Black Holes and Revelations/muse

ブラック・ホールズ・アンド・レヴァレイションズ(初回限定盤)
デビュー当時はRADIOHEADのフォロワーといわれながらも、作品を重ねるごとに個性を押し出していき、今や追随するバンドが見あたらない孤高の存在となったmuseの最新作。


最新シングル「Supermassive Black Hole」のちょっと笑ってしまうような暑苦しいタイトルと、その「muse風フランツ」*1といった佇まいの曲調に、期待半分、不安半分で聞いた新作は、3rdの路線をさらに推し進めたような、エネルギーに満ちた作品でした。


ヘビメタ、ダンス、ラテン、アメリカロック、果てはオペラやゲーム音楽までも貪欲に吸い込み、かつ電子音にストリングスに一昔前みたいなコーラスと、盛り上がる音はすべて放り込んだようなアレンジに、僕が個人的に好きなUKロックの臭いはほとんど残っていません。というか、「これってもはやロックだろうか?」といった、身も蓋もないことも思ってしまいます。


が、しかし「これがmuseか?」といわれたら間違いなくそうなんですよね。


最初は、UKロック然とした立ち位置でスタートしたmuseですが、作を重ねるごとに、フロントマンマシューの、多種多様な音楽的趣向がどんどん表に出てきますね。みんなの好きそうな音楽を奏でるのではなく、みんなに自分の好きな音楽を聞かせるような、そんな押しつけがましい個性。もちろん、僕はmuseにはもう少しラフなアレンジの曲とか、もっと素直にロックっぽい曲とか、ロマンチックなバラードとかも期待しているんですが。そんなこと知るかといわんばかりの勢いを持つこのアルバムは、否応なしに耳を傾けさせられてしまうのです。


ちなみにおすすめの曲は先行シングル「Supermassive Black Hole」、「Knights Of Cydonia」、「Glorious」あたり。「Supermassive Black Hole」は、メロディがそれほど盛り上がらないので、最初は微妙だなと思ったんですが、今では一番好きな曲です。ダンスビートに、裏声コーラスとバックコーラスがからんで、すさまじいグルーヴを生み出している、くせになる曲。「Knights Of Cydonia」はもう、イントロの馬のひずめの音といい、自由奔放なギターといい、無理矢理な展開といいやりたい放題の曲。が、それゆえにやたら格好いい。「Glorious」は日本版のみのボーナストラックですが、名曲。少しの憂いを帯びたピアノを、ギターが吹っ飛ばしていく、museの王道曲です(日本版を買いましょう)。


最高傑作かといわれたら、どうかなと思うんですけれど、密度とパワーが過去最大なのは確かなこのアルバム。museの一つの到達点のような気がします。オススメです。

*1:これは僕のオリジナルな表現ではなく、ネットでこう表現していた人がいて、あまりにその通りだと思ったので、拝借しました