詩を書く

君の曲を聞いていると、僕は無性に詩が書きたくなるんだ。
内容は後回しさ、とにかく格好いいやつだ。
綺麗すぎて、嘘になってもいいよ。
格好悪いのが一番いけないんだ。


――君はカバンにほんの少しの荷物を詰めて、出て行った。
僕はたくさんたくさん泣いて、
その涙の数よりもたくさんの詩を書いた。





「ただいま。」
その声はか細く、それでいて重かった。
玄関のドアは古びていて、
鳴きつかれた鳥の擦れ声のように、きいきい言った。


――僕はその時にはもう、そこにはいなかった。
君はたくさんたくさん泣いて、
その涙で濡れたギターは、もう鳴らなくなった。





とある都会のとある仕事場。
どんどんと、扉を何度も叩く音が響き渡る。


眩しくて赤い夕焼けを背負い、
僕の目の前に君は真っ黒になって立っていた。





「どうしてお前なんだよ。
お前は俺の曲を聴かなくちゃ、詩を書けなかったじゃないか。」


「だって、君の歌は何処にも行けないことが分かっていた。
その閉じた美しさを、僕は詩にしていたのに。


君が旅立つ時に、僕が泣いた理由、
君はまだ勘違いしたままなの?」





君は声を上げて泣いた。
僕はその姿を見て、また美しい詩を思いついた。