2020年ベストソング10選

()内は再生回数です。どうぞ。

10. Dropout / SEKAI NO OWARI (21)

洋楽っぽいセカオワは私のツボなんだなあと改めて。シンセの音やアコギの爽やかさはもはや言葉に少し懐かしさを感じる「EDM」そのもので、こういう曲がまったりとリリースできるのが日本の少し変化の遅い音楽シーンのいいところなのかもしれません。Fukaseさんの声は本当に加工すると楽器みたいで綺麗です。

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10. どろん / King Gnu (21)

去年の最後に少し遅れて King Gnu にハマってなんどもアルバムを通して聞いたので、その流れで最初のこの曲がランクイン。性急な言葉の乱射はボカロ以降の情報を詰め込みまくる邦楽のメインストリームって感じがします。音楽性はミクスチャーが近いと思いつつ、上手いこと今っぽさがあってさすがって感じです。今年も紅白来て欲しかったな。

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08. 群青 / YOASOBI (25)

やっぱり時代は夜遊びですよねえ。夜に遊べない昨今だからこそ。饒舌で軽やかなキーボードの気持ちいい「夜に駆ける」ももちろん好きですが、このサカナクションのようなコーラスをうまく自分たちの音楽性に取り込んだ「群青」が一番好きでした。

YOASOBI の下地は本当にボカロ曲って感じがする(ボーカルと同じぐらい歌う楽器・コロコロ変わる曲展開・情報量の多い歌詞・どこか機械的)ので、Official髭男dism や King Gnu や 米津玄師 の音楽性の複雑さを「ボカロ曲から来ている」と考察した人はビンゴだと思います。ボカロPとしてシーンの最前線の源流を知っていたのすごくない? とささやかに自慢したくなる気持ちもあったりなかったり。

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07. 終点 / DUSTCELL (26)

2020年に一番ハマったと言っても過言ではない DUSTCELL 。あとで5万字ぐらい話すのでこのシンプルなバラードの歌詞を抜粋したい。

普通に生まれ、普通に大人になる
周りも家族も普通で私は前に習う
人生の初めの頃から漠然と形にあった
いつの間にか”周り”が少しずつ消え去り
残されたのは酷く汚れた日記帳と
引っ掻いた傷跡だけだった

何不自由ない「普通」に生まれて、何かすごく不幸な状況にあるわけではないけれど何かが辛い、そんな感覚。それは2020年の例のアレによってさらに加速され、僕らはどこか居心地の悪さを感じるようになった。

もっとも今をストレートに表現できているバンドと思う。好きです。

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06. NEXT COLOR PLANET / 星街すいせい (28)

もはやキズナアイ輝夜月という黎明期の一過性のもので、二度と超えられないと思われていた「VTuber で100万人チャンネル登録」を、事務所としては(2019年時点では)一番色が薄かったホロライブの VTuber が続々と達成した年が2020年でした。

歌ってみたという文化も Vtuber の中に取り込まれていって、より盛んになった気がしています(もともと歌ってみた人のアバターをイラストで描く文化があったからこれは必然ですね)。

そんなホロライブの中で歌とテトリスが特徴の「星街すいせい」さん。彼女の声は少年の声と女性の声がいい感じのバランスで混ざっていた上で大人の歌い上げる感じもあって、すごく好きです。

彼女のオリジナル曲は三曲しかありませんが、

・インディーズデビューを思わせる少し尖った音楽性の「 comet / 星街すいせい - YouTube 」
・インディーズ一番のヒットって感じのロック曲「 天球、彗星は夜を跨いで / 星街すいせい - YouTube 」
・メジャーっぽいカラフルな音楽性の本曲

と三曲でバンドの歴史の冒頭みたいなバランスの良いラインナップを揃えていて、なんというか、時間の加速を感じます。今はアルバム3枚目ではなく、3曲目でメジャーデビューする時代なのだ。

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05. Frail State of Mind / THE 1975 (28)

安心してください。洋楽も聴いています。今年は Sigur Ros / ヨンシー や Travis や Strokes など僕が昔から愛してやまないバンドが結構リリースしてくれた年なのですが、それらを差し置いてこのバンドの新作がよかったです。

アルバムとしては綺麗なインストから突然のうるさいロック曲「People」が終わったあと、このなんとも言えない、お洒落極まりない、エレクトロなシンセとリズムが聞こえてきて、爽やかに加工されたボーカルが控えめなメロディーを歌うという。思いっきり心を掴まれました(分裂症かと思いましたが)。今っぽい、とても控えめで、見逃してしまいそうな小さな希望、って感じの曲。

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歌詞の丁寧な解釈も見つけたのでご紹介。

「外に出てみなよ そんなことやりそうにないね」がいい。

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04. 食虫植物 / 理芽 (29)

今年は理芽の躍進の年。2曲目に発表されたオリジナル曲である本曲、最初売れないと思ってました。泣く子も黙る2425万再生でした。ごめんなさい。

それはこんなにいい声で、それで花譜さんとは違う気だるさと大人っぽさがあって洋楽も余裕で歌いこなす彼女が今年売れないわけなかったです。今年はまだ売れなくて僕だけが知ってると思っている厄介ファンでごめんなさい。アルバム待ってます。

