえ、ステージの後ろに下がるなんて、まるでOASISみたいな事をするなあと思ったり)「Empire」からはじまった後半は凄まじく、最高でした。盛り上がる曲をためておいたんだろうなあ。


特に終盤の「The Doberman」から「Club Foot」、そしてそこからトランスミュージック風味の「Stuntman」の三曲の流れには鳥肌が経ちました。展開の妙と、ヴォーカルの力量を見せつけた「The Doberman」で格好いいなあと思ったその後、キラーチューン「Club Foot」のあのベースラインが聞こえてきた時には、つめつめだった状態で、観客がさらに前につめてものすごいことに。もう無条件に、どうしようもなく高揚させられる、破壊力のある曲です。サビでトムはまったく歌う必要がありませんでした。何故なら、代わりに観客の僕らが声を枯らすまで合唱していたから。あの一旦聞いたら耳から離れない、「あーあああーああー」のフレーズは本当に発明と言っていいと思います。ライブで聴くとやばいよ。


最後は「Reason Is Treason」(だったかな?)でみんなを煽り、合唱させて締め。OASISとは曲のタイプが全然違うのに、OASISを思わせるこの光景は、まさしくヘッドライナーだったと思います(実際ARCTIC MONEKYSよりトリっぽかったという意見を結構見かけました)。会場が一体感で包まれた素晴らしいライブで、前半ちょっとダレたのを除けば、MANICSを越えたベストアクトといっていいかもしれません。僕らが歌っている姿を見て、「You are beautiful! You are beautiful!」といっていたトムが印象的でした。


Club Foot(♪あーあああーああー)



さて、ここからが僕のミスった部分です。KASABIANを聞き終わった後、盛り上がりすぎたのか頭痛が復活し、そのままARCTIC MONKEYSを聞くのが少し辛く思えてきました。ということで、最後は前回のサマソニにも来ていたのに、MUSEを取ったことで見なかったDJ SHADOW & CUT CHEMISTに行こうと決めました。


よって、メインのオーシャンステージを後にする僕。メインステージを出ると、すぐにブリーズステージがあり、そこからthe pillowsのライブが聞こえてきます。ちょうどMCの場面で「今日のライブは、空っぽを覚悟してきたけど、お前等みたいなマニアックな奴がいて嬉しいよ」みたいなことをさわおさんが喋っていました。ちょっと卑屈にもとれる一言だけど、ピロウズらしくていいなと思います。こういう状況が「ハイブリッド レインボウ」という大名曲を生み出したのかな。そのあとやった曲は知らない曲でしたが、さわおさんの歌声は疲れた頭にとても心地よく響いてきました。少しパークステージへ行く歩みをゆっくりにし、その歌声を聞いていました。



YANOKAMI矢野顕子×レイハラカミ)



DJ SHADOW & CUT CHEMISTに行く前に、大好きなレイハラカミを聞いておくことに。これが、想像以上に良かった。電子音を鳴らすと言うよりも、電子音と遊んで、それをそっと導いているようなハラカミさんの音と、その中をはねまわる妖精のような、無邪気だけどどこか危険な矢野顕子さんの声(彼女の声ってちょっと苦手だったんですが、ハラカミさんの音と一緒に聞くと平気でした)。それがとても神秘的で、そして音がとても優しくて、疲れて少し頭痛のする頭にすうっと染み込んできて、泣いてしまいました。唯一知っている「owari no kisetsu」もちょうどやってくれたし、ここに立ち寄ったのは大正解でした。こんなに感動したのに、それでも心を鬼にして「DJ SHADOWを見なきゃ」とここを立ち去る決断をしたのは、非常に失敗だったと思います。もうすぐ初のアルバムがでるとか。買わなきゃ!



