まるで世界の終わりみたいだねって、君は笑った #2

命の選別が行われている。病院ではなく、すぐそばで。
総理は7割必須8割できれば人との接触を減らせと言った。
これからそれでも出勤する人と、家にこもって仕事をする人に分かれる。
自由意志であればいい、しかし、きっとそうはならない。

「こいつは会社に来ないとサボるだろう」

そんな判断で生産性の低い人間が選りすぐられ、
リスキーダイスを降る役割を与えられる。

なんでみんな、なんども何度も繰り返し、命は大事だというのか。
それはつまり、命は大事じゃないから、なのかもしれない。
利根川が「金は命より重い」と言ったのは、間違いではなかったのだろう。
生産性の低い人間は死んでもいいのだろうか。
そんなわけないのに、そんな風に見える行動が目の隅にちらついた。
白内障の影のように。

もっとも、心配しすぎなのかもしれない。
満員電車は三密に当てはまらないとも言うし。
僕のようにタバコを吸わない普通の人は、
交通事故で死ぬ確率の方が高いのかもしれない。
なんにせよ、自宅で仕事ができている僕には何も言う資格はない。
ただ粛々と、誰もがリモートワークができるようにシステムを組むだけだ。
オフィスレス運動とか、名付けてみようか。
意識が高い人みたいで、まいるなあ。

未だトイレットペーパーは品薄で、僕はドラッグストアに朝十時に並んだ。
「マスクの入荷はありません」と店員さんは答えていた。
並んでいる人が殺伐としていなかったのがまだ救いだった。

リモートワークしていると、twitter に通知が入った。
僕が世界一好きな邦楽バンドであるスーパーカー
そのフロントマンで今はソロ活動をしているナカコーが家からライブをしていた。
僕はそのライブを聴きながら、仕事をした。

テクノのような繰り返しを基調とする構成を、
ギターの弾き語りと少しの電子音だけで表現するその宅録配信は、
あまりにも素晴らしくて、僕はそれを狂ったように繰り返し聞いていた。

「家にいましょう」と語ってぶっきらぼうに配信を切ったナカコー。

僕は生産性の低い誰かの代わりに出社するような、
古き良き日本男児ではないけれど、ただただ家にいる。
それだけで誰かが、救われていると信じたい。
自己憐憫にまみれた詭弁だとしてもいい、そう、信じていたい。

 

今日の一曲
Warning Bell / スーパーカー


[LIVE] Supercar - Warning Bell (Last Live)

まるで世界の終わりみたいだねって、君は笑った #1

 46億年ぶりぐらいにmixiにログインした。
まだメールアドレスを覚えていたのは奇跡だ。

この数ヶ月で世界の姿は一変してしまった。

先週の金曜日に珍しく会社に行くと、駅に人はまばらだった。
週4でテレワークをしていた僕からすると、
久しぶりに人類のいる集落を見つけたような気分だった。
あれ、まだ人類生きてたんだ、なんて軽口が溢れる。

オフィスにいくと、いつも昼飯を一緒に食べる先輩も後輩もいなかった。
僕の後ろに座った先輩は「今生の別れですね、明日から会社には来ません」と言い、
僕は静かに手を振った。
いつも適当な課長は、テレワークという言葉を聞くとやたら寂しそうだった。

戦時中みたいだね、と誰かが言った。

大きな会社はすぐにテレワークに切り替える。
それができるシステムも、お金もある。
しかし、その会社が雇う一次外注、二次外注は、そう簡単にいかない。
「コロナウィルスの影響を受けないように工夫しろ」
という雇い主の言葉を忖度して、
生産性を下げぬように今も会社に来ているところも多いだろう。
将棋では歩から死んでいく。
本当に守るべき王将があればいいのだけれど。

全人類平等って言ってたのは誰だっけ。
補助ももらえず安月給で働く人たちは、テレワークの機材を買うお金も、
テレワークで働けるような仕組みづくりをする時間もなく、
1/500で重症化するクレイジーダイスを突きつけられながら電車に乗り、
机がぎちぎちに詰められたオフィスに通う。

この世界では仕事という自己実現が圧倒的正義になっているらしい。
果たしてこれ以上、扇風機は、電子レンジは、掃除機は、冷蔵庫は、自動車は、進化する必要があるのか、毎週ゲームのアップデートをする必要があるのか、Youtube Studio という機能は本当に必要なのか、という疑問を忘れて人々は新しい機能を、サービスを作り続けている。

全てはエンターテイメントだ。
なんでライブハウスと映画とバンドだけ休むんだろうか。
僕らも……同じように楽しいから、サービスを増やしているだけなのに。

そろそろ。止まるべきなのかもしれない。
常に加速し続ける資本主義というゲームを一旦やめて、
ベランダから、誰も見る人がいない桜を眺めて、
どうぶつの森でずっと自分の島を作り続けて、
人生を無駄に浪費することを美しいと思う新しい価値観が必要なのかも。

……なんて言ったらいろんな人に怒られそうだな。

夜の街に繰り出す。目の前には1/500のリスキーダイス。
喫煙者の僕は重症化する可能性が高い。
もし重症化したら、自らの喫煙習慣を呪いながら後悔にまみれて死んでいくんだろう。
こんな mixi 日記を書いたことを後悔して死んでいくんだろう。

