今さらだけれど「魔法使いの嫁」を見たよ

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もっとも印象的な前半のハイライト。ちせきれい。

爽やかな一筋の風のように心に澄み渡る王道ファンタジー。まほよめ。

 

(ネタバレあり)

■ 魔法使いの嫁 ★★★★★

年をとるとなのかアニメを見すぎるとなのか分からないけれど、どんどん人は内容のあるアニメが億劫になっていき、癒しを求めて「ゆるゆり」やら「ごちうさ」やら「ゆるきゃん。」に逃げていくと思うのですが、私もまあそんな感じで。

他には、年をとると映画アニメドラマに限らず「悲劇」が見たくなくなるという現象も観測されており、感受性が豊かになることで残酷な物語が「胃が痛くなって」見れなくなるという不幸な現象なのかなと予想します。

前置きが長くなりましたがこのアニメは間違いなく「内容がある」アニメであり、そして話によっては「悲劇」でもあり、特に最後の怒涛の展開は見ていて「胃が痛くなる」ものでもあったのでだからこそ一年ほおっておいてしまったのですが、それでも、一年越しで見てよかったと思うものでした。

どんどん表情が豊かになっていくちせと、その反対に化け物としての本性も見え隠れするエリアスだけでなく、キャラクターすべてが生き生きと描かれており、誰をピックアップしても魅力的な話になってしまう状態。創作の理想的な状態。実は9と3/4番線は実在しており、ヤマザキコレ含めロンドンに行ったことがある人はみんな魔法の世界を知っているのに黙っているのではないかと邪推してしまいます。だったら私もロンドンに行かねば。

というわけで世界観も音楽も作画も素晴らしいのですが、この作品を最後まで見て驚愕したのは、世界観だけで十分勝てるのに物語自体も本当に素晴らしいということ。

ちせの過去とラスボスの過去が折り重なり、
いままでの登場人物たちすべての力を借りながら前に進み、
そしてエリアスがきちんと約束を守ることでラスボスを倒す。

よくもまあここまで、パズルのピースをはめるかのように、絡まる紐が結び目になるように、綺麗に風呂敷が折りたためるものだなあと。ハリーポッターも、魔法学校の描写だけでも楽しいのに、ミステリー部分も非常に魅力的でしたが、もしかして同じぐらい名作なのでは。

でも結局、一番惹かれたのは美女と野獣的な要素かもしれない。彼女、薄幸の美少女に見えるけれど実は「口数は少ないが体が先に動いて誰かを助けてしまう」女の子で。そんな彼女を理解できずにエリアスは苦しみ「魔法生物だからわからないのかな」とこぼすのですが、大丈夫、こんな少年ジャンプみたいな女の子は人間でも理解に苦しみます。そんなちせが「言葉は理解するためではなく話し合うためにあるのだから」と、無理に理解しあうではなく、妥協点を探るという解決策を出していくというのが実に鮮やかで。

美女と野獣では、結局野獣はイケメン王子様に戻るわけですが、イケメン王子様に戻るはずもなく、無理に理解し合うこともなく、まるでありふれた夫婦のように「お互い納得がいかなかったら話しましょう」と言うちせの姿からは僕らは何かを学ばねばいけないのでは、とすら思うのでした。