上から目線のすヽめ

友達と話していてよく聞く困りごとランキング上位に位置するのが「過去の自分をひけらかして自慢するオジサン・オバサン」への対処。例えば市役所勤務の友人なんかは元市役所勤めのオジサンが窓口にやってきて、

「手際が悪いなあ。俺の若い頃は……」

と説教風自慢が始まるとのこと。なかなかのストレスになるらしいのです。

そんなとき、僕がよく思い出すエピソードがある。これは友達の話なんですが、当時小学校四年生だった友達は、父方の祖母が体調を崩し入院してお見舞いに行きました。そこで友達は母親と親戚のおばさん同士の話を聞いていたのですが、

「◯◯は本当に賢くてねえ、すごく物覚えがはやいんですよ。この前も……」

「◯◯ったらそこで、玄関の前で健気に待っててねえ」

という親戚のおばさんの会話を聞いて、物凄く対抗意識を燃やしたらしいのです。

「僕もこの前の漢字テスト100点だったよね」

「僕も毎週お風呂掃除手伝っているよね」

その時の母親の苦々しい顔になんとなく違和感を覚えながらも、少年は割り込み続けました。そしたら、帰りの電車の中で母親は言ったのです。

「あれ、親戚おばさんのの話だったんだけど……」

僕、じゃない友人は流し聞きしてて気づかなかったんですが、どうやら僕、じゃない友人は猫に対抗意識を燃やして僕もこんなに優秀だよアピールしていたと。もう、赤面ですよ。顔から火が吹き出るかと思った(友人談)。恥ずかしすぎて、20年以上経った今でもたまに思い出すトラウマエピソードとなっています。友人の。

 

まあしかし、当時のゆうじ……僕は友達がうまく作れず、昼休みに図書室でシャーロックホームズと漫画「ことわざ辞典」を読みふけっていたので、承認欲求が著しく満たされていない状態だったのです。だから、他人が褒められていることに(他人が猫でも二歳児でも)耐えられず抵抗してしまったのです。そして、ここまで読んだらお分かりかと思いますが「過去の自分をひけらかして自慢するオジサン・オバサン」の心理状態は当時の僕にひどく近いのではないかと予想されます。

つまり、あなたが不幸にも彼らに遭遇した時に思うべきは腹たつ、とか、ムカつく、とかではなくて「承認要求満たされてなくてかわいそう……」 なのです。だって猫に抵抗した小学校四年生の僕と同じ心理状態なんですよ! 可哀想でしょう! こうやって思うことで、腹立たしさが少し減るので、精神衛生を保つテクニックとして覚えておいてください。

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かぐや様は告らせたい14巻より

ちなみにこのテクニックは応用がとても効きまして、僕などは全人類に対して上から目線で生きていますので、逆に博愛主義者ではないかと思えるぐらいなのですが、どうでもいい依頼を丸投げしてくる使えない同僚、やたら否定から入る昭和な感性が抜けない上司、購入用紙をコピーするのになぜか三十分かかった店員、などなどが自分に迷惑をかけた時も「かわいそう……もうすぐAIに代替されちゃうんだな……」と思うことでかなり精神衛生が保たれます。

 

ちなみにくれぐれも、間違って口に出さないようにしてください。人間を怒らせるもっとも簡単な方法は事実を述べることですので、口に出した瞬間、それはもうこの世で見たことがないぐらい顔に「怒り」マークがでた人間を見ることになるでしょう。

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HUNTER × HUNTER より

 

まあしかし、よくよく考えると、猫は自慢していいのに小四の僕やおじさんは自慢しちゃいけないって不公平ですよね。それに、市役所のおじさんや当時の僕がこういう自己承認欲求が満たされていない状態を自覚してしまうと、それはそれで心の中に闇を詰め込む状態になって辛いと思います。世知辛いことに、聞かされる方も辛い、聞かせられない方もそれはそれで辛い。

この辺りの心理は平成の名曲「チキンライス」で書かれており(「せめて自慢ぐらいさせてくれ!」とはっきり言ったJ-POPは珍しいなと思ってました)、こういうところからも松本仁志ってやっぱり目の付け所が優れているなあと思ったりします。

チキンライス 浜田雅功と槇原敬之 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

それでも僕は小学校四年生当時の僕のようなことをいうおじさんとは一秒も話したくないので、やはりここはVR空間がもっと発展して、おじさんが美少女アバターにて承認欲求を満たす時代が早く来ないかなあと思っています。この記事の僕のすヽめはあくまで暫定対処。全人類の承認欲求を満たすのが根本対処。

 

美少女ならば、それだけですべての人類から承認されるはずなのです(断言)。