まばらな人と5m以上の距離を取りながら、
ごく近くの自販機で買ったコーヒーを、誰もいない公園で飲む。

まるで世界の終わりみたいだね、って僕のiPhoneが歌った。
AirPod Proが世界の音を消していく。
これも資本主義の加速が生み出した技術の結晶だったな。

明日には緊急事態宣言が出るらしい。
どうか、本物の平等が全ての人を休ませて欲しい。
世界の時計がもっとゆっくりになりますように。

 


今日の一曲
emergency sign / Salyu
https://open.spotify.com/album/1qm47JkdgLKzfnukKeyVbb?highlight=spotify:track:0c6bqypBYEJfdtzALyle9l

 

(From mixihttps://mixi.jp/home.pl#!/diary/1826460/1975266533

心の中に清少納言を住まわせよう

枕草子 いとめでたし!

とにかく、読んでいると、清少納言可愛すぎる、そういう気持ちが溢れてくる。清少納言FGO ではパリピとして解釈されたが、別の視点では藤原定子の着物から覗く白い指まじきれーとこぼす、藤原定子(アイドル……アイドル?)推しのオタクであり、藤原定子から新品の紙をもらったからテンションテンアゲでマジ卍なテンションで書いた枕草子が、日本文学史に残ってしまうスーパー才女だったりする。

ふと想像してみる、職場に清少納言がいたらどうだろう。やはりテンションはパリピなのかもしれない。僕らが死んだ目で会社に出勤すると、広報部の彼女に

「あっ、おはよー! 今朝早起きしたんだけど、マジで春の朝っていいね! ちょー爽やか! 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる ……って感じ! やば、私、思わず詠んじゃったかも!!

って感じで僕も明日は早起きして満員電車の窓から覗くやうやう白くなりゆくたてものを眺めながらMili の曲でも AirPods pro で聞こうかなって気分になってきて、いとをかしである。

結局は、結局のところ、今いる世界の美しさに気づけるかどうかが、人の幸せを決めるんだと思うけれど、その点で枕草子が教えてくれることは今を持ってなお多すぎる。人間は平安時代から何も変わっていないし、推しは(死産で若くしてこの世をさった藤原定子のように)すぐにいなくなるから今のうちに全力で推すべきだし、ネットに溢れる罵詈雑言は、枕草子のような祝福に満ちていて、少しとぼけていて可愛いエッセイで上書きされるべきで、僕がこうしてブログを書いているのも大きく捉えれば清少納言の二次創作と言えるわけなのである。

もうすぐ春がくる。コロナウイルスで外にはあまり出られないかもしれないけれど、心の中に清少納言が住んでいれば、窓を開くと感じる春一番と、その時に窓から入ってくる桜の花びらが、いとをかしと、そういうことに気付けるかもしれない。それがきっと、平安時代からずっと、大事なことな気がする。

ナンバーガール@Zepp Tokyo の無観客ライブをみてゲラゲラ笑って泣いたよ

 なんかもう良すぎた。何もかも良すぎた。これは時代への答え合わせなのかもしれない。大きな権力の中で他人の顔色を伺って生きるのは、そもそもロックが常に否定してきた価値観だった。僕はそれに心酔していきてきたはずだったのに、その概念を堀江貴文だのなんだのぽっと出のビジネスマンに奪われて、「既得権益に迎合しない生き方」も当たり前になって、ロックの役割も失われたと思っていた。

 でもそんなわけはなかった。向井秀徳は無観客の静寂の中でも、まったくいつものテンションでMCで小芝居を披露し、わけのわからないパフォーマンスで観客を煙に巻いていた。あれを配信でテンションがわからなくなってトチ狂ったミュージシャンの行動かと思った? それは違うね、彼はいつもあんなんだ。去年の、ZAZEN BOYS のライブでジョンコルトレーンの真似をしてラッパの声真似をずっと繰り返していた向井秀徳とだいたい一緒だ。彼はずっと狂っている。

 そう言うことかと思った。これまでずっと、時代が変わる前から、当たり前のように自分自身の価値観のみで生きてきた異端児は、年季が違う。彼らに比べたら、最近阿呆らしくなって会社にスーツを着ずに出社するようになった我々など初心者なのだ。YouTube なんて下北沢の路上と何も変わらないのだ。いつものようにやる、それだけで個性を売りにする YouTuber をゴボウ抜きにしていくのだ。だって「そうやってる」年月が違う。

 異常空間Zとは人のいないZeppのことか。わからない。わからないけれどたまらなく可笑しい。僕は贅沢にも常に酒を片手において、眺めていた。思わずコタツから立ち上がって。彼らはなぜか、インターネットの向こうの人を振り向かせる方法を知っていた。というより、彼らのやっていることは路上を行き交う雑踏を振り向かせられるのだから、インターネットの向こうの人を振り向かせられるなんてのは当たり前のことなのかもしれない。

