2019年ベストソング10選

VTuber のお陰で2015年あたりからアンテナが下がっていたインターネット投稿の音楽への感度がまた上がり今年は音楽をたくさん聞きました。離れていた頃に流行ったボカロ曲も大方把握できた気がします。

以下のルールでランキングしています。ではどうぞ。 

・アーティスト毎に一曲のみ
・アルバムとシングルは別カウント
・私情は挟まず iTunes の再生数カウントに準ずる

(なお、好きな曲だけ読みたい場合は、記事の最後に目次があるので思いっきりスクロールして逆に辿ってくださいな。)

10. 海の幽霊 / 米津玄師 (20) 


米津玄師 MV「海の幽霊」Spirits of the Sea

2019年も彼の年でした。ついに全面降伏宣言し、真面目に選考すると決めたレコード大賞がパプリカを大賞に選出(今更遅い)。菅田将暉は彼の提供曲「まちがいさがし」で紅白出場。NHKオリンピックテーマ曲「カイト」では嵐とコラボ。Lemonは前人未到のカラオケ85週連続一位(52週で既に新記録)、ちなみに5億再生。

本作も「馬と鹿」も YouTube では6000万再生。

彼の曲はタイトルがいいですよね。「まちがいさがし」も「カイト」も、タイトルというかテーマが既に素晴らしい。タイトルが決まると書けると川谷絵音西尾維新も言っていましたが、米津玄師もその類いの人かもしれません。

海の幽霊はそのサウンドプロダクションが素晴らしかったです。多重録音されたボーカルの浮遊感とサビで一気に目の前が開くようなミックスが素晴らしい。彼の曲って11とか13とかの普通簡単に使えないテンションコード多用したり(灰色と青)、サビのリズムがつんのめったり(カイト)するんですが、この曲はわりとシンプルなコード進行とメロディで、凝った編曲で攻めてきている気がします。本当にになんでもできるな。

9. R U GAME? / KMNZ (20)

open.spotify.com

もう VTuber が出てきてしまいましたが、ケモ耳ボーカルユニット KMNZ です。Twitter でやたら根暗な発言を繰り返す、が、声が完全に萌え声の LIZ と、ちょっとボーイッシュで真面目な感じの LITA のユニット。クラウドファウンディングの力でアルバムが出たのですが、それがまた素晴らしくて12月のヘビロテでした。

わかりやすくいうと HALCALI の2019年解釈版ってところでしょうか。非常にゆるい空気で、ラップの歌詞もフロウもゆるくて、でもトラックはガチ。

この曲はその中でもキラキラしたギターと電子音が絡む王道チューンなのですが(キラキラしたギター大好きなんです……)衝撃を受けたのはむしろ「Opening」の全くやる気がないボイパと「melty girl」の歌詞ですね。

ぶっちゃけライブの前日は、ちょーだるいよ

君にとっちゃ休日の楽しみでも あたしにはただのお仕事

melty girl / KMNZ

ここまで言い切る曲はじめて聞いた。笑っちゃいました(この後フォローが入りますので安心してください)。

ちょっと LIZ の萌え声が好み別れるかもしれませんが、それがイケるならとてもいいです。まあ、一度聞いてみてくださいな。

8. Dance With Cinderella ! / 輝夜月 (31)


輝夜 月『Dance With Cinderella !』-LIVE CLIP

輝夜月も VTuber なのですが、彼女はその「首絞めハム太郎」と呼ばれる声が唯一無二なんですよね。勢いだけの動画で2年押し切るのは難しいとおそらく考えた彼女の運営が、2019年に音楽活動側にシフトさせたこともうなづけます。VTuber というのはある意味では「声」の職業なので、音楽との親和性が高いのです。

彼女の曲はミクスチャーというか、ロック・パンク・ラップ(台詞?)のごった煮系で勢いで攻めてくる感じなんですが、この曲のガーリィな感じが彼女の声に一番あっていて気持ちいいです。何度でも言いますが、ロックが似合う女性ボーカルって言うのは貴重なのです。彼女はデザインもロックそのものですし。

歌詞は真面目に読むとちょっと恥ずかしいです。若い。

彼女のアルバムが 1月15日 にでます。今はまだイマイチな VR Live の進化にも期待したい。Zepp VR と名乗るぐらいなのですから会場と同じ熱量を再現して!

