もしも僕が石器時代に異世界転生したら

今活躍できている人は、基本的に「運がいい」だけだと思う。

f:id:so-na:20190130015650j:plain

https://akiba-souken.com/anime/matome/isekai/

去年はよく北米に出張していた。北米には各チームのエースが集められ、1を言えば10分かってくれる人ばかりでとても仕事がしやすく、僕は裏でそれをバカンスと呼んでいたのだった。なにせ、1を聞いて1やってくれる人の方が少なく、1を聞いて無視する人、1を聞いて1が完璧でないことに文句を言う人、1を聞いて-1をする人がこの世界にはたくさんいるのだから。

ほぼ最年少で課長に昇格したエース中のエースとよく話をした。北米に出張している僕らはどうやら、とてもとても小さな範囲では「仕事ができる人」のサイドにいるかもしれないような気がするのだが、それは果たして日々のたゆまぬ努力の結果かと言うとそう言うわけではないよね、というのが我々の共通見解だった。

明日から Google に転職したら、なんて凄惨な生産性だ、とジョークを投げかけられるかもしれない。

明日からユーチューバーになったら、ヒカキンの5000分の1の再生数がやっとかもしれない。

明日から中国と戦争が始まったら、上官の命令に「サーイエッサー」と言えない無能な部下として隊を危機に晒すかもしれない。

明日から突然石器時代に転生したら「あいつ、猪も狩らずにずっと狩猟プランとかモチベーション向上の方法とか、打製石器カイゼンとか話してるよ、仕事しろよな」と言われるかもしれないのだ。

****

高度経済成長期には、学校教育が生み出す画一的な人材が求められた。ひたすら手を動かし、言われたものを疑問を持たずに作る、ある意味戦場の兵士のような働き方が良しとされた。それは今となっては時代遅れかもしれないが、確かに良しとされていたのだ。戦場の兵士が「この作戦、イマイチだし、俺死ぬ役かもしれないから突入サボるわ」と自分の頭で判断したら、みんな死んでしまうかもしれない。結局、場所次第なのである。

なるほど、今は堀江貴文や落合陽一のような人材が輝く時代だろう。けれど彼らは高度経済成長期の日本に生まれてきたら落ちこぼれだったかもしれない。上司の言うことをろくに聞かずメモ帳に漫画を描いている駄目男だったかもしれない。箕輪厚介がスッキリにでているのはたまたま天職となる編集者になったからだ。

そしてこの話の重要なところは、もし何か時間が歪んで、例えば東京タワーにドラゴンが降ってきたりして、この世界がまた変わり高度経済成長期みたいになったら、彼らはまた落ちこぼれになるかもしれないのだ。上司の命令もろくに聞かず無駄に自分で考えるバカになるかもしれないのだ。

****

だから僕らは仕事ができない人をバカにしてはいけないのである。こっち側にいるのはたまたまなのだから。イチローだって、才能の芽が出なければただの根暗練習バカだったかもしれないし、米津玄師だって、ニコ動投稿の最初期に900再生ぐらいで止まって諦めていたらただのサラリーマンだったのかもしれない。僕らは運がいいだけだ。

だから、運が悪い人のことを考えなければいけない。それは自分を救うをことにつながるのだから。もしも僕が石器時代に転生したら、猪を狩るのが怖くて、ずっと竪穴式住居で打製石器を磨いていたかもしれない。そんな男には誰も結婚を申し込んでくれない。僕の代でこの血は潰えてしまう……あれ、この磨き続けた打製石器、すごく切れ味が良くない?

僕はそうして磨製石器を生み出し、ここから異世界無双ライフが始まる。稲作のプランニングもバッチリで、弥生女子に毎日結婚を申し込まれていやもうほんと困るんですよー。異世界最高ー。

みたいなね。人間って、面白っ。