はるあめ。


「過去に流した涙が今の はるあめとなり奏で落ちる」



音楽なんてなくたって生きていける、って僕はよく口にするけど、
もし音楽がなかったら僕の人生は今の1000倍ぐらいつまらなくなっていたと思う。
本当に大好きな曲に出会うと、呼吸が止まって、胸が苦しくなる。
まるで三年間片思いした女の子とはじめて言葉を交わしたときのように。


この曲はpiano版を今年見つけて、本当に狂ったように聞いた。
マチュアとかプロとかボーカロイドとか人の声とか、
そんなのすべて関係なく今年で一番聴いた曲だと思う。
同時に僕の全ての音楽に対する偏見は溶けてどこかに消えた。


大好きなpiano版が、春に差し掛かる頃の冷たい雨だとしたら、
一年を経たこのアレンジは春に降り注ぐ柔らかく優しい小雨のよう。
はるあめという温かい言葉の響きに、
抽象的だけど目の前に雨の粒が浮かび上がるような美しい歌詞。


この曲を見つけてすぐ、僕はiPodtouchにいれて煙草を抱えて玄関を出た。
外はまるで示し合わせたかのように雨が降っていて、
分厚い雲をその向こうの星の光がかすかに黄色く染めていた。
季節は冬で、雨はこの曲のイメージとは違う冷たくいたい雨だったけれど、
ヘッドフォンをしてこの曲を聴くとそれが優しい雨のイメージに上書きされた。
呼吸が止まって、胸が苦しくなって、
奥底に秘めていた感情をそっと引き出されたような気がした。


「慣れることを分け隔てり なじむ事に感謝したり

解け合うほど色鮮やかになる 個々との雫を」


引用部 AVtechNO「はるあめ。」より一部抜粋