NEW ERA / 輝夜月 (23)

これクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」ですよね?笑

7. ユリイカ / サカナクション (31)


サカナクション - ユリイカ (MUSIC VIDEO)

サカナクションがやっと出してくれたアルバムより。2019年ではないが、アルバムの中にあるので、ルール通り2019年の曲としてカウントです。

今年も彼らのライブを見ましたが、本当にこんなに売れているのが信じられないぐらいに変なバンドですよね。アルバムの冒頭「忘れられないの」とか謎の 80 年代風味出してきたし。なぜ今? 山口一郎の考えることはわかりません。

この曲は柔らかくエコーの効いたエレピのループが気持ちよく僕の好みど真ん中の曲なのですが、着目すべきは歌詞ですね。

いつえーいえーん(永遠?)おわかなー(わからない?)

かぜがふくたびいそーぐーいそーぐ(it's so good?)

と聞こえる英語なのか日本語なのかわからない感じのBメロ、実はこうです。

いつ終わるかな 風が吹くたび 生き急ぐ 生き急ぐ

「いつ」と「終わるかな」の間に「yeah yeah」って入れる? 普通? やはり山口一郎の考えることは本当にわかりません。でも、サビの「時が 時が 時が 時が震える」のリフレイン本当に気持ちいいんです。悔しい。アルバムは本当に良かったです。

6. ヒトガタ / HIMEHINA (33)


HIMEHINA『 ヒトガタ 』MV

この曲そんなに好きじゃないです。笑 いえいえ違うんです、VTuber アーティスト系最高峰の HIMEHINA は VTuber 唯一の1000万再生の曲を持っておりそれがボーカロイドの「劣等上等」のカバー。この曲はアレンジがその流れを汲み過ぎていて少々意外性に欠ける部分がありました。なのでここからは「劣等上等」について語ります。


HIMEHINA『劣等上等(Cover)』MV

「劣等上等」はキレッキレのラップがまず耳に残ります。特に田中ヒメのリズム感がすばらしく、少々しゃがれた声もラップ向き。さらに、鈴木ヒナとのハモリは声質も合っていてなんとも美しい。Perfume のあーちゃんが「Perfume みんなの声を合わせた瞬間がすごく好き」なんて言っていましたが、その極地という感じです。ペアで活動することの多い VTuber の良さがこんなところに。

加えて、その間奏で披露される田中ヒメの人力シンセサイザーによるドロップ。原曲はEDMライクなワブルベースの音ですがそこを笑い声に置き換えるという発想とその完成度に震えました。ボーカルを加工してエレキギターソロのように使うのは muse などが使う手法ですが、ここでそれが聞けるとは。本当に素晴らしい。最後の「フロアが 湧き上がりました」という自信満々なセリフの締めも完璧で、この格好いい曲を作ったギガさんとそれに魂を吹き込んだヒメヒナに感謝しかありません。

もちろん踊りとPVの素晴らしさは言うまでもなく、ライブの完成度も VTuber では彼女らがぶっちぎりのナンバーワンでした。今年は必ずライブに行きたい。

ヒバリ / HIMEHINA (30)

ボカロの高速歌唱の流れを汲んだ爽やかなロック。オリジナルではこれが一番好き。

琥珀の身体 / HIMEHINA (24)

まさかのしっとりR&Bまで。シリアスな歌詞が映える。

5. Aurora / BUMP OF CHICKEN (38)(+32)


BUMP OF CHICKEN「Aurora」

今年の BUMP OF CHICKEN のアルバム、aurora arc は本当に素晴らしかったです。バンドサウンドに回帰し、しかし電子音を取り込んだ際に培ったキラキラ感はうまく取り込まれており、どの曲もメロディが抜群に良い。歌詞は当たり前のように良い。

中でもとくにサウンドが気に入ったのがこの曲。イントロのギターの音がオーロラのように柔らかくキラキラしています。サビの裏声も祈るような切実さと静謐さを秘めており「もう一度 さあどうぞ 好きな色で 透明に」ってコーラスがまた透明感があって……編曲と歌詞が一番シンクロしていた曲なのかも。

彼らの歌詞がいいのは当たり前なのですが、この曲の最後の言葉はこれです。少し寒さを感じる編曲の最後に「あなた」と優しく暖かく語りかけてくれる藤原さん。この「温度感」アルバムの中でも随一。涙がでる。

