Mr.Beast/Mogwai

Mr. Beast
まず、一通り聞いてみて思うのは「生々しい轟音が戻ってきた!!」ということ。ここで鳴っているギターノイズは、明らかに前作、前々作のそれではなく、歪んで、ただのホワイトノイズに限りなくニュアンスが近い代物。これは素直にうれしいですね(前二作の柔らかさ、シリアスさも好きですけど)。


ただ、単純な原点回帰かと思いきや、やっぱりMogwaiは一筋縄では行きません。二曲目の「Glasgow Mega-Snake」。これはいままでの彼らにはなかった、始めから終わりまで轟音で攻め続ける曲です。まさに蛇のようにうねりつつ、コードとメロディの狭間を絶妙な感覚で行き来する歪んだギター、を存分に楽しめる3分弱のパンク。なんというか、いままで、隙間にちょっと隠れてて、でも確かにいるって感じだった「パンク」な精神が、この作品ではより前に出てきて主張している気がするんですが、どうでしょうか。


その二曲目の戦慄の後は、いままでのアルバムで実験してきた要素を総合的に取り入れつつ、新しいこともちらほら見える、って曲が続きます。全体的に、短く歯切れ良いのは、共通。「Travel Is Dangerous」の轟音ギターに歌をかぶせるアイディアだったり、「I Chose Horses」の日本語による語りだったり(語りはあくまでメッセージというより雰囲気作りとして使われてます)。 中でも、出色の出来は、シングルにもなった「Friend Of The Night」。ギター最初の一音が鳴ったときからの厳かな雰囲気。丁寧にピアノが重ねられ、丁寧に轟音が添えられ、夜が深まっていく。切なくて、少し優しい短編物語・・・素敵でした。


というわけで、オススメのアルバムです。ただ、やっぱり長編も欲しかったというのは、正直なところですけれどね。あの、同じモチーフが少しずつ、形を変えていき、轟音に一瞬で変わったときの圧倒的なカタルシス。今作では、小さなカタルシスはあるものの、そういうどうしようもなく持っていかれる大きなカタルシスはなかったかな。それでも、十分素晴らしいアルバムですけどね。やっぱり、山のようにいるMogwaiフォロワーたちと比べると、頭一つ抜けてますね、彼ら。