台風の日に出社してしまい本当にごめんなさい

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聞いてください。悪気はなかったんです。その日は、引っ越しの徹夜の疲れがたまって台風の音も全く聞こえず、熟睡ののち目がさめると眩しいぐらいの晴天でした。

ニュースでは鉄道の状況がひっきりなしに更新されており、僕はその中から朝八時に運行再開という情報のうわべだけ読み取って、ぷよぷよで時間を潰していました。なんとなく、運行再開から二時間は開けてから会社に行こうと思っていたのです。ぷよぷよをはじめてしまったので、以降ニュースで、商店街や隣の県まで駅に集う群衆が報道されていることは何一つ知りませんでした。

そして、朝十時半に家を出ると、なんと、途中改札で多少の渋滞はあったものの普通に会社に着いてしまいました。そこには驚きの光景が広がっていました。責任感が強く、今日納期の資料を作成しに新幹線で来た先輩、自転車で来た先輩、そして僕の三人しかいなかったのです。

衝撃でした。

自転車で来た先輩には「こんな日にあえて早く来るなんてロックだな」と言われました。僕の視界はぐにゃりと歪みます。別の先輩には「君はこんな日は真っ先に有休を取るようなキャラじゃないか。信じられない」と言われました。

実際僕がすんなり会社に来れたのは奇跡でした。本来であれば渋滞していた改札はそのまま完全に人が飽和し、三十分後には人が炎天下の商店街に溢れ出している状態だったのです。早く着けば別の経路を模索して泥沼にはまっていたし、遅く着けばそんな光景。私はガチャでSSレアを三枚一度に引くぐらいのドンピシャなタイミングを引いてすんなり会社に着いたのです。

僕はとてもこのことを反省しています。意識が低かったと言わざるを得ません。こういう日に出社すべきは、本当に大切なプレゼンを明日に控えた営業マンとか、現場に行かないと仕事ができない類のインフラ系の方々とか、そういう事情を抱えた人だけです。

そんな事情は一切ない僕が出社するということは、人一人分のスペースを奪うことです。それは東京都からすれば小さなスペースかもしれませんが、そんななんとなく会社に行く人たちが積み重なって、積もり積もって、本当に会社に行かねばならぬ人たちを商店街の向こうに追いやってしまうのです。

まさにこれが今の日本のダメなところを集約している光景、と言っても過言ではありません。終身雇用が幻想になりつつなる中で、僕らはその幻想を捨てられないまま「なんとなく」会社に向かい、そして、BUMP OF CHICKENがカルマで表現したように、ガラス玉となってもう一人のガラス玉を弾いて落としてしまう。

意味がなくても校庭で校長先生の話を聞くために外に出る、その物事に対する「不真面目」な姿勢。愚直さへの過剰な賛美。それが、本当に必要な人の居場所を奪う。僕はぷよぷよをやめるべきではなかった。上司に静かに「体調不良で休みます」とメールを送るべきでした。

体調不良と書くのは優しい嘘です。事実を書けば遅延証明が必要になるかもしれない。遅延証明に並ぶサラリーマン達はまるで虚無の擬人化です。こんな日にすら、遅延証明がなければ遅刻になるなら、それはもはやシステムの敗北です。そんな会社が作るソフトウェアは全く融通が利かない事でしょう。

本当に申し訳ありませんでした。
皮肉に聞こえますか?
割と本気で、こう思っています。