自分探しの旅

タイに二週間行って来た友達に聞いた。「新しい自分、見つかった?」友達は言った。「いいや。楽しすぎてずっと居たくなっただけ。考えてもみろ。行ったことがない場所に自分が落ちているわけないじゃないか。」


きっと、自分探しの旅に出て見つかるものといったら、自分が凡庸で平凡でボンボンな散らかった自分の部屋にしかいないという事実なんだろう。でも旅に出たことがない僕は、それを言う権利もないんだろう。


ああ、沖縄に行きたい。離島の海に行きたい。そこにあるのは、どこまでも透き通ったエメラルドグリーンの海と、この世の白をすべて集めてもまだ足りないくらいの白い砂浜と、その白い砂浜を孤独にさまよう一匹のやどかり。でもそこに自分はいない!どこにもいない!置き忘れてきてしまったのだ!あの暗くてじめじめした部屋のどこかに!