Horizon Zero Dawn をクリアしたよ

匂わせ程度のネタバレあり。

(それが気になる人はそもそも読んでないと思うけれど、念のため)

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はじめに 本作の面白さとは

人間はミスを犯す生き物である。
その上体裁を気にするし、過去の失敗にうじうじ思い悩むし、思ってる事と言動や行動が一致しない。そんな生き物が自分達を何度も殺すことが出来る力(核兵器)を手に入れているのが今である。なんで僕らの世界は滅んでいないんだろう。それ自体が奇跡としか思えない。

……と、そんなことを考えてしまうのが本作である。本作のストーリーはこの不完全な人類の機械の技術がより進歩したら、の答えの一つだった。スティーブ・ジョブス氏、いや今なら、イーロン・マスク氏のような希代の成功者が技術の使い道を誤り、意図せずに人類を破滅に導いたら?

これまでもテクノロジーが世界を滅ぼす(もしくは滅ぼしかける)ストーリーは数多の作品で描写されていた。例えば、本作の1年後にリリースした「デトロイト・ビカム・ヒューマン」がそうであり、ドラえもん映画の「ブリキのラビリンス」もそうである。「天空の城ラピュタ」もそうだ。ラピュタは滅びる。「人間は地上から離れたら生きていけないのよ」という言葉はあまりに示唆的だ。やはり滅亡を避けるためにはテクノロジーを信奉しすぎず、地に足をつけて生きていくべきだ、そう、多くの創作が示している。

しかし、現実はどうだろうか。原子力発電は持続可能性のために必要不可欠で、火星に人類を移住させたいと本気で思っているイーロン・マスク氏が世界的な成功と国家予算レベルの富を手に入れており、人間はアニメ「PSYCHO-PASS」の登場人物曰くの「スマホに脳の一部を委託」しており、現実の自分の姿に愛想を尽かした人々はVRゴーグルをつけて可愛い姿になって寝ている。人類は時に病みながらもテクノロジーを進め続け、もうすでに大地からだいぶ浮いている。まるで、壊れたエレベーターに乗っているかのように。

本作の世界はそんな現実をきちんと見つめている。技術で滅びる人類を救うのは……脱技術、ではない。技術の過剰摂取で滅びの運命に誘われたとしても、結局人類に残されているのは技術である。ここが、本作のストーリーの大きな分岐であり、他のゲームと大きく差別化されている、と個人的に感じた部分である。

そんな人類と技術の関係を真摯に見つめた物語の世界が、オープンワールドとして眼前に広がる、面白くないわけがない。これはそういうゲームだった。

ビジュアル

美しすぎる世界だ。荒野の夕焼け、ジャングルのスコール、吹雪の夜、その中に佇む鋼鉄に囲まれた部屋と壊れかけた音声データ。一体どれぐらいの労力をかければこんな世界が作り出せるのか分からない。具体的に言えばスタッフロールが45分かかる程度の労力だろう。とにかくすごい。

ストーリー

冒頭で言った通り、技術に呪われている人類と真摯に向き合ったストーリーは圧巻。始まりはありふれているが、着地点がすごい。このストーリーを体験するためにプレイする価値がある。

なお、余談だがイーロン・マスク氏は本気でAIが世界を滅ぼすことを心配しており、GoogleのCEOに相談しているらしい。おそらくこのゲームのファンに違いない(これはジョーク)。

キャラクター

いかにも日本っぽい、美少女美少年はいない。主人公はまあそう育ったらそうなるよねといった感じで、筋骨隆々としてガタイが良いし、モブも含めて記号的な美男美女は避けられリアリティに終始している。和ゲーに慣れている私は面食らったが、これはこれでストーリーや世界観に集中できる良さがあるので、どっちが良いというものでもないだろう。ポリコレ受けもこっちのがよさそうだ。

キャラクターの造形はとても魅力的だ。僕はヘビメタ大好きプログラマー、テイトが好きである。さらに、モブに話しかけても永遠に会話が続くのに最初はびっくりした。「ここはアリアハンだよ」を連呼するわけじゃないのか……と感動したが、長くプレイするとこれはある種類のモブに共通の会話ルーチンがあるだけだと気づいた。気づいてしまうとモブに個別に話しかける気が無くなるので、ここは良し悪し。

サブクエストと収集要素

素晴らしい。音を絞ったオーケストラの中で紡がれる、民族抗争が主軸の物悲しい人間ドラマに溢れるサブクエ。異端者と会話しないようにすべて「神よ」とつけて話すばあさんしかり、モブのキャラも立っている。収集要素も多彩で、過去の音声データをスキャンして聴きながら廃墟を進む時の雰囲気は最高だ。ワクワク感がたまらない。同様のシステムはニーア・オートマタにもあるが、没入感はニーア以上かもしれない。

戦闘含むゲームシステム

面白い。人類文明が狩猟まで落ちた都合で基本的に弓矢と投石機で戦う。一撃必殺の武器を持つ機械を長い草の中にしゃがんで隠れながら、弱点に弓を引きしぼる、緊張感がすごい。この戦闘システムに夢中になる人も多いだろう。しかし。

唯一の欠点:3D酔い

僕はもともと3D酔いが強いタイプだし、3D酔いしないように工夫を凝らす「星のカービィディスカバリー」や「どうぶつの森」のようなゲームが素晴らしいことも、それによって、失っている自由度も理解できる。しかしこのゲームは特にひどい。

・矢と投石機で敵を狙う都合上、カメラの遠近が激しい

・狭い道を見つける廃墟ダンジョンのカメラの移動が厳しい

・空飛ぶ機械や援軍により挟み撃ちされた時の緊張感とカメラ回し

・あまりに美麗なグラフィックにより見つけづらい引っかかり(ボルダリングのような手を掛ける点)を壁にカメラを貼りつけながら探すしんどさ

などなど、あまりに厳しく、真面目に戦闘を繰り返すとゲロゲロに酔うため、僕は難易度を最低に落とす事を余儀なくされた。正直ちょっと悔しかったのだが、仕方ない。それでも、酔いながら崖から引っかかりを探すのはしんどく、びっくりするぐらい僕のアーロイは落下により命を落とした(次作では見つけやすくフォーカスされる機能がついたらしい)。

また、シナリオに入る時にシームレスに導入が始まるのだが、カメラを動かしすぎると酔う私からすると「ほら、そこに入り口があるだろ」とか「おーい、こっちだ」とか言われてもどこを指しているのか理解するのに一苦労で、ここも没入感を阻害した。

この点は3D酔いしない人にとっては全く問題にならないだろうが、僕がこのゲームを5年積んだのは完全に3D酔いのせいである。同じ症状を抱える人はまず難易度を「Story(機械の前に突っ立って集中砲火されても死なないのでカメラを動かさず戦闘できる)」にしてみてほしい。あとから変えられる。

まとめ

総評:★★★☆☆(☆は3D酔いが原因)

欠点は3D酔いがひどいところだけ。この重厚なオープンワールド技術オタクSFは、今からでも遅くない(実際2022まで積んでも全然遅くなかった)から、ぜひ、プレイしてみてほしい。