「ファイアーエムブレム 暁の女神」総評 人物編

ファイアーエムブレム 暁の女神
総評の前半はコチラ


まったく需要が無いと思って書くのを止めようかと思っていましたが、毎日「暁の女神」で検索してくる方がどうやらいるようなので、その方のため僕は書きます。書ききってやります。前の総評で「まだ続きます」と書いたからには書ききってやります。後半は人物編です。思い入れのあるキャラについて好き勝手語ります。


相変わらずネタバレを含みます。以下の条件にあてはまる人は決して続きを読まないように!


・これから暁の女神をプレイする予定のある人。
・まだ暁の女神をやりかけである人。
・これから暁の女神の二週目をプレイする人で、かつ二周目のネタバレを知らない人。
・ビターでスイートで大人な夜を満喫したい人。
・明日のリア・ディゾンの握手会に供えて早く寝たい人。
Sigur Rosの新作が気に入ったので今日は目を閉じてそれに聞き入りたい人。
Portisheadの新作をようやく買って気に入ったので今日はその暗さに浸りたい人。
・まあ後半三つは僕ですけどね。それでも書くんですけどね。


■ サザ


蒼炎の軌跡」の時点で、クラスチェンジが出来なかったり、やられても死亡ではなくリタイア扱いになることから、次作の主人公になるとまことしやかに噂されていましたが……。そんなことはありませんでしたね(アレ?)。いや、確かに前半は大活躍しますが、攻撃力が低くて最後のほうに存在感がなくなってしまうんですよね。そして、ドラマ的にもミカヤの付き人(実際はもっと深い絆のようなもので繋がってるんですが)という印象が強くて、そこまで目立った活躍は無いような気がしました。まあ、ニコニコでのプレイ動画では、「緑風」なんて呼ばれて、愛すべきヘタレキャラとしての立ち位置を確保していますけどね。


あと、ラストにミカヤと結婚する(支援が関係しますが)のは少し違和感があるかな。この二人は男女の愛情と言うよりも家族愛みたいなもので繋がっていた気がしたので。


ただ、第四章である人との会話を見ると、ああ、サザってある意味プレイヤーの分身としての立場だったのかなあという気がします。化け物というか特別な力を持つ登場人物の多いなか、ある意味では一般人ですからね。


■ ミカヤ


サザがプレイヤーの分身だとしたら、じゃあ「暁の女神」の主人公はミカヤかというと、そういうわけでもない気がします。やっぱり「蒼炎の軌跡」から、主人公はあの方ですよね。ミカヤもどちらかというと、今回の物語では、振り回され踊らされた立場のように思えます。……もちろん、とても重要なキャラなんですけどね。


複雑な立場でも、心に痛みを抱えたまま、必死にそれを隠して気丈に振舞う姿はなかなか見ていて痛々しいものがありました。ちなみに最上級の姿が一番可愛いと思います(蛇足)。


■ イレース


蒼炎の軌跡」ではまったく育ててなかったので、今回リベンジを誓い、かなり意識して育てた結果、たいして重要な立ち場ではないのにもかかわらず出撃できる章が一番多い(!!)のもあって、かなり強くなりました。一時期賢者のくせに前線に出せるようになりました。腹減りパワーか、なぜか力が一番最初に上限に達しました。ネタキャラだよなあ。


いやあでも、最初は魔法使いのくせに魔力も上がらず、サンダー故に命中率も低いわでかなり大変でした。一番手をかけて育てたキャラじゃないかな。なにせ「大器晩成」をつけた上、レベルアップする一歩手前で経験値を止め、次の章の頭で最上の結果が得られるまでリセットしましたからね。好きすぎてというより、普通に育てたら弱いんじゃないかという危機感から頑張りすぎました。


■ ワユ


好きです(笑)。前作で使えなかったのが嘘のように、技と速さの抜群の伸びと、そして必殺率+30%の補正のおかげで暴れまわってくれました。それにしても子供っぽかった前作から比べて、胸が成長して、ほんとうに可愛くなったなあ……。特にあのグレイル傭兵団の格好良すぎるムービーを見たときの、衝撃といったらなかったです。一人斬り倒しただけなのに「絶好調!」とか言って決めポーズしちゃうワユが可愛い。


■ ポーレ


豆腐と名高いポーレですが、僕のプレイでは「蒼炎の軌跡」も含め、大活躍してくれました。やっぱり弓が使えるというのは強いです。良くも悪くもまっすぐで、分かりやすいキャラ。まさかミストと仲が良かったとは……それに気付かない僕は、現実でもゲームでも恋愛に疎いんだなあと思いました。また、ヨファの生みの親が出てくるマップでの、生みの親との長い会話では、親子を越えた愛情と言うものを感じられてよかったです。三兄弟の繋がりはこのゲームの中でもかなり好きです。本当に、人と人の繋がりを感じられるゲームだと思います。