 静寂の中からなんとも艶っぽいテレキャスターの音が聞こえてくると「鉄風、鋭くなって」のバッキバキのベースの鉄風がインターネットに吹き荒れた。歓声がない曲間の静寂の緊張感は最高だ。一言もツイッターで拡散してとか、トレンドにするための統一タグの説明とか、何も言わないのに、視聴した誰もがツイッターに 「YouTube のスクショ」をあげていて、誰もがそれをリツイートしていた。言葉が統一されていないので、numbergirlナンバガ向井秀徳/透明少女が、それぞれ雑多にトレンドに上がっていた。演奏のキレは全くもって普段通りだった、体に響く爆音で聞けないことだけがインターネットの欠点だ。

 同時視聴者数は2万からどんどん増え最後には4万に達した。まさにこれは電子フェスだ。お、なんかいいのやってるじゃん。そうやって人が増えていくのは、ワンマンではない出来事だ。なんとなく開いてみて頭にでっかいクエスチョンマークを浮かべた人たちを見て笑いが止まらない。「73分けだっさ」「ボーカル歌下手」……最高である、もっと欲しい、リツイートしたい。100人のうち99人に笑われても1人に刺さればロックだというのに、100人が褒めていては味気ない。最近勢いが止まらない江頭2:50もそんなこと言ってたな。

 今の時代を予言していたかのような歌詞のタッチ、走りまくって研ぎ研ぎ澄まされた NUM-AMI-DABUTZ はベストテイク( CDJ で聞けなかったし)、U-REI の後でアメスピを4本吸っておもちゃの拳銃をぶっぱなす向井は最高にキャッチーで、OMOIDE IN MY HEAD の中で、無観客の客席にコロナウイルス対策万全の格好で現れて、僕らの気持ちそのもののように踊ると言うより暴れ、そしてステージに座り、最後は向井のタバコを勝手にふかして帰っていく森山未來おいおい森山君、尖りすぎだろ。

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 最高の音楽であり、同時に最高のショウであり、YouTube急上昇とツイッタートレンド不可避の異常事態だった。これが見れた上で、現場でもう一度観れる(かもしれない)なんて僕は何か? いつの間にか徳を積んでいたのか?

 ここにはインターネット時代の今を生きるための答えがある、そんな風に思った。僕らは不確かなデマに踊らされ、狂った140字の論理で殴り合う面白人間地獄絵図を見たくてここにいるわけじゃなかった。そうだった、ツイッター向井秀徳が4本タバコをくわえる絵面をリツイートするためにあったんだった。

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 ナンバーガールを見終わって、仕込んでおいたインターネットでバズる料理研究家のレシピで作ったおでんを食べて、そのまま VTuber のライブに流れ込んだ。今日の僕はGoogle が作った電子のフェスに参戦していた。なんと、電子のフェスでは口に出さなくとも、今、心に思った感想をシェアできるのだ。いとをかし。

 正しいことなどわからない。権力に擦り寄って平和に生きようと思ったら目の前にその権力者の生首が晒されている、そんな世界で、やらなければいけないことなんてない。楽しいことを気まぐれにやろう。前だけを見なくていい、徳を積まなくてもいい、特には青春を思い出したっていい。17歳の頃に出会ったTATTOのある透明少女を思い出して、酒を飲みながら泣いたっていい。ああ、本当に、最高。


【3/2(月)23:59までアーカイブ公開中】NUMBER GIRL TOUR 2019-2020 『逆噴射バンド』@Zepp Tokyo

↑早く見て。あとセトリはその動画のコメントにあるよ。

僕らは電子の野原を駆け回って育った

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僕は小学校四年生まで人間強度を高めるために友達を作らなかった。というのはもちろん嘘で、幼い頃から物事を斜めから見るのが好きで、そうすることが自分の価値を高めることだと思っていた。昼放課に毎日行われる男女混合鬼ごっことドッチボール、足が遅く痛いのが嫌いな僕はどちらも嫌いで、図書館でずっと漫画ことわざ辞典を読んでいた。


もちろん、本当は少し寂しかったけれど、その頃の自分はそんなことはわからなかったし、自覚もなかった。


変化したのはその夏だった。近所のツテで友達の家に行くとそこには伝説のアクションゲーム、ヨッシーアイランドが置いてあった。それをプレイさせてもらって、僕はこれまでにないぐらいの興奮を覚えた。ヨッシーの生き生きとした動作、絵本テイストの美麗な世界。


しかし、友達がいなかった僕は、その会である男女の仲を茶化す発言をするという失態を演じ、それ以降は呼ばれなくなった。


困った。ヨッシーアイランドが遊べない。


お母さんに交渉した。どうしたら、僕にヨッシーアイランドを買ってくれる? ずっと運動をしないでいる僕を心配に思っていたのか、お母さんはこう言った。


「逆上がりができるようになったら、特別にヨッシーアイランドを買ってあげる」


僕はその日から、昼休みに図書館に行く代わりに逆上がりの練習をするようになった。インターネットで「逆上がり コツ」と検索しても出てこない時代、僕はひたすら地面を蹴って、回転し切れずにその場に戻ることを繰り返していた。