あなたの言葉がいつだって あなたを探してきた

アルバムとシングルで再生カウントが分かれてしまったのでこの順位ですが実質年間一位。アルバムごとずっと聴いていたので、以下の4曲も実質10位以内です。

aurora arc / BUMP OF CHICKEN (40) 

アルバム冒頭6拍子インスト。最近のバンプは結構攻めた拍子にすることも多いです。

月虹 / BUMP OF CHICKEN (39)

この曲のCメロへの進行はすごい。宇宙を感じる。疾走感の中に感じる円熟味。

アリア / BUMP OF CHICKEN (28)

たった一瞬をここまでドラマチックな曲することができるのですね。シングルよりもストリングスが効いていて壮大になっており、間違いなくレベルアップしてます。

記念撮影 / BUMP OF CHICKEN (27)

タイトル百点。このテーマで藤原くんが曲を書いて悪いわけがないです。この曲のワンピースのコラボCMを見るたびに涙が出てしまうのでやめてほしい。

4. RENDERING THE SOUL / world's end girlfriend (41)


world's end girlfriend / RENDERING THE SOUL / MUSIC VIDEO / feat. HATSUNE MIKU 初音ミク

まさかこのタイミングで WEG が初音ミクを使うと思いませんでした。

『AIが人間の不完全さや非合理性を面白がり、人間が持つ孤独や苦悩や悲哀などを「感情のコスプレ」として真似して遊んでる音楽』

(動画の概要欄より)

……という特殊なコンセプトで製作された本作を聴いていると、自分も AI のように曲の要素の断片のもつ「仕掛け」に感動しているだけではないか、という気分になってくるのですが、それはそれとしてドラマチック極まりないぶっ飛んだ展開と美しいシンセサイザーの音が爽快でもあり、これぞ WEG といった曲に仕上がっています。

初音ミクの声を生かした曲、というのは久しく聴いていませんでしたが、まさかこのビッグネームから出てくると思いませんでした(twitterの告知を見てガッツポーズしました)。そしてここまでぶっ飛んだものは今までなかったです。

4. 魔女 / 花譜 (41)


花譜 #11 「魔女」 【オリジナルMV】

さて。2019年の VTuber の音楽を語るときに「花譜」を避けて通ることはできないでしょう。しかし本当はあまり彼女を VTuber の文脈で語りたくはないのです。彼女はあくまで、ご両親の心配を考慮し顔を出して芸能活動をしないで済むように VTuber という手段を取っているだけ。もちろん、何かあったときにアバターごと忘れられる権利を行使できることも VTuber の利点なのですが、そんなことより彼女の声を聞いてほしい。

最初に「魔女」の「これは魔法だ」という歌詞を聞いた瞬間にすぐにわかりました。彼女の掠れた、絞り出すような、少女性の強い唯一無二の声。僕は確信しました。これは、絶対に、注目される、と。

この声を生かす曲を書くのは「命に嫌われている」という、命を絞り出して書いたとしか思えない切実なボカロ曲で有名になったカンザキイオリさん。この二人がタッグを組んだことは2019年の奇跡と言っても過言ではないです。椎名林檎亀田誠治と会った時のように。運命を感じてしまう。

普通の人の10倍ぐらい儚くて100倍ぐらい感情が乗っているかのような彼女の歌は、まるで青春そのものが鳴っているようで聞いていると胸が苦しくなります。VTuber に興味が湧かなくてもいい、ただ、彼女の歌を聞いて魔法にかかってほしい。それだけです。

quiz / 花譜 (24)


花譜 #29 「quiz」 【オリジナルMV】

ボーイミーツガール。僕は強がりで「大丈夫だよ」と歌う曲が大好きですが、この曲は僕の人生で聞いた中で一番切実で大丈夫じゃない「大丈夫だよ」だと思います。

3. STAND-ALONE / Aimer (42)


Aimer 『STAND-ALONE』MUSIC VIDEO(日本テレビ系日曜ドラマ『あなたの番です』主題歌)

図らずもハスキーな女性ボーカリストが2組み並んでしまって僕の趣味が完全にバレるのですが今年も Aimer は素晴らしかったです。

この曲のように「一見、ボーカルが埋もれてしまいそうなテンポの速い」曲と彼女の相性、実は良いと思います。おそらく、バラードでなくても、彼女は「歌い上げる」ことができるのではないかと。一番のサビの最後のフレーズの「そうでしょう」の音の伸ばし方を聴いてみてください。ものすごい息の抜き方で、表現力の凄まじさを感じます。

