ZAZEN BOYS4/ZAZEN BOYS

ZAZEN BOYS4
ZAZEN BOYSの四作目のオリジナルアルバム。


これはすごい。これまで僕は、ザゼンの音楽に対してある意味では「無理をして」ついていっている部分があったのですが、今回はためらいなく言えます。最高。


まず音がいい。鋭角過ぎて耳に痛かった「3」と比べると、ソリッドさを残しつつ空間の広がりを感じる素晴らしい音になってます。さすがはデイブ・フリッドマン。そして今回思うのは役割分担のすばらしさです。


これだけ演奏力が高いと、プレイヤーにもいろいろな主張があるはずですが、多分向井氏がとても信頼されているのでしょうね。打ち込みのほうが適しているところはためらいなく打ち込みに譲り、必要なところでは思いっきり暴れる。そのメリハリのせいか、これだけ打ち込みを大胆に取り入れたアルバムなのに、メンバーのプレイの素晴らしさがまったく隠れてしまっていない。松下氏は「HONNOJI」や「Idiot Funk」でその重厚なドラムプレイを、カシオマンは「Weekend」で空間を引き裂くギターを狂ったようにかき鳴らす。


そして新規加入の吉田一郎氏! 彼のベースは「The Drifting/I Don't Wanna Be With You」の後半部で向井氏のキーボードとセッションするんですが、これがたまらなく格好いい。日向氏ほどの自由さが無い分、非常に緊張感があり、ミニマルなフレーズの変化を魅力的に聞かせます。しかし、この曲のシングルバージョンとの変わりようといったら……。足りないものが足され、いらないものが省かれ、完全に次のステージに行っています。あの激烈に格好よい「HONNOJI」よりもさらに好きな曲かもしれません。


さらに、「Sabaku」での向井氏の歌復活も嬉しいところ。この曲はiTunes Music Storeでは一番曲単位で多く買われていて(僕が見た時点では、ですが)、みんなが向井氏のメロディを心待ちにしていたことが分かります。いつもより少しだけセンチメンタルな歌詞とあいまって、これまたいい曲です。歌詞も同じフレーズ連呼が抑えられて前より良くなっていて、アルバム全体としても歌心が少しづつ戻ってきているのがまた嬉しい。


初期とはかなり変わってしまい、テクノのそれもミニマルな作風が取り入れられているので、好みは別れると思いますが、この路線、僕は大歓迎です。このアルバムの欠点と言えば、前半三曲後半二曲が良すぎて若干中盤の印象がうすいこと、ぐらい。僕の中ではためらいなく最高傑作といえます。「3」のレビュー時のようにこの文章を書き直すこともないでしょう。


緊張感があるロックが好きな人、必聴です。そう、このアルバムはどれだけ電子音を取り入れていても、紛れもなくロックのアルバムなんです。