無題

なんで僕の感情はいつも周回遅れで僕に追いつくのだろう。
まるで音楽のフェードインのように、その瞬間から少しづつ僕に近づいてくる。
それが心地いいかというとそんなことはなく、
少しづつ歩み寄ってくるその姿に恐怖すら覚えるし、
立ちすくむことしか出来ない僕にはその感情から逃げ切ることも出来ない。
ただ近づいてくるそれを見つめながら、ポケットから煙草を取り出して準備をするだけだ。


今、この瞬間に合う音楽はなんなのだろう。


僕の青いiPodには、たくさんの曲が入っているけれど、その中に、
今この気持ちにぴったり合う音楽はなかった。
どれだけたくさんの曲を持ち歩いても、僕の感情のくぼみをぴったりと埋めてくれる、
そんな曲を探しあてることは難しい。今のこの文章を書いている瞬間も、
いろんな曲を試しているけれど、心地よくなれる曲はあっても、
この瞬間を鮮やかに思い出すキーになるような曲がまだ見つからない。
それを見つけるまで、今日は音楽を聴き続けようと思う。


僕とその感情を、この瞬間の音楽が包み込んで閉じ込めて、いつでも取り出せるようにする。
こうして僕は、また気持ちにラベルをつけて保存する。
そうすれば、これから始まる味気ない毎日を、やりすごせるような気がするんだ。