すると不思議なことが起こった。一人でずっと逆上がりの練習をしてる絵面の面白さで、クラスの女子が面白がって話しかけてくるようになった。噂を聞きつけて、逆上がりができる男子が聞いてもいないアドバイスをしてくれるようになった。


僕の昼休みは、少しだけ華やかになった。


そこから一週間もしないうちに、僕は逆上がりをクリアした。地面を蹴ると世界が一回転して、そして、戻ってきた。周りの友達は、あれ、できたじゃんと、驚くような喜ぶような馬鹿にできず悲しむような不思議な顔をしていた。


その週の土日、父親がヨッシーアイランドを買ってくれた。僕は夢中になってプレイした。一日一時間の制限の中で、どれだけ効率的にヨッシーアイランドをできるか考え抜いた。いつの間にか参加するようになったドッチボールの間も、今日のヨッシーアイランドのことを考えていた。


僕は決して引きこもってはいなかったが、僕のこころの中心には学校の広い校庭ではなく、絵本のタッチで描かれた電子の野原が広がっていた。


小学六年生の頃、モンスターファームという新たな伝説のゲームが生まれたときも、毎日自転車で片道二十分かけて、遠い遠い友達の家に行って、モンスターファームをやることが生きがいになった。友達はすぐに飽きて外で鬼ごっこをしようぜと言ったが、僕は電子の世界で生きるディノ×モノリスの黒い恐竜が寿命までに強くなれるかばかり気になっていて、鬼になった時に友達が見つからないフリをしてゲームの続きをやった。もちろん、怒られた。


中学の時にはスマブラでクラスのモテる男子に負けて絶望した。大学で所属サークルから排斥されたときに心の隙間はテトリスで埋めていた。iPod mini からは初音ミクの電子の歌声がずっとずっと響いていた。


ドッヂボールをする広い校庭の向こうに、絵本調の電子の野原が広がっている。友達の家の近くの河川敷の向こうに、電子の飼育小屋があって、綺麗な助手とモンスターを育てている。心の隙間にはテトリミノがある。初音ミクの歌声が聞こえてくる。


僕の世界は常に、電子の世界とともにあった。それをニセモノと呼ぶのだけは、やめてくれないか。

2019年は狂気の年だった

なんだか最近本当によくわからなくなるんですよね。

ほんとそれだなと(たなかさん=旧・ぼくのりりっくぼうよみ)。

 

僕は僕として僕なりに人生をよくしようと色々頑張っているような気もしなくもないのですけれど、別に人生を「よくする」必要ってなんだろう、そもそも「よくする」ってなんだろうとかよく思うのですよね。

去年はわりかし仕事がうまく行って、自分が過去関わった機能を完膚なきまでに無くすことに成功したり、頼まれてもいないことをせっせとやり続けていたら社内個人事業主みたくなったりいろいろ報われましたし多分そこそこ頑張ったのですけれど、この記事に書いた通り、最終的には運が良かっただけと思うのです。

僕は今この「資本主義ゲーム」にてダーマ神殿で「企業人」という役割を選びました。そこで僕より下手な人には、僕なりの攻略法を教えるし、不真面目なプレイヤーはゲームから抜けて欲しいと思っています(マナーですね)。しかし、最終的にはたなかさんのいうように、他人は他人で好きに生きればいいし「昭和の価値観のままアップデートをせずに生きる」も心から別にいいと思うので、好きに生きればいいという発信をする必要もないのです。

極論、みんな既に「好きに生きている」わけなのですから。

僕の好きな人には僕の見えるところで、僕の嫌いな人には僕の見えないところで適当に幸せに生きていって欲しいなと少し手を打つことはありますけれどね。

 

まあしかしそういう考えに至るともはや何をすればいいかわからなくなるので、わからなくなった僕はとりあえず、

・冬には自己啓発書を読みふけり
・春には結婚し
・夏にはテトリスに熱中したり
・秋には VTuber をやってみたり

(我ながらだいたいこの4行でまとまったな2019年)

ありおりはべりいまそかりしたわけなのですが、停滞の年2018年よりは動いてはみたものの何かが劇的に成功したかというとそうでもなく、むしろ2018年の「Nier:Automata」が2019年には「VTuberテトリス」に変わっただけではないかという思いに囚われもして。

Google に転職活動しようかなと半分冗談で言ってみたら「周りの人が転職した経験が人生においてないから不安すぎる」と母親にガチで心配されたり「テトリスに集中したいから転職は今はいいや」と半分本気で言ったら母親にテトリスが再評価されたりして、私もまたなんというか、適当を絵に描いたように生きているなあと思うのです。

後結婚もね、個人的にはそんなに違和感のない自然な選択だったんですけれど、周りの人にそれはもう「お前はロックと言いつつJ-POPな人間だと思っていたのだけれど、それはマジでロック」とか言われまして。

なんというか僕は常に「自分は天才だ」という気持ちと「自分マジでゴミ」って気持ちを両方持っているのですけれど、それはインターネットに住んでいるからだと本気で思います。結婚を決めたLINEもそれはもうリアル友人会社の同僚からは「すごい」と褒められまくり挙句「心があったかくなった、泣ける」とまで言われたのに、いざ満を辞してツイートしてみたら、60万フォロワーの美人婚活女子、しぬこさんいいねブーストをつかっても「20いいね」でした。今の時代、結構普通、なのかな。

