日記19

水曜日は、塾の女の子Kに会って話を聞こうと思っていた。
しかし、塾の終了時間に話しかけても、彼女は言葉を返してはくれなかった。
いつも以上に鋭い嫌悪の目付きで僕の睨み付けると、タイムカードも押さずに帰っていった。


そして、昨日僕はそのことを日記に書こうとしたが、
「ブログを止めろ」というコメントや、夢のことについて何も聞けなかった失望のせいか、
書く気が失せてしまい、そのままベッドに入って眠ってしまった。そうだったはずだ。



ならば、昨日の日記は一体誰が書いたんだ?



ログインのパスワードを知っているのは僕だけで、このブログを書けるのも僕だけだ。
もしかしてパスワードクラックによって、知らない誰かがログインしたのだろうか。
それにしたって、ブログを消したり、パスワードを変えたりせずに、
気持ちの悪い日記だけ残して去っていくなんて理解に苦しむ。


……やはり、昨日の日記を書いたのは僕自身なのだろうか。
なんだか、奇妙に心に引っかかる内容だった。


突拍子の無い内容ではあるけれど、一応の理屈は通っている。
なによりその「人口が1000分の1になった世界」は、
僕が何度も見た夢の中の町と、酷似していることに気がつかないわけにはいかなかった。
そのことが、僕の心の奥底からずるずると生理的な恐怖を引き出している。気持ち悪い。


もしかしたら昨日の内容は真実で、僕等はブログを書かされている?


……そんな馬鹿げた疑問を追い払うために、僕はキーボードを強い力で打つ。
乾いた音がすると同時に、一文字一文字が目の前のディスプレイに確かに表示されていく。
表示されている。確かに「こうやって」表示されている。
僕は書いている。僕は確かに書いている。日記を「自分の手で」書いているんだ!



なんだか頭痛がする。今日はもう寝よう。


「誰かが残していった奇妙な日記」2007.07.06.1:16am