緩やかな自殺

「どうして好き好んで自分の寿命を縮めなくちゃいけないんだ。馬鹿じゃないか」
「こうは考えられないか? つまり、煙草を吸う人はみな『緩やかな自殺』をしている、と」


つまるところ、喫煙者はみんな楽しんでいるのだ。
自分の命の塊を、毎日少しづつ、丁寧に削り取るという行為を。


心臓をのみで削り、肝臓を彫刻刀で削り、腎臓をカッターナイフで切り刻み、
そして脳みそをかんなでつるつるにして、その行為に静かな快感を得ているのだ。


そして最後は肺がんになって苦しんで、汚れきった肺の写真を見ながら、
やっぱり煙草なんて吸わなければ良かった、緩やかな自殺なんてただの格好付けの言葉だった、
僕はまだ生きていたい、もう煙草はしないから、神様、肺がんを治してください、と祈る。
とても無様で格好悪くて、素晴らしい。素晴らしすぎて、吐き気がする。