Aimer のライブに行ったときに彼女は歌声だけでなく、歌い方も含めて素晴らしいんだなと改めて実感したのですが、まさに技術と天性の声を併せ持った類まれなシンガーだと思います。

I beg you / Aimer (33)


Aimer 『I beg you』(主演:浜辺美波 / 劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅱ.lost butterfly主題歌)

呪術的でまさに梶浦さんといった作曲ですが、こんな曲も歌いこなせる Aimer はさすがだと思います。Aメロの後ろで聞こえている「あっあー」という怪しいコーラスは正しい Aimer の声の使い方だと思います(雰囲気が出すぎていて最初楽器かと思った)。浜辺美波の MV も本当に素晴らしいです。

2. Got to Keep On / The Chemical Brothers (50)


The Chemical Brothers - Got To Keep On (Official Video)

配信日に速攻でDLして、冒頭のシンセリフが聞こえてきた瞬間にあまりの「音の良さ」に小躍りしましたがこのレベルでの音の作り込みは邦楽ではなかなか聴けず、洋楽ならではかなあと思います。そして名曲「Swoon」流れを汲む美しい女性コーラス、直接脳に作用して踊らせてくるようなベース。そしてあからさまなブレークと圧巻のドラムロール。これまでの彼らの総まとめのような楽曲。観客の歓声をサンプリングするのはなかなか勇気がいると思いますが、よほど曲に自信があったのでしょう。

しかしまあ、一つのジャンルを作り上げ引っ張ってきて、音楽の歴史に残ること確定の伝説のテクノチームでありながら、一体何度良作アルバムを作れば気が済むのでしょうか。今年は Underworld も去年に引き続き精力的にリリースし、内容も素晴らしく、EDMがすでに少しの陰りを見せる流行り廃りの激しい世界で、テクノレジェンドたちの存在感はむしろ強化されているように思います。

加えてアルバム一曲目「Eve Of Destruction」では、ゆるふわギャングをフューチャーして「ぶっ壊したい何もかも」なんてサンプリングを入れてきてびっくりしました。彼らにとっては日本語も英語もみんなフロアを揺さぶるための素材でしかないのですね。


The Chemical Brothers - Eve Of Destruction

1. shadowgraph / MYTH & ROID (56)


MYTH & ROID「shadowgraph」 (TVアニメ「ブギーポップは笑わない」OPテーマ) MV full

けいおんの「GO! GO! MANIAC」は僕のアニソンへの偏見をぶち壊した曲ですが、やはりその仕掛け人である作編曲の Tom-H@ck 氏は素晴らしいです。この MYTH & ROID も彼のプロジェクトの一つですが、それを知ったときにあまりに雰囲気が違う作風に同じ作者だと信じられない気持ちと、やっぱり彼かという「してやられた」気持ちが一緒に襲ってきたことを覚えています。

大好きな硬いシンセの音と、ストリングスの厳かな音の組み合わせ。曲の最後にいちいち挟む「ダダダダ」というスネアとストリングスとシンセのユニゾンがいちいち気持ちよく、アニメの世界観に寄り添う無機質なボーカルが非常に格好良い一曲になっています。僕の好みど真ん中、ですね。

 

というわけで目次です。今年はちょっと VTuber にうつつを抜かしすぎて洋楽が足りなかったので来年は洋楽も聴いていきたいと思います。

 

 

白日 / King Gnu (12)


King Gnu - 白日

ちなみにこの中に確実に入るべきだったのに、紅白まで聞くのをサボっていて(いい曲な気はしていたので、本当に「サボっていた」という表現が正しい)漏れた曲がこちら。いやあ、もう人気すぎて語るのも恥ずかしいですが「白日」好きですねえ。

こんなに流行っているのが信じられないぐらい「凝った」曲だと思いますが、なんだかんだピアノソロと一緒に始まったり、コードがしっかり邦楽っぽくあったりと、実はすっごく分かりやすくもあるのが実に絶妙なバランス感覚だと思います。

Official髭男dism といい King Gnu といいお洒落で凝った2つのバンドが一気に紅白までジャンプアップした 2019年ですが、この流行りが「ボカロで育った年代が大人になったから」という仮説は本当なのでしょうかね。そもそも、米津玄師がシーンを席巻している今それらを切り離して語ることは難しいと思いますが、面白い仮説だと思います。