■ シグルーン


おっぱい隊長とみなさんに呼ばれています。そこに対してはノーコメントで。……ノーコメントで! 前作からその柔らかい物腰が好きだったので、今回普通に使えて嬉しかったです。まあ、マーシャを前々から育てていたので、クラスチェンジはさせなかったんですけども。


ファイアーエムブレムの伝統ですが、「国に使えているのではなく、あなたに仕えています」という部下としての親愛の情は本当に美しいですよね。サナキに対するシグルーンの言葉、そこから感じられる部下としての誇りは、とても印象に残っています。おっぱいよりも印象に残っています。ほんとだよ。


■ チャップ


「そうじゃ、わしらは人殺しじゃ」という台詞に、あくまでこれは戦争の物語なんだ、ということを強く感じました。深い悲しみと思いやりの篭もった名台詞だと思います。前作で育ててなかったのもあったのですが、あの台詞でこのおじさんが大好きになり、最後まで気合入れて育てました。かなり硬くて強くなりました。


■ セネリオ


影の主人公といわれているくらいに、隠されたところの多いキャラ。彼のために今一度ファイアーエムブレムを取り出して二週目に挑戦しようか、考え中です。なんだかんで「連続」持ちの魔法使いというのは優秀なので、かなりちゃんと育てたのですが……実はそこまで思い入れはなかったりして。彼を取り巻くエピソードは感動的で好きなんですけれど。


■ スクリミル


最初はただのバカキャラで、死にそうだなあと思っていましたが、非常に良く成長したと思います。なんだかんだでライと良いコンビだったなあ。ライもあの柔らかい物腰が素敵で好きなキャラです。ライとアイクの信頼関係はすごくいいです。


■ ティバーン


ラグズの王族の中でも飛び切り目立っていたし、格好良かったです。今回鷹はある事件で壊滅的なダメージを受けてしまいますが、ティバーンのおかげで物語の中での存在感はバッチリでした。最終メンバーにした、唯一のラグズ王です。リュシオンが彼に憧れるのも分かるなあ。


■ ネサラ


まあいわゆるホストですね(笑)。ギラギラ野望に燃えているようで、その実王として何を自分が守るべきかしっかりと分かっているところはかなりクールです。多分人気の高いキャラなんじゃないでしょうか。ただ、リアーネと結婚したのはコノヤロウと思いましたけどね! 基本的にファイアーエムブレムには、やたらと美形ばかり出てきますが、それでも物語的に考えて一番美しいのはリアーネだと思います(しかし、それがどうしたというのだ)。どうせ「ネサラ、ゴハ、デキタ」とか言われてるんですよ。ホント許せませんよね!(だから、それがどうしたというのだ)


■ オリヴァー


ご存知大人気の、美の守護者。こいつが仲間になると知った時、笑えるような切ないようななんか泣けてくるような複雑な気分になりました。こいつだけBGMが特別に用意されているとか、どれだけスタッフに愛されてるんですか!


■ ネフェニー


彼女も前作でまったくと言って良いほど育てなかったので、今作でリベンジとして育ててみました。そうしたらスキルの「撃破」を連発してくれて、青銅の槍を持たせているのに敵を倒しまくってくれて、気付いたら最後のランキングで一位になっていました。なぜだ! 確かにネフェニーは好きなキャラだけど、イレースとかワユとかそして、これから語る一番好きな彼女とかのが手をかけて育てたのになあ。


■ ルキノ


髪の毛は短いほうが良いと思います。


■ ユリシーズ


前作とは一変して、相当頼もしく、格好良いキャラになりました。正直こんなに頭の切れる格好良い参謀キャラだとは思わなかったです。相変わらず最終局面にしか出てこないのは前作と同じ。


■ エリンシア


前作の最後は何だったんだ、というほどアイクと何もないのにはびっくりしました。彼女はかなりストーリー的に格好良いところを持っていったと思います。無謀かもしれませんが、戦場で理想のために剣を置く姿には、本気で燃えました。鷹王が一緒に飲みたいといった気持ちが分かります。守られるだけだった前作からかなり成長したと思います。服もちょっとふけて見えるオレンジのワンピースから、王族らしくなりましたね。


「ぶっとばして差し上げましょう」は名台詞です。


■ ハール


普通にプレイすると大抵大活躍してしまう(という噂の)ハール隊長。ただ荷物運びの中、通りがかっただけなのに、そのまま大活躍してしまうのが本当に彼らしいですね。ゆるゆるのように見えて、敵将に「手合わせできて感激です」とまで言わせてしまうぐらい有名だったり、もしアニメ化したら美味しいところを持っていきそうなキャラです。そして真面目なジルとのデコボココンビが相変わらず良かったです。この辺りは後ほど詳しく。


