魔法の言葉を覚えた。
淡い白色で、透き通ってて、歪んでいて。
切なくて、哀しくて、愛しくて。
そんな、僕にとって「一番現実から遠い場所」に繋がる、鍵みたいなモノ。
でももう、当分口に出すことはない。
僕がここに、帰れなくなるから。
歪みに寄り添う汚れたモノ。
もっと透き通った筈だったモノ。
スピッツの「三日月ロック」が耳元をくすぐる。
少しだけ、でも確実にずれてしまった僕が、正しい場所に帰る道しるべ。
でも、その決定的な「ずれ」は、僕を確実に遮断していく。
地下鉄に揺られながら、誰にも気付かれないように、そっとつぶやく。
「ねえ、魔法が解けないよ。」