友達とタイ旅行にいって、みんなスマホをいじりながら電車に乗っている光景を見て思いましたけれど、インターネットとGAFAは世界を本当につなげていて、その広い世界に至れば私など超!超!超!普通のプレイヤーであることを実感せざるおえないのです。ちなみに私が今年ハマったテトリスにかけた時間は

テトリス99     80:31:32
ぷよぷよテトリス 60:00:00 以上
Tetris Effect    55:23:09

驚愕の 195:54:41 なのですが、これで Youtube みたらいまだに40LINE 1分切れない自分なんてもう恥ずかしいぐらい初心者のレベルですからね。自分マジでゴミ。というか、周りが狂人(天才)すぎる。まああめみやさんとかテトリス毎日3時間配信してますからね。2ヶ月で配信中のプレイ時間すら負ける(配信外までカウントしたら……)。これが世界と繋がるってことですよ、本当に Google 余計なことをしてくれたな、と思った結果書いた小説がこれです。

 

話を戻すと、つまり自分が調子に乗ってると思ったら YouTuber をしてみれば冷静になれるよということを言っていきたいのです。しかしこれにはデメリットもあって、この「周りの狂気」と対比して「自分の普通さ」を自覚することで歯止めが効かなくなって、今年はちょっと狂気に触れすぎたように思います。

VTuber 活動も完全にインターネットでオンリーワンの領域を目指してよくわからない方向に進み自分で自分のやりたいことを見失いました。まさに「好きなことで生きていくつもりが周りの目を伺いまくってしまう」という状態ですね。周りって三人ぐらいしかいないのだけれど、インターネットで友人でなく自分を見てくれる三人ってマジで貴重なので大事にしすぎるのですよ、つい。

結果やはり2019年は「いろいろやってみたけれど特に成果がなく、そこそこいろいろ失った」年であったなあと思います。でもなんとなく2020年は地面を踏みしめていこうかと思うと別にそうでもなく、このまま流れに身をまかせるようにいろいろなことをしていくのだろうなと思うので失敗したわけでもないのだろうなとも。

相対的に「地元」で「ローカル」な「狭い世界」の意義や意味を見出す一年でもありました。インターネットに触れていると、キズナアイさんやあめみやたいようさんなど世界一ばかりが目についてしまいますが、やはり「株式会社●●品川オフィスではテトリス一位」みたいな称号や、僕の結婚を喜んでくれる友人を大事にした方が絶対に幸せだと思うし、今後はそういう「ローカルコミュニティ」への揺り戻しが起きていくような気がしています。それはわかったのです。だから世界一の技術者にはなれないけれど仕事も大事にします。

 

でもインターネットが好きなんです。幸せになれないとしても。

それがぼくのささやかなきょうき。

2019年は狂気の年だった。

2019年ベストソング10選

VTuber のお陰で2015年あたりからアンテナが下がっていたインターネット投稿の音楽への感度がまた上がり今年は音楽をたくさん聞きました。離れていた頃に流行ったボカロ曲も大方把握できた気がします。

以下のルールでランキングしています。ではどうぞ。 

・アーティスト毎に一曲のみ
・アルバムとシングルは別カウント
・私情は挟まず iTunes の再生数カウントに準ずる

(なお、好きな曲だけ読みたい場合は、記事の最後に目次があるので思いっきりスクロールして逆に辿ってくださいな。)

10. 海の幽霊 / 米津玄師 (20) 


米津玄師 MV「海の幽霊」Spirits of the Sea

2019年も彼の年でした。ついに全面降伏宣言し、真面目に選考すると決めたレコード大賞がパプリカを大賞に選出(今更遅い)。菅田将暉は彼の提供曲「まちがいさがし」で紅白出場。NHKオリンピックテーマ曲「カイト」では嵐とコラボ。Lemonは前人未到のカラオケ85週連続一位(52週で既に新記録)、ちなみに5億再生。

本作も「馬と鹿」も YouTube では6000万再生。

彼の曲はタイトルがいいですよね。「まちがいさがし」も「カイト」も、タイトルというかテーマが既に素晴らしい。タイトルが決まると書けると川谷絵音西尾維新も言っていましたが、米津玄師もその類いの人かもしれません。

海の幽霊はそのサウンドプロダクションが素晴らしかったです。多重録音されたボーカルの浮遊感とサビで一気に目の前が開くようなミックスが素晴らしい。彼の曲って11とか13とかの普通簡単に使えないテンションコード多用したり(灰色と青)、サビのリズムがつんのめったり(カイト)するんですが、この曲はわりとシンプルなコード進行とメロディで、凝った編曲で攻めてきている気がします。本当にになんでもできるな。

9. R U GAME? / KMNZ (20)

open.spotify.com

もう VTuber が出てきてしまいましたが、ケモ耳ボーカルユニット KMNZ です。Twitter でやたら根暗な発言を繰り返す、が、声が完全に萌え声の LIZ と、ちょっとボーイッシュで真面目な感じの LITA のユニット。クラウドファウンディングの力でアルバムが出たのですが、それがまた素晴らしくて12月のヘビロテでした。

