号泣する準備はできていた/江國香織

号泣する準備はできていた
恋愛とか・・・まあ、なんというか・・・得意分野ではないので、あんまり生意気なことは言えませんが、女の人独特(と僕が勝手に思っている)な、何処か冷めた現実主義的な視点が感じられて、その冷たさにちょっとどきっとする瞬間が、何度もある・・・そんな短編集だと思いました。


ただ、男の僕でも共感できる要素は多く、特に以下の記述が出てきた「どこでもない場所」にはうんうんと頷いてしまいました。

私はときどき不思議に思うのだが、私たちがいまここでお酒をのんでいるこの瞬間、例えば光司が眠っているマンションや、例えば下着屋のあるあの町や、たとえばシリアという国が、本当にこの世のどこかに存在しているのだろうか。

こういう感覚を感じたこと、あります。なんというか、実はこの世界は、僕の見えている部分しか存在しなくて、僕が話しかけていたと思っていた相手は、僕が目をそらしたら、人形みたいにバラバラになって崩れ落ちていってるんじゃないか、とか。あの子はもう、僕の中にしかいなくて、客観的世界には存在してないんじゃないか、とか。


ある意味、自己中心的で、孤独な考え方・・・分かってはいるけどたまにふと訪れるこの感覚。なんだろう・・・でも、よく考えてみたら、かのデカルトが「主観と客観が一致するのかどうか」を問題にしてから誰も答えなんか見つけてませんよね。もしかしたら・・・


なんてことも考えました。しかし、江國香織は文章が鋭すぎて、たまに怖いなあ。村上春樹さんの文章のが、もうすこし優しくて、僕の性に合っているかも。これから、もう少し江國さんの本に、触れていく予定ですが・・・読後、僕がどうなっているか少し心配になってきました・・・