アーデルハイド、アーデルハイド。

僕はジェットコースターに乗って友達とすべり落ちていた。
すると足にちょっとした異物感があった。友達が僕のほうを向いて笑った。


「僕の足が取れてしまったよ」


僕はその足をクリックして、ドラッグして保存箱に入れた。
僕が足をぶらぶらさせていたから、友達の足が取れてしまったんだ。
早く医者に連れて行かなくちゃ。


でもこれは夢だからね。そうやって、僕は安心した。
突然見えている景色が消えて、真っ暗な世界がやってきて僕は目を閉じた。


何かを忘れている気がした。けれど、それが何かは分からなかった。




目を覚ました時には、時計は正午をいくらか過ぎていた。
僕はそれを見た瞬間に理解し、そして絶望した。


今日は工場見学の日なのに、この時間ではどう頑張っても間に合わない。


チャンスは二度合った。目覚まし時計が鳴った時と、夢の中で夢に気が付いた時。
ただし、前者については僕は二度寝をしたわけではなく、
目覚ましを止めた記憶がないのだから、実質チャンスはあってなかったようなものだ。
僕の頭の中には、こんな映像が浮かび上がる。



「アーデルハイド、アーデルハイド、こんな夜中に何をしているのです?」


「…………もみの木のさえずりが聞こえるの」



可愛そうなハイジは夢遊病。山の空気が忘れられないのだ。



「ソーナ、ソーナ、こんな朝に何をしているのです?」


「…………目覚まし時計のさえずりが聞こえるの」



可愛そうなソーナは夢遊病。夢の世界から戻ってこられないのだ。




どうして人は起きた意識もなく、立ち上がらないと届かない目覚まし時計を消せるのだろう。
僕は昔あった「筋肉番付」という番組の「サスケ」という種目を思い出した。


僕は虚ろな目をしながら、ゴールの目覚まし時計を目指して数々のアトラクションをクリアしていく。
ナレーターがこう言う。おおっと、ソーナさん!眠っていたままのクリアです。


……実際、起きているときよりもいい成績が残せそうな気がした。
なんていったって、僕に工場見学(参加=単位)の授業を取りやめさせるぐらいの力があるのだ。
サスケなんて、朝飯前にクリアだろう。僕が起きたのは昼飯前だけど。


僕が起きたのは昼飯前だけど。


ダメだ、工場見学に遅刻して単位がなくなった事を面白おかしく書こうとしたのに、
描いているうちに虚しさが募ってきて、すごい中途半端な感じになってしまったどうしよう。


仕方ないよ、僕は今寝ながら記事を書いているからね。




「ソーナ、ソーナ、こんな明け方に何をしているのです?」


「…………キーボードのさえずりが聞こえるの」



可愛そうなソーナはブログ病。電脳世界から戻ってこられないのだ。