そら

窓から覗く空を、ずっとずっと、眺めている少女がいました。
その少女を、窓の外からちらちらと眺めている少年がいました。


ある日のこと、勇気を出して少年は尋ねました。
「どうして、いつもそんなちっぽけな空を見ているの?」


少女は長いまつげをしぱしぱしたあと、こう答えました。
「だって、私の中の空は広くて広くてとびっきり美しいから。このままでいいの。」


少年は首をかしげて、そのまま何も言わずに走り去っていきました。
いつもの原っぱに寝転んで、ひとりごとを言います。


「変なの。本物の空は、あの子の想像の空なんかより、ずっと広くて美しいはずだよ。」
彼は走り疲れたのか、そのまま眠ってしまいました。


遠く遠く、どこまでも真っ青な空がありました。
その青空の片隅に、きらりと冷たい光を放つ、ミサイルが飛んでいきました。


少年も少女も、それには気付きませんでした。