Viva la Viva or Death And All His Friends/coldplay

美しき生命 【初回限定盤】
いつの間にか超ビッグスケールなバンドになっていたcoldplayの4作目。


正直言って、僕はこのアルバムに全く期待していませんでした。新境地だとか、コンセプトアルバムになるとか、そういうことばかり耳につき、さらにタイトルやジャケットもくどさしか感じられず、きっと僕の好きなUK的繊細さは完全に失われてしまうんだと思いました。


しかし、実際に聞いてみると、これが素晴らしかったです。いや、予想通りUKロック的な繊細さや暗さは前作「X&Y」から更に減っていました。さらにリズムもアジアっぽいものが導入され、大胆にストリングスが鳴らされ、スパニッシュなギターまでなっていました。けれど、これが驚くほどなじんでいるんです。


今ひとつ大胆さと繊細さの間でどっちつかずだった前作。それと比べれば今作は気持ちの良いくらいに突き抜けています。それでいてメロディの美しさはしっかりと残っていて、それが切なさや悲しさを喚起させるのではなく、ポジティブな意味で用いられています。iTunesのCMソング「Viva la Viva」の力強さといったら! 


本当に器用なバンドです。大ヒットアルバムの後というのはどのバンドも苦心するものだけど、coldplayは自分達の曲のスケールまで大きくすることでなんなく乗り越えてしまいました。きっと、クリスはちょっと天然なんでしょうね。今作の大仰なタイトルが、アルバムを聞いてみればあまりいやらしく感じないのも、このバンドが、自分自身に冠したタイトルやテーマに縛られてないからだと思います。ちょっと無責任にすら思えるぐらいですが、重々しく重いテーマを鳴らすのでは、説教と一緒。こうして自由奔放に鳴らしてくれたほうが受け取りやすく、結果、伝わりやすいんじゃないでしょうか。


また、もともとこのバンドは壮大なスケールに合う素養を持っていた、とも思います。今回多めに鳴っているギターは、1st収録の「Don't Panic」の頃から素敵な音を鳴らしていたし、2ndの「Politik」、「Clocks」のドラムはダイナミックで所詮UKバンドからは一線を画していました。そう思えば、もともと世界的に売れる器を持ったバンドだったのかもしれません。


オススメの曲は美メロの健在に安心する「Cemeteries Of London」、そして、気持ち良いくらいに突き抜けた「Viva la Viva」です。UKロックの陰鬱さが大好きな僕ですら気に入るのだから、あとこのバンドを聞かない理由があるとすれば、メジャーすぎてなんとなく聞きたくない、ぐらいじゃないでしょうか。でも、それって、もったいないと思いますよ。