電車

彼女の面影を追って
僕はその電車に乗った


それはひどくゆっくりと
確かめるように進んでいく


止まる駅はない
変わる線路もない
やわらかい悲しみをのせて
馬鹿みたいに一本道を
走っていく


彼女の幻想を追って
僕はその電車にのった


どの車両をまわってみても
匂いだけで彼女はいない


止まる駅はない
変わる線路もない
その揺れがひどく心地いいまま
馬鹿みたいに一本道を
走っていく



ふと、小さな駅



とってものどかな風景に
小さな駅がぽつんとあった


思い出したように止まる電車
僕はその駅に降りてみる


電車は去らずに僕を待ってる
目の片隅にはまだ彼女がいる


でも


風景の中のかかしが
ふと、彼女みたいに揺れた時


その横を口笛とともに
女の子が通りすぎるのを見た時


僕はそこに向かって
走り出した