わかりやすくいうと HALCALI の2019年解釈版ってところでしょうか。非常にゆるい空気で、ラップの歌詞もフロウもゆるくて、でもトラックはガチ。

この曲はその中でもキラキラしたギターと電子音が絡む王道チューンなのですが(キラキラしたギター大好きなんです……)衝撃を受けたのはむしろ「Opening」の全くやる気がないボイパと「melty girl」の歌詞ですね。

ぶっちゃけライブの前日は、ちょーだるいよ

君にとっちゃ休日の楽しみでも あたしにはただのお仕事

melty girl / KMNZ

ここまで言い切る曲はじめて聞いた。笑っちゃいました(この後フォローが入りますので安心してください)。

ちょっと LIZ の萌え声が好み別れるかもしれませんが、それがイケるならとてもいいです。まあ、一度聞いてみてくださいな。

8. Dance With Cinderella ! / 輝夜月 (31)


輝夜 月『Dance With Cinderella !』-LIVE CLIP

輝夜月も VTuber なのですが、彼女はその「首絞めハム太郎」と呼ばれる声が唯一無二なんですよね。勢いだけの動画で2年押し切るのは難しいとおそらく考えた彼女の運営が、2019年に音楽活動側にシフトさせたこともうなづけます。VTuber というのはある意味では「声」の職業なので、音楽との親和性が高いのです。

彼女の曲はミクスチャーというか、ロック・パンク・ラップ(台詞?)のごった煮系で勢いで攻めてくる感じなんですが、この曲のガーリィな感じが彼女の声に一番あっていて気持ちいいです。何度でも言いますが、ロックが似合う女性ボーカルって言うのは貴重なのです。彼女はデザインもロックそのものですし。

歌詞は真面目に読むとちょっと恥ずかしいです。若い。

彼女のアルバムが 1月15日 にでます。今はまだイマイチな VR Live の進化にも期待したい。Zepp VR と名乗るぐらいなのですから会場と同じ熱量を再現して!

NEW ERA / 輝夜月 (23)

これクイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」ですよね?笑

7. ユリイカ / サカナクション (31)


サカナクション - ユリイカ (MUSIC VIDEO)

サカナクションがやっと出してくれたアルバムより。2019年ではないが、アルバムの中にあるので、ルール通り2019年の曲としてカウントです。

今年も彼らのライブを見ましたが、本当にこんなに売れているのが信じられないぐらいに変なバンドですよね。アルバムの冒頭「忘れられないの」とか謎の 80 年代風味出してきたし。なぜ今? 山口一郎の考えることはわかりません。

この曲は柔らかくエコーの効いたエレピのループが気持ちよく僕の好みど真ん中の曲なのですが、着目すべきは歌詞ですね。

いつえーいえーん(永遠?)おわかなー(わからない?)

かぜがふくたびいそーぐーいそーぐ(it's so good?)

と聞こえる英語なのか日本語なのかわからない感じのBメロ、実はこうです。

いつ終わるかな 風が吹くたび 生き急ぐ 生き急ぐ

「いつ」と「終わるかな」の間に「yeah yeah」って入れる? 普通? やはり山口一郎の考えることは本当にわかりません。でも、サビの「時が 時が 時が 時が震える」のリフレイン本当に気持ちいいんです。悔しい。アルバムは本当に良かったです。

6. ヒトガタ / HIMEHINA (33)


HIMEHINA『 ヒトガタ 』MV

この曲そんなに好きじゃないです。笑 いえいえ違うんです、VTuber アーティスト系最高峰の HIMEHINA は VTuber 唯一の1000万再生の曲を持っておりそれがボーカロイドの「劣等上等」のカバー。この曲はアレンジがその流れを汲み過ぎていて少々意外性に欠ける部分がありました。なのでここからは「劣等上等」について語ります。


HIMEHINA『劣等上等(Cover)』MV

「劣等上等」はキレッキレのラップがまず耳に残ります。特に田中ヒメのリズム感がすばらしく、少々しゃがれた声もラップ向き。さらに、鈴木ヒナとのハモリは声質も合っていてなんとも美しい。Perfume のあーちゃんが「Perfume みんなの声を合わせた瞬間がすごく好き」なんて言っていましたが、その極地という感じです。ペアで活動することの多い VTuber の良さがこんなところに。

加えて、その間奏で披露される田中ヒメの人力シンセサイザーによるドロップ。原曲はEDMライクなワブルベースの音ですがそこを笑い声に置き換えるという発想とその完成度に震えました。ボーカルを加工してエレキギターソロのように使うのは muse などが使う手法ですが、ここでそれが聞けるとは。本当に素晴らしい。最後の「フロアが 湧き上がりました」という自信満々なセリフの締めも完璧で、この格好いい曲を作ったギガさんとそれに魂を吹き込んだヒメヒナに感謝しかありません。