DJ SHADOW & CUT CHEMIST



時間ぎりぎりにクーラーの効いた会場に入ると、スクリーンに今日のDJプレイの説明が映し出されました。「どうせレコードをかけるだけでしょう?」なんて自虐的な台詞も挟みつつ、「まったくシンセなどを使わず、8台のターンテーブルとレコードだけを使って、まっさらな状態からDJプレイをします」ということを説明。つまり、デジタル全盛のこの時代に、アナログにこだわってDJをするということなのかな。このナレーションの内容には、そこかしこから歓声があがりました。


そして、DJ SHADOWが「音楽を楽しむんやでー」と大阪弁で挨拶してライブ開始。流れてきたのは、ちょっとレトロなミュージカルの挿入歌のような音楽。なんというか、DJ SHADOWが自身のサンプリングとして入れる声の元ネタなのかな?と思わせる音楽でした。


つまり、これは彼らのDJプレイを見に来ている人達には興味深いショウだったと思うのですが、彼自身の曲を聞きに来た僕にとっては期待はずれでした。そもそも、彼らがかけるレコードがレトロすぎてあまり好みではなかったんんですよね。なにか不満があるのか、やたら「ファーック!」って大声で叫ぶ客もいましたし……結局15分ぐらいででてきてしまいました。


最後まで聞いていた友人によると、やはり最後まで自身の曲はやらなかったとか。変わりにメタリカやフーファイターズの曲はかけたようですが。うーん、結局僕はロックファンってことなんでしょうか。あまり合わなかったライブで、残念でした。今度はDJ SHADOWとしてプレイしてくれるライブを見たいものです。



エピローグ



というわけで、ダンスステージを後にしたのですが、果たしてこれから何処に行こうか迷いました。PET SHOP BOYSは最新作「Fundamental」が大好きなんですが、それとその前のアルバム「Relese」しか聞いていないので、過去の名曲を演奏されるとさっぱり分からないし、ARCTIC MONKEYSはさっきダンスステージに行く前に、一番聞きたかった「Brianstorm」が演られているのが聞こえてしまったし……いっそ込む前に帰ろうかと思いましたが、それもなんだか煮えきらず、結局PET SHOP BOYSへ。


会場に入って目に入ってきたのは、右隅にちいさなシンセが一台置いてあるステージと、何人ものピエロのような扮装をしたダンサー。すごくポップで、楽しげなライブだったのですが、強い四つ打ちに頭痛が刺激されてしまいしんどくなり、その上やっている曲を知らなかったので、結局移動。会場をあとにする時には、つなぎとしてか「I LOVE YOU BABY〜」のメロディが流れていました。


……もうこうなったらと、帰っていく客も多い中逆走し、ARCTIC MONKEYSの会場に戻り「When The Sun Goes Down」を聞く僕。相変わらず格好よくて、最初からARCTIC MONKEYSを見ておけばよかったかなと後悔。まあ、予想通り「トリっぽくなかった」と随所で言われていますけど。その次の曲でライブは終了し、花火が上がりました。「あー今年のサマソニも終わりか……移動ばっかりしてたな」と切なく思いながら、早足でバスに向かうとものすごい人、人、人。(桜島駅まで歩かせたほうが絶対よかったと思います。)当然、新幹線の最終便にも間に合わず、なんだかすっきりしない気分で新大阪のネットカフェに突っ込み、僕のサマソニ2007は終了しました。


ようは、今ひとつ見たいアーティストが定まっておらず、移動ばかりしてしまった僕が悪いんですが、あえて今年のサマソニ自体に文句をつけるとすると(性格悪いのは承知です)、


・いいアーティストはそろっていても、トリにふさわしいバンドが足りなかった。
(アークティックも、シャドウも、夕方ぐらいの時間にプレイするほうが合っている。ダンスステージと、メインステージにトリが似合うバンドが欲しかった)


・わりとライトなバンドが多く、重鎮が少なかった。
(よくよく考えると、YANOKAMIもアークティックもKASABIANも、アルバムをまだ二枚程度しか出してないんですよね)


・休憩所すら炎天下の外にあるのであまりに暑く、その上ステージ間の距離が近くてチューニング中に他のステージの音が聞こえてきてしまった。


などですかね。終りよければすべてよしとするなら、もしかしたら次の日のTRAVISを見たほうが満足できたのかなとも思います。とかく、今ひとつ盛り上がりきれなかったサマソニ。来年もフェスに行くとしたら、誰かと一緒に綿密に計画を立て、そして「とにかく好きなアーティストを回りたい」という気持ちを抑えて、「ロックのお祭りを楽しむ」というおおらかな気持ちを持って参加できたらいいなと思いました。