日記5

目覚めると、朝ご飯を食べて歯を磨いて服を着替えて、最寄り駅へ自転車で向かった。
そして定番の20分遅刻する電車に乗って、その時間にいつもいる友人に出会う。
最近の友人との会話の導入部は、決まってこれだ。


「今の時期の大学一年生は、目がキラキラしてるよね。」


まるで僕だけが気付いたかのように言うのだが、やはり同級生達はみんな同じことを思っていた。
そして、おんなじように少しの居心地の悪さを感じていた。
そう、知ったような口で皮肉をいう僕達は結局のところ、
自分にもあったはずの、あのキラキラしていた頃を懐かしんでいる。


それでも変化がないわけではない。最近朝の電車の人数が減ってきた。
きっと、高校の名残で真面目に登校していた新入生が、サボることを覚えのだと推測する。
ほら、君ももうすぐ僕等と同じように、濁った生気のない目になるよ。


そんなお決まりの戯言も虚しく、意地悪な僕の「最近楽しい?」との問いに、
「うん、マジ楽しいよ!」と答えた塾の教え子の、キラキラした目が忘れられない。
ちょっとラメが入りすぎて光っていた化粧とともに迫ってきて、
直視できないくらいの眩しさがあった。


というのは昨日のことなのだが、日記って昨日のことを書いて良かったっけ。
良くない良くない、今日起きたことを書くのが日記だったはずだよ。



今日も目覚めると、朝ご飯を食べて歯を磨いて服を着替えて、最寄り駅へ自転車で向かった。
そして定番の20分遅刻する電車に乗って、その時間にいつもいる友人に出会う。
と思うと、その中に最近会っていなかった友人もいて、会話の導入部にはかなり気を使った。


「今の時期の大学一年生は、目がキラキラしてるよね。」




(そして日記の意味が、変化のない日常へ溶け出していく)


「ループアンドループ」2007.4.26.0:52am