もちろん踊りとPVの素晴らしさは言うまでもなく、ライブの完成度も VTuber では彼女らがぶっちぎりのナンバーワンでした。今年は必ずライブに行きたい。

ヒバリ / HIMEHINA (30)

ボカロの高速歌唱の流れを汲んだ爽やかなロック。オリジナルではこれが一番好き。

琥珀の身体 / HIMEHINA (24)

まさかのしっとりR&Bまで。シリアスな歌詞が映える。

5. Aurora / BUMP OF CHICKEN (38)(+32)


BUMP OF CHICKEN「Aurora」

今年の BUMP OF CHICKEN のアルバム、aurora arc は本当に素晴らしかったです。バンドサウンドに回帰し、しかし電子音を取り込んだ際に培ったキラキラ感はうまく取り込まれており、どの曲もメロディが抜群に良い。歌詞は当たり前のように良い。

中でもとくにサウンドが気に入ったのがこの曲。イントロのギターの音がオーロラのように柔らかくキラキラしています。サビの裏声も祈るような切実さと静謐さを秘めており「もう一度 さあどうぞ 好きな色で 透明に」ってコーラスがまた透明感があって……編曲と歌詞が一番シンクロしていた曲なのかも。

彼らの歌詞がいいのは当たり前なのですが、この曲の最後の言葉はこれです。少し寒さを感じる編曲の最後に「あなた」と優しく暖かく語りかけてくれる藤原さん。この「温度感」アルバムの中でも随一。涙がでる。

あなたの言葉がいつだって あなたを探してきた

アルバムとシングルで再生カウントが分かれてしまったのでこの順位ですが実質年間一位。アルバムごとずっと聴いていたので、以下の4曲も実質10位以内です。

aurora arc / BUMP OF CHICKEN (40) 

アルバム冒頭6拍子インスト。最近のバンプは結構攻めた拍子にすることも多いです。

月虹 / BUMP OF CHICKEN (39)

この曲のCメロへの進行はすごい。宇宙を感じる。疾走感の中に感じる円熟味。

アリア / BUMP OF CHICKEN (28)

たった一瞬をここまでドラマチックな曲することができるのですね。シングルよりもストリングスが効いていて壮大になっており、間違いなくレベルアップしてます。

記念撮影 / BUMP OF CHICKEN (27)

タイトル百点。このテーマで藤原くんが曲を書いて悪いわけがないです。この曲のワンピースのコラボCMを見るたびに涙が出てしまうのでやめてほしい。

4. RENDERING THE SOUL / world's end girlfriend (41)


world's end girlfriend / RENDERING THE SOUL / MUSIC VIDEO / feat. HATSUNE MIKU 初音ミク

まさかこのタイミングで WEG が初音ミクを使うと思いませんでした。

『AIが人間の不完全さや非合理性を面白がり、人間が持つ孤独や苦悩や悲哀などを「感情のコスプレ」として真似して遊んでる音楽』

(動画の概要欄より)

……という特殊なコンセプトで製作された本作を聴いていると、自分も AI のように曲の要素の断片のもつ「仕掛け」に感動しているだけではないか、という気分になってくるのですが、それはそれとしてドラマチック極まりないぶっ飛んだ展開と美しいシンセサイザーの音が爽快でもあり、これぞ WEG といった曲に仕上がっています。

初音ミクの声を生かした曲、というのは久しく聴いていませんでしたが、まさかこのビッグネームから出てくると思いませんでした(twitterの告知を見てガッツポーズしました)。そしてここまでぶっ飛んだものは今までなかったです。

4. 魔女 / 花譜 (41)


花譜 #11 「魔女」 【オリジナルMV】

さて。2019年の VTuber の音楽を語るときに「花譜」を避けて通ることはできないでしょう。しかし本当はあまり彼女を VTuber の文脈で語りたくはないのです。彼女はあくまで、ご両親の心配を考慮し顔を出して芸能活動をしないで済むように VTuber という手段を取っているだけ。もちろん、何かあったときにアバターごと忘れられる権利を行使できることも VTuber の利点なのですが、そんなことより彼女の声を聞いてほしい。

最初に「魔女」の「これは魔法だ」という歌詞を聞いた瞬間にすぐにわかりました。彼女の掠れた、絞り出すような、少女性の強い唯一無二の声。僕は確信しました。これは、絶対に、注目される、と。

この声を生かす曲を書くのは「命に嫌われている」という、命を絞り出して書いたとしか思えない切実なボカロ曲で有名になったカンザキイオリさん。この二人がタッグを組んだことは2019年の奇跡と言っても過言ではないです。椎名林檎亀田誠治と会った時のように。運命を感じてしまう。

普通の人の10倍ぐらい儚くて100倍ぐらい感情が乗っているかのような彼女の歌は、まるで青春そのものが鳴っているようで聞いていると胸が苦しくなります。VTuber に興味が湧かなくてもいい、ただ、彼女の歌を聞いて魔法にかかってほしい。それだけです。

quiz / 花譜 (24)


