ZAZEN BOYS at 名古屋Club Diamond Hall

ちょっとセンチメンタルな気分になり、会場に着く前にやたら迷って2つのコンビニで道を聞き、場違いにSigur RosTシャツを着てた僕(まあ、これもある意味ロックか?)。テンションを下げる要素には事欠かないまま、このままザゼンを見て大丈夫か、と思ったけど、はい、見事なまでに杞憂でした。


一人、ベース「町田のヤンキー日向秀和君が颯爽と登場して、持ち前のリズム感溢れるアグレッシブなベースラインを格好よく弾きだしてから、テンションはあがる一方。しかし、彼は本当に器用なベーシストですよね。二日前には、ストレイテナーのライブで、時にメロディアスにもなる泣きのベースを披露したであろうに、この日はまるで違う、鋭角的で攻撃的で、リズム感溢れる反復メインのベースを弾いていく。


そこから気が付けば、カシオマン松下敦、無戒と入場してきて、始まったのは「CRAZY DAYS CRASY FEELING」の斬新なアレンジヴァージョン。ギターを抑え、ベースと、ドラムと、言葉のみで攻めていくザゼン流Hip Hop。これがとてつもなく格好よい。そしてライブ会場はいきなり、妖しげなダンスフロアに変えられる。ブラックミュージックの香りが漂ってくる。その曲は最後にはサビのメロディの反復も加わり、ダンスの要素が強くなって終わった。なんだよこのクールな展開は。もう心は虜だ。


それから前半は、3rdの曲はあまり姿を現さないものの、3rdのもつ夜の雰囲気に脚色されたアレンジになった曲たちが演奏される。ZAZEN BOYSのライブでこんなに踊るとは思わなかったよ。もちろん、頻繁に息の合った無音や、激しいノイズをはさみながらなので、簡単には躍らせてくれないのだけど、それでも身体を動かさざるおえないような熱気を曲たちは有していた。これほどまでに、今のザゼンのモードが恐ろしいものだとは。


そして、「Water Front」でみんなを一時的に落ち着けた後(といってもこの曲の緊張感はなかなか息の詰まるものもあるんだが)、無戒が観客を煽る。


「そろそろ第二部後半に行こうかと・・・この祭りセッションの成功は名古屋シティのみなさまのテンションちゃんにかかっております」みたいなことを言って、みんなを笑わせつつも、また観客のテンションちゃんはうなぎのぼり。やっと僕が一番聞きたかった3rdの曲が始まる。「Riff Man」「This is NORANEKO」でのモッシュ、その後の「Friday Night」「Don't Beat」に寄るダンスフロア化(ミラーボールもまわる)と、息もつかせぬ展開だった。まあ、「Don't Beat」の途中無戒が客席から、男の子と女の子を一人ずつ舞台に呼んで、肩を組ませて手拍子でリズム取らせたりとか(日向君は苦笑してた)、妙なノリにもなって(ちょっと苦笑気味に)笑ったりもしたけども、それもまた楽し。これは他の会場でもいつもやってるのかな?


そして最後は「半透明少女関係」、これにはまたもや最高潮に。後半はええじゃないか踊りになってしまうこの曲で、また違うダンスを提示して、彼らは去っていった(ちなみにアンコールは「KIMOCHI」。またもや女の子を呼んで、手をつないで歌ったりしてた。セクハラ?)。


アンコール2で「自問自答」やってくれるかと思って、帰る客もいつつしぶとく待っていたら、カシオマンが出てきて「向井君は女の子とどっかいっちゃったので、もう今日はできません」なんて言う。「自問自答」聞きたかったけど、多分これ、この日一番の笑いポイントなので、まあいいや。





というわけで、楽しいライブでした。いやあ、ザゼンってこんなに踊れるとは。もともと、ブラックミュージックも取り入れているなとは思ったけど、そういったHip Hop的なノリから、正統派ロックの8ビート、「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」に代表される変拍子、最後には阿波踊りまで、いろいろな身体を動かす要素を取り入れ、息もつかせずいろいろに躍らせる。無戒による刺激的な言葉のリフレインも、独特の無音部(もしくは無戒の語りだけになる部分)も、ある意味ダンスの要素と考えれば(後者はブレイク部ね)、納得したり。ありえないことをやっている前衛バンドのようで、実は理論にもかなっているなんて、無戒さんってやっぱりすごいなと思った。リズムとベースがしっかりしていれば、あとはどれだけ壊れていても、踊れるモノです。


気になっていた3rdの曲は、1st、2ndの曲を3rdの雰囲気に変えてくることで、意外とそのままで違和感なく聞けました。それにしても、この夜の雰囲気、くせになる。ザゼンは今、すごくいいモードにいるんじゃないでしょうか。


「とりあえず、ライブにいらっしゃい。別世界だから。」この無戒さんの発言が納得できる、素晴らしいライブでした。なにより、無戒さんを真剣に見つめ、付いていき、そのスキルで世界観の構成を助けるあの三人の凄さも実感しました。並大抵の演奏力じゃ、ついてけないよ。確かにそのあまりの無音と轟音のはざまですこし食傷気味になったりすることもあるけれど、この正しく「唯一無二」のライブを、もっといろんな人に味わって欲しいものです。女の子でも大丈夫。もうすでに結構女の子の比率も高いし、なにより・・・踊れるよ?