シッソウ(後編)

どのくらい経っただろう
ただの線だった世界は
いつのまにか輪郭を取り戻して
僕は足に限界を感じる


もうそろそろ辿り着けた
知らない何処かに辿り着けた
漠然としたそんな期待を抱えて
足を止めようとした


つまづいた


もつれて転んで飛んで落ちて倒れてずって痛くて血が出て真っ赤で


それでも笑って顔をあげると




そこには見慣れた我が家があった


酷い息遣いの中で
痛みの感覚の中で
思考が戻ってきて


手にはぐちゃぐちゃに握り締められた心が
紫色の液体を出しながら悲鳴をあげていて
朝焼けの空にはもう雲はなく
薄暗い希望のような色の光が
嘘臭く僕を照らしていて


タダイマ。
オカエリ。アレケガシテルジャナイソンナニ
アセダクダシヨゴレテルシナニシテタノショ
ウドクシテトリアエズオフロニデモハイッテ・・・


ああそういうことか
僕はこうして
何の変哲もない日常に
フェイドアウトしていくんだ


分かったよそうせかすなよ
今呼吸を整えてるから
いつもの日常にまた
肩までつかるさ


もうすぐ追いつくだろうから
彼女の幻影や夢や希望や
ぼろぼろになった正義や道徳
そしたら僕は完全に
見違えるくらい元に戻る


なんだか笑いが止まらないよ
アハハ
アハハハ
アハハハハ・・・