僕が東京に行っている間に

僕が東京旅行の帰り際に買ってきた「I Don't Wanna Be With You」を聞きながらレポートをやっていると、どうしてかどうしようもなく切なくなって、何故かNUMBER GIRLの「SAPPUKEI」をひっぱりだして聞いている。向井の叫びと、悲しいくらいに鋭角的なギターとドラムが耳を劈いて、僕の中の切なさが幾重にも増幅されたかと思うと、ふと、僕が東京に行っている間にSyrup16gが解散宣言を出した事が思い浮かんだ。


「世の中には二つのタイプのヴォーカリストがいてさ」


彼女はそう言った。僕はその言葉の続きを待った。


ストロークスのジュリアンみたいに『歌うために生まれてきた』タイプと、くるりのキシダくんやSyrup16gのイガラシさんみたいに、『歌わざるおえないから歌う』タイプ」


僕はそれに深く深くうなずいた。そうなんだ、彼は歌う事しか出来ないはずなのに、そうやって生きていく事しか出来ないくせに、解散なんてしてどうするんだろう。またバンドを組むのだろうか。ミキチャンのように一人で歌うのだろうか。一人で歌うのは寂しいのにな。


僕が見たSyrup16gのライブは一回きり。名古屋CLUB QUATTROの小さなハコだった。その時のライブレポートを読み返してみると、やっぱり彼の声について書かれていた。感情を曝け出すように、感情を搾り出すように、彼は必要に駆られて歌っていた。それが彼にとって必要だから歌っていた。そういえばあの時は、彼女とぎりぎりまで会っていて、「ライブに行かないでよ」ってごねられたっけ。その状況は東京でDAFT PUNKのライブに行く前の状況と一緒だった。そして僕は東京のホテルから、携帯のmixiで彼らの解散宣言を知ったのだった。


そう、東京旅行で僕がやりたかった事は全部出来たし、DAFT PUNKのライブは最高だった。けれど、帰ってきてからの僕は原因不明の切なさに、空っぽさに襲われていて、それは楽しみにしていた旅行が終わってしまった、ただそれだけから来るのか、よく分からなかった。ただ、それならいっそ切なさに浸ろうとしている僕を、明日提出の二枚のレポートだけが邪魔していた。


そういえば、こういう時にSyrup16gを聞くと良かったんだ。丁度「SAPPUKEI」も終り、僕は次のBGMに「COPY」を選んで、レコードのターンテーブルに乗せた。……というのは、格好つけの嘘で、僕はクソみたいな音質のノートパソコンからヘッドフォンを繋いで、五十嵐さんの気だるくてどこか色っぽい声を聞いていた。これからレポートをやるのは、果てしなく面倒臭いな。


なあ、毎日。なんかお前つまんねえよ。



BGM&BLUE WORDS「She was beautiful」