花譜 #29 「quiz」 【オリジナルMV】

ボーイミーツガール。僕は強がりで「大丈夫だよ」と歌う曲が大好きですが、この曲は僕の人生で聞いた中で一番切実で大丈夫じゃない「大丈夫だよ」だと思います。

3. STAND-ALONE / Aimer (42)


Aimer 『STAND-ALONE』MUSIC VIDEO(日本テレビ系日曜ドラマ『あなたの番です』主題歌)

図らずもハスキーな女性ボーカリストが2組み並んでしまって僕の趣味が完全にバレるのですが今年も Aimer は素晴らしかったです。

この曲のように「一見、ボーカルが埋もれてしまいそうなテンポの速い」曲と彼女の相性、実は良いと思います。おそらく、バラードでなくても、彼女は「歌い上げる」ことができるのではないかと。一番のサビの最後のフレーズの「そうでしょう」の音の伸ばし方を聴いてみてください。ものすごい息の抜き方で、表現力の凄まじさを感じます。

Aimer のライブに行ったときに彼女は歌声だけでなく、歌い方も含めて素晴らしいんだなと改めて実感したのですが、まさに技術と天性の声を併せ持った類まれなシンガーだと思います。

I beg you / Aimer (33)


Aimer 『I beg you』(主演:浜辺美波 / 劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅱ.lost butterfly主題歌)

呪術的でまさに梶浦さんといった作曲ですが、こんな曲も歌いこなせる Aimer はさすがだと思います。Aメロの後ろで聞こえている「あっあー」という怪しいコーラスは正しい Aimer の声の使い方だと思います(雰囲気が出すぎていて最初楽器かと思った)。浜辺美波の MV も本当に素晴らしいです。

2. Got to Keep On / The Chemical Brothers (50)


The Chemical Brothers - Got To Keep On (Official Video)

配信日に速攻でDLして、冒頭のシンセリフが聞こえてきた瞬間にあまりの「音の良さ」に小躍りしましたがこのレベルでの音の作り込みは邦楽ではなかなか聴けず、洋楽ならではかなあと思います。そして名曲「Swoon」流れを汲む美しい女性コーラス、直接脳に作用して踊らせてくるようなベース。そしてあからさまなブレークと圧巻のドラムロール。これまでの彼らの総まとめのような楽曲。観客の歓声をサンプリングするのはなかなか勇気がいると思いますが、よほど曲に自信があったのでしょう。

しかしまあ、一つのジャンルを作り上げ引っ張ってきて、音楽の歴史に残ること確定の伝説のテクノチームでありながら、一体何度良作アルバムを作れば気が済むのでしょうか。今年は Underworld も去年に引き続き精力的にリリースし、内容も素晴らしく、EDMがすでに少しの陰りを見せる流行り廃りの激しい世界で、テクノレジェンドたちの存在感はむしろ強化されているように思います。

加えてアルバム一曲目「Eve Of Destruction」では、ゆるふわギャングをフューチャーして「ぶっ壊したい何もかも」なんてサンプリングを入れてきてびっくりしました。彼らにとっては日本語も英語もみんなフロアを揺さぶるための素材でしかないのですね。


The Chemical Brothers - Eve Of Destruction

1. shadowgraph / MYTH & ROID (56)


MYTH & ROID「shadowgraph」 (TVアニメ「ブギーポップは笑わない」OPテーマ) MV full

けいおんの「GO! GO! MANIAC」は僕のアニソンへの偏見をぶち壊した曲ですが、やはりその仕掛け人である作編曲の Tom-H@ck 氏は素晴らしいです。この MYTH & ROID も彼のプロジェクトの一つですが、それを知ったときにあまりに雰囲気が違う作風に同じ作者だと信じられない気持ちと、やっぱり彼かという「してやられた」気持ちが一緒に襲ってきたことを覚えています。

大好きな硬いシンセの音と、ストリングスの厳かな音の組み合わせ。曲の最後にいちいち挟む「ダダダダ」というスネアとストリングスとシンセのユニゾンがいちいち気持ちよく、アニメの世界観に寄り添う無機質なボーカルが非常に格好良い一曲になっています。僕の好みど真ん中、ですね。

 

というわけで目次です。今年はちょっと VTuber にうつつを抜かしすぎて洋楽が足りなかったので来年は洋楽も聴いていきたいと思います。

 

 

白日 / King Gnu (12)


King Gnu - 白日

ちなみにこの中に確実に入るべきだったのに、紅白まで聞くのをサボっていて(いい曲な気はしていたので、本当に「サボっていた」という表現が正しい)漏れた曲がこちら。いやあ、もう人気すぎて語るのも恥ずかしいですが「白日」好きですねえ。

こんなに流行っているのが信じられないぐらい「凝った」曲だと思いますが、なんだかんだピアノソロと一緒に始まったり、コードがしっかり邦楽っぽくあったりと、実はすっごく分かりやすくもあるのが実に絶妙なバランス感覚だと思います。

Official髭男dism といい King Gnu といいお洒落で凝った2つのバンドが一気に紅白までジャンプアップした 2019年ですが、この流行りが「ボカロで育った年代が大人になったから」という仮説は本当なのでしょうかね。そもそも、米津玄師がシーンを席巻している今それらを切り離して語ることは難しいと思いますが、面白い仮説だと思います。