勝手にふるえてろを見たよ

僕は朝井リョウ綿矢りさの創作を見るとその卓越した人間観察力によって、上部ではなく本質的なイマのコミュニケーションを描いてるなあと感じ、一応イマを生きる捻くれ者を自負してる者としてはとても悔しくなる。桐島、部活辞めるってよが刺さった人はこの映画も刺さる可能性が高い。二人とも、目が良すぎる。
加えて、綿矢りさの色である「ロマンチストを拗らせすぎて一周回って現実の恋愛の【ダサさ】こそ最もロマンチック」という描写がこれでもかと炸裂してひどく痛快である。蹴りたい背中でキスするときの相手の唇のひび割れを描写したりしたあれ、今回で言えば感極まって抱きつく時に体をドアにぶつけたりする、この大事なタイミングにかよ、しかし、それがいい、みたいな。実に彼女らしさがある。しかし彼女の小説ではそのあたりがさらっと終わるところが、映画になることで少し派手になり、よりエンターテイメントになっているように感じる。
そして何よりこの映画は、松岡茉優の怪演に支えられている。立ち居振る舞いの一つ一つが生来のオタク女子にしか見えず、美人のはずの彼女が気持ち悪い女の子にすら見える演技は真に迫りすぎており、ガラスの仮面で「美人」の壁をかぶってみせた北島マヤの逆といえる。ここまでうまく演じられるのは彼女の演技力だけでなく、なにか人生において彼女が美人でなかった時期があるのではないかと思いを馳せずにはいられない。彼女は完全に女優として開花したように思う。
他にも子気味良い台詞回しで笑いが起こったりと、実に楽しく心に残る映画だった。多分、この映画は好きな人と嫌いな人に分かれる。嫌いな人も多分、つまらないではなく、なにか登場人物の一人に自分を重ねすぎてしまうが故の嫌いなんじゃないかと思う。少なくとも、僕にはそういう瞬間があったから。

https://movies.yahoo.co.jp/movie/360593/review/824/