曲の紹介を忘れてました。中毒性、という言葉があまりにも似合う曲です。

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02. KING / Kanaria (31)

前述の歌ってみた文化と VTuber 文化の統合という背景において、非常に象徴的な意味を持つな、と思ったのがこの曲。

・2分ととても短い
・抑揚があり最後の +1 キー含めて盛り上がりポイントがわかりやすい
・途中の笑い声で格好よさをアピール
・サムネイルも弄って自分の立ち絵と混ぜやすい特徴的なポーズ

これらが「ちょっと歌ってみたいな」という歌い手(VTuber)の需要にドンピシャで答えているが故に、この順位。昔小室哲哉もカラオケを意識して曲を作ってましたが、やはり「みんなが歌う」時代だからこそ「歌われる」ことを意識した曲は強い。僕も「歌ってみたいなー」と思って気がついたら30回も聴いててびっくりです。

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02. 空洞です[Live] / 花譜 (31)

さて語りますか。今年の花譜は(新譜「魔法」も素敵でしたが)何と言ってもカバー!

割と順当に最初は、ボカロなりRADWIMPSなりを聴いてきたはずだった花譜さんは、知名度が上がり音楽的素養の高いメンバーに囲まれる環境の中で僕にドンピシャな名曲を選んでカバーしてきます。それがまたどれも非常に良い味を出しているのです。

彼女はまだまだどこかにいる高校生で、人生経験も豊富ではないけれど、それだからこそこのゆらゆら帝国の全てを諦めたようなすっからかんの名曲に、まさかの新しい解釈を加えてくれました。

ゆらゆら帝国本家の「空洞です」はもうこのあとバンド解散するしかねえなって感じの全てを悟ったような退廃感があり、なんども聴いているとセンター試験当日に電車で遠いところまであてもなく行きそうな感じがすごいです。

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コメント欄がまたいいんですよね。詩集かと。これとかすごい好きです。
「バカな子どもが ふざけて駆け抜ける 俺は空洞 でかい空洞」と掛かってるんですね。本当は30代では。

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しかし、しかしですよ、花譜の歌を通して聞くとまるで「空っぽであることが希望」であるかような、そんな感じに聞こえてくるのです。これがあまりにもよかった花譜の「アイスクリームライブ」というカバーライブの最後に聞こえてきたのだから、僕はもう拳を突き上げてガッツポーズをするしかなかった。のです。

VTuber というある意味空白な存在が「空洞です」を歌ったという意味をつけることもできますが、花譜の歌にそこまでわかりやすい意味をつけたくないという思いもあってまた複雑だったりします。彼女の解釈は中立であり、これを希望とも絶望とも解釈せず戸惑いながら歌っている、という感じがします。そこに僕は希望を感じるのならば、つまり歌は希望なのかもしれません。格好つけすぎました。忘れてください。

とりあえずどうですか、このアルバム、すごいですよ。

kamitsubaki.booth.pm

 

曲自体は YouTube に残念ながらないので、こんな感じのアルバムですというのを示すためにもう一曲サニーディ・サービスのカバーを貼っておきますね。これもまた、もっとエロティックな大人の魔法の曲なんですが、花譜が少し気だるく歌うことで、なんだか少し透明感が増していて、少し眠い朝の日差しのような感じが、とてもよいのです。

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01. DUSTCELL / LAZY (123)

長らく日本のヒップホップって何だろうという問いがあったと思うのですよね。我々が住んでいる国は西海岸と違って、麻薬の売人の母親とキャンピングカーの中で暮らして、常に銃声が響く中、生きる術はヒップホップだけ、とかないじゃないですか。いや日本でも探せばあると思うんですけど、それが共感を得られるかというと微妙すぎます。そんな中先人たちは J-POP の世界観を取り入れたり、新宿の片隅で大麻をやりながらなんとか本家の世界観に合わせようとしたり、ラップバトルの方にフューチャーしたりいろいろしてきたんだと思うのですが、いまひとつ僕の中では「日本らしいヒップホップ」っていうのが見つかっていませんでした。

しかしこれを聴いた時にピンときたんですよね。これじゃね、と。この動画の主人公のようにバッチリネット環境も整え、冷蔵庫もいい感じに揃い、毎日ゲームして、遊んでいても特に問題がない、なのに、どこか物足りなくて、暇で、なんとなく、死にたい。これじゃないですか、日本で歌うべきテーマは。

誰にも迷惑かけてないからお説教は聞かない

これが僕らのヒップホップ的な、体制への反抗なんだと思います。

 

儚く細く、少し萌え声のEMAはとある大手事務所の VTuber でした。その頃から10万人以上から人気を集め「よく死にたい」と言っていました。死ねない呪いをかけられた、という設定がそんな彼女とよくあっていました。でも彼女は VTuber をやめました。それは彼女の歌いたいことが、本曲のように極めてプライベートな、生の歌であったことが大きいのではないかと思います。

自身を透明に近づけて新しい歌の解釈を生む花譜、生の痛みをあらわにして、薄い膜の向こうで後ろを向きながらも生の姿で生の叫びを上げることを選んだEMA。日本の音楽、面白すぎます。

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目次。

 

去年の。

2019年ベストソング10選 - 夕べの夕陽の眩しさの理由。