刀語 第十二話 炎刀・銃

刀語 第十二話 炎刀・銃 (エントウ・ジュウ) (講談社BOX)


終わり方は、戯言シリーズより好き、かもしれない。
(以下ネタばれあり・戯言感想)


一巻を読んでみて「西尾維新にしては、文章が軽いな。良くも悪くも漫画みたいだ」と思った刀語


四巻の超反則場外プレーのせいで、「これ以上の衝撃はないだろうな」と思ってしまったりもしましたが、その後の五巻からはむしろ安定して面白くなっていき、いつのまにか毎月の初めが楽しみになっていきました。


そして、金山で三軒本屋を回ってもどこも売り切れで、やっと地元の本屋で入手し、一気に読み終わった感想は――本当に面白かった!最高の最終巻!冒頭のとがめに涙し、退屈モードの七花の格好よさにしびれ、否定姫の可愛さに和んで。このシリーズがもう読めないなんて、本当に悲しいです。


思えば、この「刀語」は、今まで王道を避け、いい意味で僕達を裏切り、翻弄し続けてきた西尾維新が、はじめて王道に向き合った作品のように思います。12ヶ月連続刊行という形式も含め、エンターテイメントに真っ向から向き合った作品だと。もちろん、最初の巻でいきなり最後の伏線を匂わせてしまったり、七花の技名が全部明かされたのに、とうとう最後まで技の詳細が分からなかったり、四巻のフェイントだったりと、ひねくれた展開はふんだんに盛り込まれています。


けれど、今まで積み上げてきたものをこれ以上ないくらいの形で盛り込み、


(「ちぇりお!」や「惚れてもいいか?」や雪山の会話や……あげればキリがありません)


今まで集めた刀すべてともう一度戦い、それを完膚なきまでにぶちこわすという「四章 家鳴将軍家御側人十一人衆」での熱すぎる展開。これは僕が今の少年ジャンプに求めていて、そして今ひとつ見つからない、「熱さ」と重なります。


別にこの小説が漫画みたいだと言いたいわけではなく、王道でありながら、ベタだと冷める事なくいられる、そんな(ジャンプを読んでいる時に求めているような)心が燃え滾るような展開が、小説という形でここにあったのだという、それを言いたいのです。


ストーリーはハッピーエンドとは言えず、「何も変わらなかった」という部分がしっくり来ない人もいるかもしれませんが、僕はこれはバットエンドでなく、グッドエンドだと思います。「これから」がある二人がいる、それだけで十分だと思えます。


また、竹さんのイラストもこの物語の大きな楽しみでした。戯言シリーズの最後あたりでは、自分の方向性が今ひとつ定まらずにいたように思えましたが、血をもみじによって鮮やかに表したこの巻の表紙の素敵さから、完全に持ち味を見つけたんだろうなと思います。「とがめと七花が血まみれで泣きながら見つめ合う場面」、「家鳴将軍家御側人十一人衆」、そして「七花 対 右衛門左衛門」の絵。文章の感動や迫力を何倍にも高めてくれました。


最後に。……西尾維新はやっぱすげえよ。素敵な物語を、ありがとう。