■ ゼルギウス


かなり筋の通った、敵ながらあっぱれの敵将でありながら、実はひとくせもふたくせもあり、それでも最後にはやはり主君への筋を通した武将であったという、多分大人気な敵側キャラ。僕はあの二人のたくらみについては、今ひとつ納得できないところもあるんですが(元老院とやっていることは一緒なのに何故最後に民衆をあおって敵対する必要があったのかなど)、それでもあの二人の信頼関係は好きです。


グレイル団長とのエピソードも詳しく知りたかったりします。



□ ここから特に思い入れのあるキャラ


■ アイク


まっすぐで、少し態度が無骨で、しかし筋はしっかり通すという理想の主人公。まっすぐすぎるゆえの弱さやもろさも持っていて、そこがまたこの物語を深くしていると思います。結局「暁の女神」の主人公も、紛れもなく彼でしたね。


こういう主人公らしすぎる主人公は逆に鼻についたりするんですが、まったくそういうこともなく、アイクは大好きなキャラです。成長してゴリラみたいにごつくなってしまっても好きです(笑)。本当に心の奥底からまっすぐで、人格に一本の芯が通っているところが伝わってくるんですよね。人間としてひきつけるところがある、というのが無機質なゲーム画面の、静止画と声のついていない会話だけでも、十分に伝わってきて、今回のファイアーエムブレムを素晴らしくしていると思います。


ただ、そのストイックなまでの行き方は、一度敵と決めたら皆殺しにしてしまうような怖さもはらんでいて、敵方にアイクがきた時にそれを痛いくらい感じて、そこがまた今回のシナリオのなかでも白眉の面白さだったと思います。もしかしたら、アイクは大量虐殺者として処刑されていたかもしれなかったんだよなあ。


しかし、時代の激流に踊らされながらも、信念を持って突き進んで、そして最後には蒼炎の勇者として伝説になった主人公。こんなに気持ちの良い主人公がはたしてどれだけいただろうか。アイクは本当に良いキャラです。


■ ジル


そして最後はジル。前作ではそのエピソードの濃さゆえに、アイクだけでなく、ジルの物語でもあったといえるくらいの重要キャラ。前作では、父親が国になじむために教えた嘘=「半獣は悪」を信じていながらも、アイク達といるうちに徐々に考え方が変わっていき(その時の揺れ動く感じがまた良かった)、最終的には自分の信ずる道を行き、涙ながらに父と敵対することになります(その時支援によっては寝返ってしまうのですが)。ここらのエピソードの秀逸さはすばらしかったです。「蒼炎の軌跡」で一番感動したといっても良かったかもしれない。


そして思い入れに答えてくれたのか成長も素晴らしく、最後のほうでは単体で敵陣に突っ込んで敵を無双するほどに成長しました。そのデータを受け継いでの「暁の女神」。


最初のほうでジルが参戦してくれたのは凄く嬉しかったです。蒼炎ではまだ幼かったジルは、暁では大人っぽく、美人になっていました。そして相変わらず真面目でお人よしで潔癖で……あれだけ寝返る機会の多いキャラは珍しい(笑)。


確かに信念を曲げないアイクと比べれば、まだまだ甘くて、決意も足りないのかもしれません。しかし、彼女の、母国のデインもそして昔共に戦った仲間もどちらも見捨てられない優しさは、プレイヤーとしても理解できるところが多かったです。あのある意味で軍人の欠点といえる、大儀が無いと戦えない潔癖さ、揺れ動く弱さがすごく良かった。ミストやハールとの会話は、ジルにそこまで思い入れがなくても是非見て欲しいです。


そしてやはり思い入れが返ってきたのか、とくにイレースのように手をかけて育てたわけでもなく普通に戦っていただけなのに、レベルアップの成長率がやたらよく、ドーピングなしで殆どが緑色になり、最終戦でも二回攻撃ができる貴重なキャラとして大活躍しました。ランキングもジルが一位だったら良かったのになあ。


とにかく、今回のファイアーエムブレムの面白さの鍵を握った人物だったと思います。間違い、迷い、成長する本当に魅力的なキャラでした。ジルを生み出してくれただけでも、ファイアーエムブレムありがとうといった感じです。




さて、長くなったけどこんな感じで人物評は終わり。言わずもがな僕の一番好きなキャラはジルです。嫁はワユですが。それにしてもここまで読んでくれた人っているのかな。いいや、多分僕は未来の僕がファイアーエムブレムを読み返すために書いたんだ。そう思うことにしよう。


あの暁の女神で検索してくる誰かは見てくれただろうか? 本当に久しぶりに春休みを全て犠牲にする価値のある素晴らしいゲームですよね。僕はこのゲームに捧げた時間を決して後悔していませんよ。


……ところで、もし、「ファイアーエムブレム 暁の女神」を知らないのにここまで読んでしまった人がいたら、こっそりコメントかなんかで教えてくれてもいいですよ(笑)。ご清聴、ありがとうございました。そして、素晴らしいゲームを、素敵なシナリオを、素敵なキャラを作ってくれた製作者の皆さんに感謝の気持ちを捧げつつ、総評を終わります。