Oblivion With Bells/Underworld

Oblivion With Bells
5年ぶり5作目、正真正銘のフルアルバム。


「Crocodile」の音の感触から、「A Hundred Days Off」の緩い感じの作風の延長だと思って聞いてみると、驚きました。ストイックで、ダレンのそれとはまた少し違う、緊張感のある音です。絞った音量の電子音が、リズムの隙間から少しづつ染み出して、心を奥底からすこしずつ浮かび上がらせるような――そんな音世界が、全編通して貫かれています。先行シングル「Crocodile」が沈んでいくような印象を与えていたのは、決して偶然ではありませんでした。ここで鳴っているのは、前作のレーザービームのような光とはうって変わって、深い海の底から、かすかに見える光を辿るような音です。


よくよく考えると、これまでの課外活動(サントラやインターネット限定配信曲)を洗練させたような作風で、(例えば、最後の曲「Best Mamgu Ever」は、iTunes限定シングル「Jal To Tokyo」の中の曲「Ancient Phat Farm Coat」が元になっていると思われます)正常進化のようにも思えるのですが、ここまでリスナーに媚びずに、ある意味地味とも言われかねないような作品を作ってきたことには、感動を覚えました。でも、全然地味ではないのです。確かに一回目に聞いたときには、盛り上がれる曲の少なさにがっかりしましたが、二回目でそんな印象もすぐ消えました。夜空の下に飛び出して、踊りだしたい気分でいっぱいになりました。


オススメ曲は、本当に最小限の音だけで、夕暮れ時のセンチメンタリズムとダンスの高揚感を、ともに詰め込むことに成功した「Beautiful Burnout」、ミニマルなピアノが美しい「Holding The Moth」、そして「Glam Bucket」。あえてリズムを奥に配置して、耳元を転がり落ちていく耽美的な電子音を主役にしたてた、ため息が出るほど美しい「Glam Bucket」は、美しい中にも狂気があり、息苦しさがあり、サントラから漏れたのも納得です。これが映画内でかけられたら、確実に映像を食うでしょうね。


僕はどこか、Underworldは「ダレンがいたころのファン」とは決別して進んでいくと思っていたのですが、どこか1stや2ndの匂いもするこのアルバムは、ダレンのいたころの良さすら取り込みつつある気がします。これは僕の勝手な想像ですが、きっと、ダレンに固執していた人も見直すような内容だったのではないでしょうか。


確かにここには、「Two Months Off」も「Dinosaur Adventure 3D」もありません。しかし、そういった目立った曲はなくとも、アルバム全体が不思議な引力を持っているような、そんな素敵なアルバムだと思います。ベテランだなんてとんでもない。まだまだUnderworldは、新たな電子音の煌めきを僕らに見せてくれそうです。



ちなみに、僕はDVD付き限定版を買いましたが、DVDの内容はちょっと今ひとつでした。限定曲「Metal Fiction」のPVは面白かったけれど、短かったし、ちょっと気持ち悪かったです。やっぱりオススメは、iTunesでダウンロードですかね。日本版のボーナストラックに加え、10分にわたる「Crocodile」のRemixまでついて1500円。……ずるいです。