RADIOHEAD at 大阪市中央体育館(10/2)

今更書いて誰が見るんだ、という意見はもっともですが、これを書かないと僕の中で何かが完結しないので書きます。mixiからもらったセトリありです。


RADIOHEADといえば、洋楽ではダントツで一番好きなバンドであり、僕の音楽の趣味を、「Paranoid Android」中盤のギターソロ一つで、いい意味でも悪い意味でも完全に明後日の方向に持っていた張本人。


ライブ前日に、ちょっとライブに行きたくないなとすら思ったのは、理想のバンドを実際に目にしてしまうことが怖かったのか、それとも抱えていた英語の論文を読むのが完全に間に合わないと思ったからだったのか。


まあしかし、当日は時間計算もバッチリして電車に乗り込む僕。電車の中ではPortisheadを聞いて静かにテンションを上げる。会場の入り口では、金沢の友人と久しぶりに会って話す。濃い音楽トーク、と思いきやトムの大嫌いなディズニーランドの話をしてなぜか盛り上がってました。



さっぱり知らなかった前座はModeselektorという、「The Eraser」のリミックスアルバムにも参加しているバンド。はじまってすぐ音の質感がAutechreに似てるなと思ったけど、あそこまでストイックな感じじゃなく、いびつだけれど踊れる音でした。結構よかった。ただ、トムやBjorkのヴォーカルをサンプリングした曲よりも、純粋に電子音オンリーの曲のが良かった。なんだろう、ヴォーカル入りの曲の方は、アングラのプライドはあるけど、でもちょっと売れたいな、という感じが中途半端に思えてしまって。


でもなかなか楽しい前座でした。そしてセットチェンジ。ステージには白いポールみたいなものが、くもの糸みたいに沢山たらされて、なんだかちょっと神秘的でちょっと不穏。ここでちょっと残念だったのは、シンセの調整時に聞こえてくる音から、演奏する曲が若干予想できてしまったこと。「Planet Telex」も「Where I End You Begins」も冒頭の電子音が印象的な曲だから、仕方がないっちゃあ仕方がないんだけどね。


そして、ついにバンドがステージに。遠目からでも、トムがけっこう小さいのが確認できた。彼がトムヨークか。なんだか出てきただけでちょっとくるものがある。そして最初の曲は「Reckoner」なんだけど、トムが声を出した瞬間にもう感動してしまった。目の前でトムヨークが歌っている! しかも「Reckoner」だからいきなりファルセット! 演奏で隠れてしまうこともなく、バンドの核であるトムのヴォーカルがしっかりと聞こえてくる。やっぱりトムの声は何かが違う。何かを凄いものを持っている。そう思った。


曲はIn Rainbowsを中心に、でも新旧うまく織り交ぜたセットリストだった。ライブで改めて感じたのは、RADIOHEADの曲がどれだけリズムにこだわって作られているか。「Optimistioc」や「There There」でのトライバルなリズム、「Arpeggi」のシンプルなループ(アルバムヴァージョンよりもリヴァーブが深く気持ちいい)、「Mornign Bell」の三連打、そしてダンスビートと多彩でリズムだけ聞いてもまったく飽きさせない。身体が自然にゆらゆらしてしまった。わりと棒立ちで聞き入ってる人が多かったので、ちょっと迷惑だったかもしれない。


In Rainbowsの曲のシンプルな美しさも印象的だった。「All I Need」の最後では、「僕は間違ってない、間違ってない」と自分に言い聞かす歌詞を歌うトムに、やはり感極まって泣きそうになってしまった。「Arpeggi」のコーラスの美しさには溶けそうになった。「Videotape」はこれまで僕が聞いたことのあるliveアレンジとも、CDのアレンジとも違うドラムが鳴っていて、最高に盛り上がる一歩手前で収束していく感じが、曲とよく合っていた。やはりIn Rainbowsの曲は素晴らしいと思う。


「No Surprises」も聞けた。わりとどの会場でもやっているのかと思ったら、今回はこの日だけだったらしい。鉄琴がとても優しい。「You and Whose Army」とともに、落ち着ける曲として流れのいいアクセントになっていた。「You and Whose Army」では、聞いていた通りに、トムがカメラで遊んでいるところが見れた。近い、近いよ!


