ふとこんなことを考えた。「平凡でなんのとりえもない俺なんか、いてもいなくても一緒だ」って思っている人がいたとする。僕はその人に聞いてみる。
「じゃあ誰が、存在する事に意味のある人なの?」
するとその人は適当に答えるだろう。「ジョン・レノン、マザー・テレサ、あとはイチローとかもかな」って。僕はそれに対してさらに聞いてみる。
「じゃあどうしてその人たちは、存在する事に意味があるの?」
彼はこう答える。「それは、ジョン・レノンは世界中の人が感動する曲を作れるし、マザー・テレサは世界中のたくさんの人を救ったし、イチローはみんなが感動して熱くなれるプレーができるし」というように答える。僕はそこでこうやって言う。
「でもその『世界中の人』のほとんどが彼らと比べれば『平凡でなんのとりえもない人』。もし『平凡でなんのとりえもない人』の存在にみんな意味がなかったら、それを何百人何千人救っても、その人に意味なんてなくない? 意味のない人を救うことに意味はないもの。0にどれだけ大きい数をかけたって0なんだよ。ならば、彼らの存在に意味があるためには、『平凡で何のとりえのない』君の存在にも意味がなければならない。そうじゃないか?」
彼は少し目を見開いて、あーなるほど、っていう目をした後、しかしすぐ元の覇気のない目に戻ってこう言った。「でもさ、やっぱり特別な何かを持った人になりたいし」と。僕は答えた。
「確かに」