外れたネジは手の中に

「私はネジが一本外れたロボット。早く見つけて締めなおしてほしいの」
「分かった。でも本当のことを言うと、そのネジを僕は手の中に持っているんだ。
でもね、ねじが外れている君も素敵だから、そのままにしてるんだよ」
「そうなんだ。でもこのままだと私壊れちゃうよ。
歩いていると身体が軋んで、走るとばらばらになっちゃうんだ。ばらばらに」
「大丈夫、僕はそういうときのために、大学の工学部で学んでいるんだから。
ばらばらの君を拾い集めて、元通りに治してあげるよ」
「そうなんだ。それは頼もしいね。でも、治した後の私は私じゃないかもよ」
「だとしたら、直した後の君はなんなの?」
「メアリー」
「そうか、じゃあおやすみ、メアリー」
「私はメアリー。おやすみなさい」