Sensuous/Cornelius

Sensuous
僕はこのアルバムの前に出された二つのシングルを聞いて、実験性とポップさのバランスが素晴らしい、という旨を書きました。だから、今度のアルバムは、「Point」の路線のまま、よりポップになるのだろうと思っていたんですが、どうやらその予想は外れてしまったようです。


一曲目の「Sensuous」が、非常に象徴的。なんのことはない、ただアコースティックギターの音色が、全方位から聞こえてくるだけ。しかし、その音は一音一音丁寧に処理されており、空間を切り裂いたり、リヴァーブによって空間を埋めたりします。聞いていると、どんどん耳の感覚が研ぎ澄まされていくような、不思議な心地よさがある。


「曲」と「音の集合」の間。シングルの二曲はそれがちょっと「曲」に傾いていましたが、アルバム曲は「音の集合」に傾いています。「Fit Song」なんかもそれが顕著で、気を抜けばすぐバラバラになってしまいそうな、危ういバランスでまとめられている音達。透き通っていて、張り詰めている。音楽と言うよりは、音の鳴る空間を三次元的に製作しているような感じ…なるほど、これが小山田さんのやりたいことなんですね。


正直なところ、シングルの二曲が大好きな僕にとって、ちょっと難しい方向に進みすぎな気もします。「Point」より分かりやすくなったという意見も聞きますが、それは方向性にぶれがなくなったということであって、音自体はポップスからより離れているのは確か。単純に気持ちのいい音として聞き流すには、音の一音一音に存在感がありすぎますし。


多分世界を見渡しても、こんな質感の音楽を鳴らしている人はほとんどいないでしょう。そして、「Point」の路線を引き継ぎながらも「新しさ」はそのままだし、すごいと思うんですが…ちょっと頭でっかちすぎる印象も。この音で、もっと歌モノを聴きたいというのは、いちリスナーのわがまなのかな?そんなことを考えてしまうのでした。