べんきょうはいやだ

最近地味に勉強しなきゃいけないことが多くて大変でストレスがたまったので、
発散するために適当に思わせぶりな小説の冒頭部分でも書いてみようと思います。


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僕がはじめて彼女を見たのは、今日のような強い雨の日だった。
僕はうんざりした気分で、雨の中を歩いていた。すると、そこに彼女はいた。


傘を忘れてしまって動けずに、雨宿りをしていた。その長い髪はしっとりと濡れて、
その目はうんざりしたように空を見つめ、恐怖を感じるぐらいに美しかった。
僕は一瞬にして視線を奪われた。彼女は決して目立ってはいないけれど、
一度見つけてしまうと決して目を話す事ができないような、そういう類の美しさを持っていた。
儚げで、繊細で、けれどそのメロディがコードの手によって、力づよくまとまっている、
そんな理想の音楽だった。
一瞬で世界は背景になり、かすかなホワイトノイズに成り下がった。
すべては伴奏だった。すべては脇役だった。僕は観客にすらなれない曖昧なノイズだった。
彼女は特に誰かに迎えに来てもらうという風ではなく、
そのまま空を見つめて降り続く雨と交渉していた。


「私をここから出して」


思えばそのときから彼女の逃走劇は始まっていたのだ。
しかし、その時にその場から逃げたのは紛れもなく僕だった。
僕は傘が勢いで押されて斜めになって、ずぶ濡れになるのにも構わずに走った。
近くのコンビニでビニール傘を買った。そして、彼女のいる場所へと舞い戻った。


息を切らして前に立つ僕を、彼女は不思議そうな目で見つめた。
吸い込まれそうに深くて、けれどその実近くにすら寄れないような、遠い瞳。
僕はその瞳にくらくらしながら、やっとの思いで言葉を吐き出した。


「間違えて傘を二つ持ってきちゃったから、使って」


彼女はちょっとだけ迷って、その後ちょっとだけ笑って、
僕が震える手で差し出すビニール傘を受け取った。
物語は、あの壮大な逃走劇は、こうして幕を開けたのだった。





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……うん、いいね。しっかり思わせぶりだ。楽しかった。もうしない。