Með Suð Í Eyrum Við Spilum Endalaust(残響)/Sigur Ros

残響
アイスランドからの使者、Sigur Rosによる3年ぶり5作目のアルバム。


今回のアルバムは、これまでとはかなり色が異なります。「Gobbledigook」から「Festival」までの前半部は、かなりはじけたポップさで、祝祭ムード。そして「Meo Suo I eyrum」から「All Aright」までの後半は、「( )」の前半に似た厳かなイメージ。*1全曲に共通するのは、今までの幽遠な音像や、弓で弾くギターによるノイズは抑えられ、アコースティックで、透き通った音になっているということです。


この変化、僕は歓迎します。確かにアイスランド大自然で鳴らされるのが似合うような、理解の範疇を超えた、得体の知れない凄みは減りました。しかし、その代わりに教会で鳴らされているような崇高さ、神聖さが生まれています。そしてノイズを取り払った事で、「Takk...」のトゥーマッチ感がなくなり、ヨンシーの歌うメロディの美しさが改めて引き立っています。


特にリズミカルなアコギと、力任せに楽しさを叩きつける様なドラムからなる「Gobbledigook」、優しいアコギに寄り添うように丁寧に音が重なっていく「Gooan daginn」、反復されるピアノが美しい「Meo Suo I eyrum」など、派手な展開を見せない曲こそ今回の山場。特に優しく耳を撫でるアコギの音が素晴らしく、一音も聞き逃したくない気持ちになります。


逆に、「Ara Batur」などの派手な展開を見せる曲は、これまでのような幽遠な音の中にあった、「畏怖」といえるような感情が想起させられないので、ちょっと物足りないかな。とはいっても、初聴きで耳を惹き付けるのはそういう曲だし、やっぱり好きなんですけど。


とにかく音がよく、一切の音を遮断してゆったり聞き込みたいアルバム。祭りの高揚感とその後の寂寥感を、共に味わえます。そのジャケットにためらわず、手にとってその音の崇高さを感じてください。「( )」が最高傑作という人にもオススメです。



それにしても、最近アイスランドで行なわれたライブで、「Gobbledigook」を演った時、まるで少女のように無邪気にドラムを叩いていたBjorkの姿が忘れられないです。もうおばさんといっていいような年のはずなのに、本当に目がキラキラしていて妖精かと思いました。

*1:前半後半ともに、英語の曲で締められているのは偶然ではないのかも