present for cash?

26 Mixes for Cash present from you


BUMP OF CHICKENのB面集が出た。出る前からファンの間ではいろいろなうわさが飛び交っていた。……今までのB面を時系列順に並べて収録。新曲は一曲のみ収録。その「プレゼント」は「the living dead」の「Opening」と「Ending」のツギハギ……。うわさを聞けば聞くほど、ああ、これはまずいなと思った。


なぜなら、彼らが雑誌のインタビューで「B面曲は脇役じゃなくて、そこにあるべくしてある」(うろ覚え)みたいなことを答えていたのを知っているから。案の定、ちょっとネットを巡るだけで、「BUMPに裏切られた」、「その言葉を信じてシングル買い続けていたのに」、「車輪の唄をシングルカットしたころから思ってたけど、完全に商業主義に走ったな」などなど。


もちろん、このアルバムに対してのインタビューもあって、そこではこのアルバムが出るべくして出た、といろいろ力説してくれている。僕が読んだ限りでは、半分は納得できて(「B面の曲はライブでも前のほうしか盛り上がらないから、光を当ててあげたい」等)、半分はこじつけっぽいモノだった。


果たしてバンプは本当にB面曲に光を当てたかったのか。


それとも、商業主義に走ったのか。


それともレコード会社に出せと言われて仕方なく出したのか。


確かにバンプって、仕方なく強要されて出すCDがあったとしても、スピッツRADIOHEADのように「これは会社が勝手に出した」と言えずに、そのCDに意味を求めてしまう気がするから、この「仕方なく出した」説はかなり有力に思えるけれど。


しかし、ちょっと待ってほしい。どうしてバンプのメンバー達には、これほどまでに人格的な面を求められるのだろう。宇多田ヒカルがシングルカットしても、B'zがベスト出しまくってもこんなに叩かれないのに。ドリカムが不倫愛をした時も……それなりには叩かれたかもしれないが、もし藤原君が不倫したらもっと凄まじい事になりそうだ。そこらじゅうにアンチコミュができ、ファンの半分ぐらいがいなくなるのでは……?


僕はこういった面(必要以上にバンド自身の人格が求められる)に対しては、バンプは不幸な立ち位置であると思っている。結果がすべてのプロの世界で、過程まで強要されるバンド。確かに真摯な歌詞を歌う人が誠実な人格であったほうが説得力はあるが……。


僕はバンプやラッドやエルレのこういった状況を見るたびに、外国のバンドを思い浮かべる。例えばNew Order。長い沈黙の後、突然思い出したようにシングルカットした時、「ああ、お金がなくなったんだな(笑)」とあるファンに親しみを込めて言われていた。例えばMassive Attack。「サッカー観戦したいからレコーディングはしない」とインタビューに答えていた。Aphex Twinなんかは、「26Mixes for cash(金のためにやった26のリミックス)」なんてアルバムも出してるくらいだ。もちろんそれでファンが離れる事はない。


確かに上述のアーティストとバンプは、立ち位置も、出身国も、音楽性も違うのだけど、僕はこういったバンドのファンのおおらかさは、大いに見習うべきだと思う。藤原君も、たまにはインタビュアーを茶化したりする余裕があってもいいんじゃないかな。


今の状況じゃ、「考え方が変わった」ことすら一部のファンには通用しない気がする。「昔はカップリングにはカップリングのよさがあると思ったけれど、今はカップリング曲にも光を当てたいと思った」……こんな風に考え方が変わることだってあるだろうに。「むかしの主張と違う。全部揃えたシングルは売った」と言わなくてもいいだろう。


期待が大きいからこそ、バンドの人格さえ求めてしまう気持ちが分からないわけじゃない。僕はシングルもアルバムも全部持っている熱心なファンのつもりだが、それでも「昔ほどの情熱がないから、こういう余裕ぶったことがいえるんだ」と言われてしまうかもしれない。でも、これだけは言える。本当に大事なのは、バンプ自身よりもバンプの作品のほうでしょ。それは揺るがない事実だと思う。


だから「藤原君が人格者」とか「利益に走った」とか確認すらできない事を想像する前に、「Present From You」を聞けばいいと思う。そして、このアルバムが良いか悪いか、それだけで判断すればいい。


僕は、素直にいいアルバムだと思った。これで熱狂的なファンじゃない人も、「ラフメーカー」、「銀河鉄道」、「夢の飼い主」と言った名曲たちに触れられるし。不思議とアルバム全体の流れも悪くない。タイトルだって、優しい、バンプらしいタイトルだ。(僕は最初「Present For You」だと思っていて、だっさいタイトルだなあと若干残念だったから、それが「From」だと知っただけで嬉しかった)。


曰くつきの新曲「プレゼント」だって、ツギハギなんてとんでもない、未発表の中間部分も合わせて一曲としての名曲だ。僕はMDでB面集を作った時、「Opening」と「Ending」をつなげて「Opening&Ending」なんて曲にして入れたことがあるぐらいこの二曲が好きなので(なんという偶然!!)、こんな形でまた聞けて最高だと思った。


また外国だが、イギリスのTravisというバンドも言っている。「僕達が消えても、僕達の作った曲は残る。それが大事なんだ」。僕は藤原君の人格を擁護したいわけじゃない。ただ、分かりもしないバンプの人格云々を語って、ファンをやめたとかやめないとかそういうのはもうやめようってこと。ただ曲を聴いて、それが良かったら好き。悪かったら嫌い。それでいいじゃん。


藤原君だって聖人じゃなくて、ひとりの人間なんだから、もしかしたらちょっとお金儲けに走ってしまうことだってあるかもしれない。もちろんそんなことはないかもしれない。ひとついえるのは、聖人じゃなくて、弱さを持った一人の人間だからこそ、弱さを持った僕達を震わせる曲が書けるんだと言う事だけだ。