そして、「Bodysnachers」で一旦幕。しかしここからがいよいよ凄かった。


アンコール1では、まさかの「Airbag」からのスタート。超有名曲だけれど、ライブで演るのは結構レアだった気がする。そして大好きな「Where I End You Begin」(やっぱりね)、さらに「Bends」から2曲。「Just」はあんまり好きな曲ではないのに、ライブで聴くと迫力が違ってものすごかった。そして「Planet Telex」! この曲はライブではありえないくらいの輝きと高揚感を持っていて(シンプルな構成ながら、初期の強みであるトムの歌うメロディの美しさが光っていた)、さらに後期を感じさせるドラムループがある。この時、僕はRADIOHEADの過去と現在が繋がったのを感じた。


まだまだ終わらない。アンコール2では、なんと大好きな「Fog」の弾き語り。こんな曲が聴けるなんて。さらには、「Karma Police」でまさかの合唱が起こる。最初は歌っていいのか悪いのかよく分からなくて、半々程度だったけれど、最後の、


「For a minute there. I lost myself, I lost myself.」


でついに会場が一つになる。トムが歌うのをやめて、僕らが歌う。ものすごい高揚感、そして幸福感。まさかこの感じをRADIOHEADのライブで味わえるなんて。しかし、「ふー、一瞬自分を見失っちまったぜ」なんて歌詞で合唱が起こるバンドなんて、RADIOHEADぐらいじゃないだろうか。普通「ラララ」とかだよね。


後から考えると、これは一生モノの経験だったように思う。今回のツアー、他の会場ではやらなかった「Karma Police」の合唱に立ち会えた奇跡。言葉選びが大げさって言われるかもしれないが、いいんだよ。これは僕の中では紛れもなく奇跡なんだよ。


そして本当の最後は「Everything in Its Right Place」で締め。この生暖かい曲に不釣合いな手拍子が、みんなの心情を表しているようで面白かった。


終了直後こそ、mixiで前日のセトリを見て、「Pyramid Song」や「Paranoid Android」も聞きたかったなと思ったものの、最終的に今回のツアーの全セットリストを眺めた結果、この日を選んだ自分がかなりラッキーなんじゃないかと思えてきた。初めてのライブなので分からないけれど、たくさんライブを見てきた人からしても、演奏がかなり良かったという評判だ。確かに、ドラムとギターの音量もちょうどよく、複雑な曲にも肉体的なグルーヴがあり、トムの声も伸びていて、今のRADIOHEADがとてもいい状態なのが、僕にも伝わってきた。どこか楽しそうにトムが演奏していた気がする。


あまりに過度な期待(もうライブ見た後、しばらく口も聞けなくなるぐらい圧倒的に打ちのめされると半分本気で想像していた)をしていったからか、ライブが終わった直後は、普通にいいライブだったな、とすら思ったけれど、瞬間瞬間を思い出す度に、やっぱり凄かったよなあと実感している。トムのファルセットを最初に聞いた瞬間、「Videotape」の息を呑む美しさ、「Planet Telex」の高揚感、そして会場が「Karma Police」で一つになった瞬間。思い出す度、ため息が漏れる。

01 Reckoner
02 Optimistic
03 There There
04 15 Steps
05 All I Need
06 You and Whose Army
07 Arpeggi
08 The Groaming
09 Videotape
10 Morning Bell
11 Faust Arp
12 No Surprises
13 Jigsaw Falling into Place
14 Idioteque
15 National Anthem
16 Nude
17 Bodysnachers


Encore1
18 Airbag
19 Knives Out
20 Just
21 Where I End You Begins
22 Planet Telex


Encore2
23 Fog(piano ver.)
24 Karma Police
25 Everything in Its Right Place
(Orange : this live only)