Sound by iLL/iLL

Sound by iLL(初回生産限定盤)(DVD付)
SUPERCARの中村君による、音楽に限らず広い視野で活動をしていくという「iLL」名義の、歌なしエレクトロニカ12曲。


とりあえず、初聴きの感想は・・・「聞きにくい」です。nyantoraによる「夜を忘れなさい」路線の延長といった感じで、メロディでもリズムでもない部分に焦点を置いている。


あるインタビューで「この曲はこのイメージ」と、中村君自身が説明していたんですが、まさにその「表現したいイメージ」をそのまま忠実に電子音とリズムに置き換えた感じ(そういう意味では最近のコーネリアスに通じるものがあるかも)。例えば、2曲目の「I LOVE YOU」なんかは、「街を歩いているときに、トランスもダンスもヒップポップもJポップもごちゃ混ぜに聞こえる中、最終的に雨の音にみんなが耳を澄ます」っていうイメージがあるらしいですが、それがそのまま、ちりばめられたシンセや、ころころ変わっていくリズムや、雨を模した電子音で表現されて、コラージュ的な音となって飛び込んできます。


確かに視点としては、新しい。SUPERCARの時に「誰も作ったことのない『ポップミュージック』」を目指していた中村君の次なる目標は、「誰も作ったことのない『音楽』をつくる」ところにあるんだなあ、って思います。音楽的には新しい手法を使ってるわけではないけど、すごく先を見ているんですよね。


ただこのアルバム、第一印象の「聞きにくい」が今でも変わらずに「聞きにくい」なんです。一つ一つの音が主張しすぎていて、気持ちよくまとめられてない。イメージが明確すぎて、想像する隙間がない。メロディにしろ、リズムにしろ、音自体にしろ、何か一つでもとっつけるきっかけが欲しいなって思ってしまいます。新しい何かができそうな予感はあるんですが・・・。


というわけで、そういった新しい視点に興味がある人じゃない限り、試聴してみて、気に入った人だけ買う・・・ぐらいでいいかな、と思ってしまったアルバム。中村君は好き勝手やるよりも、なにか誰かが制約をつけて、あえて型にはめたほうが凄いものを作る気がするんですけどね。これからが楽しみなようで、理解不能なところへシフトしてしまわないかちょっと不安になってしまう、そんなアルバムでした。